VLS
VLS(Vertical Launching System、ヴァーティカル ローンチング システム)は、潜水艦を含む艦艇に使用されるミサイル発射システム。日本語では垂直発射システムまたは垂直発射装置と訳される。
概要編集
保管容器と発射筒を兼ねる複数のケースで構成される。ミサイルは弾頭を上にした保管状態から直接、垂直方向にむけて発射され、空中で向きを変えて目標に向かう。
弾薬庫と1基の発射機で構成されるミサイル発射装置で発生する、再装填や、発射機を目標へ旋回させる時間を削減する目的で開発された。
ホットローンチとコールドローンチ編集
垂直発射装置にはセル内でミサイルに点火するホット ローンチとミサイルの一部ではないガス発生器によって生成されたガスで射出してからミサイルに点火するコールド ローンチがある。"コールド" はロケットエンジンの排気と比較して相対的に冷たい事を意味する。ホットローンチ装置は射出装置が不要だが、高温のミサイルの排気をセルから逃がす仕組みが必要である。もし、ミサイルが射出装置を備えないセル内で点火したらセルは隣接するセルに引火しないように生成された驚異的な熱に耐えなければならない。
ホットローンチシステムの優位性はミサイル自体がセル内から備えるエンジンを使用して外部へ発射される事でミサイルを発射管から射出するための分離したシステムが不要である事である。これは潜在的にホットローンチシステムが高信頼性で小型軽量で開発と製造が経済的で小型のミサイルの設計時に実用的である事をもたらす。潜在的な欠点はミサイルの誤作動で発射管を破壊し兼ねない点である。
コールドローンチシステムの優位性はミサイルの発射時の誤作動時にコールドローンチシステムではミサイルを射出するので被害を抑える事ができるという安全性である。この理由によりロシアのVLSは艦船の甲板の代わりに陸上や水中からのミサイル発射時の誤作動に対処するために設計される。ミサイルが大型化すると射出式発射装置の恩恵が増える。ある一定以上の大きさのミサイルのブースターを艦船の甲板上で安全に点火する事は出来ない。大半の近代的なICBMとSLBMはコールドローンチ式である。
アメリカ製の水上艦のVLSはミサイルのセルの配置を格子状に配置してセル毎に区切った"ホットローンチ"システムである。エンジンは発射中にセル内で点火するのでミサイルの炎とガスを排出するために排気管が必要である。フランス、イタリアとイギリスはPAAMSシステム内で類似のホットローンチ式Sylverシステムを使用する。ロシアは格子システムと1基の発射装置で1機以上のミサイルを発射するリボルバー設計の両方を採用する。同様にロシアは複数の垂直発射システムのためにトールミサイルシステムのようなコールドローンチシステムを使用する。中華人民共和国では蘭州級駆逐艦でエンジンの点火前に円形の"コールド ローンチ"システムを発射管からのミサイルの射出に使用し、同様に1基のセルに1機が装備される長方形の”ホット ローンチ"システムが江凱II型(054A型)フリゲートに使用される。
運用編集
特徴編集
利点編集
- 搭載するミサイルと同数の発射筒を備えることになり、従来の発射装置では最速でも4秒に1発程度とされる連射速度を、1秒に1発程度に短縮できるほか、個々の発射筒が独立しているため、1基が故障しても他に影響がない。ソ連(ロシア)には、ミサイルを回転式拳銃の弾倉のような回転式ドラムに装填し、1つの発射口を共有する形態のVLSも存在する。比較的直径の小さいESSMのように、1つのケースに複数収納できるミサイルもある。発射機本体の汎用性が高く、新たなミサイルが開発されても継続的に使用できる。
- ケースごとに異なった種類のミサイルの装填が可能なものもあり、対空・対地・対艦・対潜・対弾道弾・巡航の各種ミサイルを1隻の艦船に混載することで、柔軟な運用が可能になる。
- 従来の発射機が露天甲板上に露出していたのに比べて、メンテナンスを含めた耐候性に優れる。また、甲板上に露出する部位が減るため、レーダー反射面積が低下し、ステルス性向上につながる。重心も低下するため、船体の安定性を崩しにくい。
欠点編集
- セルの数を減らしてもあまり値段が下がらず、小型艦にとっては費用面での負担が大きい。
- 空中でミサイルの姿勢を変更するため、近距離に飛来した物体への迎撃には向かないとされる。
- クレーン等でミサイル等を装填する都合上、鉛直方向にランチャーを装備する事が普通で、鉛直上方への発射直後にミサイルが推力を失うと、自艦に落下してくることがある。(特に空中点火するコールド・ローンチの場合)
各国のVLS編集
- Mk 41
- SM-1/2/3/6、垂直発射型アスロック、トマホーク、ESSM(発展型シースパローミサイル)など、さまざまな用途のミサイルを発射できる。1基8セルで構成され、1基、2基、4基、8基つなげて配置される。初期に生産されたものは、3セルを装填用クレーンスペースとして割り当てていた(8基の場合は61セル、4基の場合は29セル)。
- 詳細は「Mk 41 (ミサイル発射機)」を参照
- Mk 48
- シースパロー艦対空ミサイル用。ESSMも搭載可能。
- 詳細は「Mk 48 (ミサイル発射機)」を参照
- Mk 57
- 新型VLSでPVLS(Peripheral Vertical Launch System)と呼ばれる。Mk 41同様様々な用途のミサイルを発射する事が可能。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に搭載されている。
- Mk 45
- 潜水艦搭載型VLSでロサンゼルス級「プロビデンス」以降の艦とバージニア級の前部に搭載されている。
- 巡航ミサイル潜水艦に改装されたオハイオ級には、24基の潜水艦発射弾道ミサイル発射筒のうち最大22基に、1基につき7基のトマホーク用VLSが搭載されている。
- SYLVER
- A-43、A-50、A-70の三種あり、数字が大きくなるほど搭載可能なミサイルは長くなる。A-43、A-50はアスターSAM用、A-70は対地巡航ミサイルSCALP Naval用。コールドローンチ方式を採用している。
- 詳細は「シルヴァー (ミサイル発射機)」を参照
- シーウルフ用VLS(GWS26)
- 個艦防空ミサイル。箱型ランチャーで運用されていたミサイルにブースターを追加したものをVLS型とし、専用のVLSより運用されている。VLSは円筒形の1本1本独立した発射機を組み合わせ、8本で1基を構成している。
- バラク用VLS
- 個艦防空ミサイル用バラク-Iは、当初よりVLSでの運用を前提に開発された。1基8セルで構成される。
- 艦隊防空用ミサイルとして開発されたバラク-8も専用のVLSかMk 41(予定)により運用される。
- B-203/B-204(S-300F フォールト用)
- 艦隊防空ミサイルシステム。8発1セット回転式のVLSで、コールドローンチ方式を採用している。NATOコードネームではSA-N-6 グラムブル(Grumble)と呼ばれた。
- B-203A (S-300FM フォールトM用)
- 艦隊防空ミサイルシステム。B-204を48N6の搭載に対応させたシステム。NATOコードネームではSA-N-20 ガーゴイル(Gargoyle)と呼ばれた。
- 3S95(3K95 キンジャール用)
- 個艦防空ミサイルシステム。発射方式はS-300Fと同様。NATOコードネームではSA-N-9 ゴーントリト(Gauntlet)と呼ばれた。このミサイルシステムの派生元となった陸上型9K330 トールシステムも、装軌車両から垂直にミサイルを発射する。
- 3S90E.1(3K37 ヨーシュ用)
- 艦隊防空ミサイルシステム。従来のロシア製VLSとは異なり箱型の発射機で1基12セルから構成される。当初、アドミラル・ゴルシコフ級フリゲートに3基36セル搭載予定とされていたが実現せず。アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート用に採用、3基36セル搭載。
- SM-233(P-700 グラニート用)
- 重長距離対艦ミサイル。NATOコードネームではSS-N-19 シップレック(Shipwreck)と呼ばれた。
- 3S14 UKSK(P-800 オーニクス及び、クラブ用)
- 従来、専用の垂直発射機を必要としていたオーニクス系列とクラブ系列双方のミサイルを搭載可能。3K37 ヨーシュ用と同様箱型の外観で、1基8セルから構成される。インド海軍向けタルワー級フリゲート、シヴァリク級フリゲートに搭載されており、ロシア本国においてもアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートやステレグシュチイ級フリゲートに搭載されている。
- 3S97.2K(3K96 リドゥート用)
- 複数種の異なる対空ミサイルを搭載可能で、長距離から近距離まで対応できる。建造中のアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートに、3S90E.1に替えて搭載予定。
- 詳細は「3K96 リドゥート」を参照
- 3R-14V(P-800 オーニクス及び、クラブ用)
- 3S14の潜水艦用VLS。ヤーセン型原子力潜水艦が3連装発射機8基を搭載。
- 蘭州級駆逐艦のVLS
- HQ-9艦隊防空ミサイル用。6セルで1基を構成し、それぞれのセルに円形の蓋がある。コールドローンチ方式を採用。
- 江凱II型フリゲートのVLS
- HQ-16艦隊防空ミサイル用。1基8セル4基から構成され、それぞれのセルに蓋がある。外形はMk 41に酷似している。
- GJB 5860-2006型(052D型駆逐艦用)
- HQ-9艦隊防空ミサイル用。054A型フリゲート(江凱-II型)搭載のHHQ-16中距離艦対空ミサイル用を拡大したような外形。HHQ-9以外にも、艦対艦ミサイルや対潜ミサイル、対地巡航ミサイルの運用にも対応した汎用型となっている。
- ブラモス用VLS
- ロシアと共同開発された対艦ミサイル用。1基8セルから構成される。一部ラージプート級駆逐艦へ改装により搭載されたほか、今後新造艦への搭載が予定されている。
関連項目編集
- Mk 41 - Mk 48 - シルヴァー
- 潜水艦発射弾道ミサイル - 一般に「ミサイル発射筒」と呼ばれるランチャーは、後に現れたVLSの一種であり、先行技術でもある
外部リンク編集
- Mk 41 VLS - Federation of American Scientists
- MK 41 Vertical Launching System (VLS) - GlobalSecurity.org
- Mk-48 Vertical Launching System (VLS) - Seaforces-online Naval Information