WM-20
WM20シリーズは、オランダのシグナール(現在のタレス・ネーデルラント)社が開発した艦載用の射撃指揮装置(FCS)。
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種別 | 射撃指揮装置 |
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開発・運用史 | |
開発国 |
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就役年 | 1960年代 |
送信機 | |
周波数 | Xバンド |
パルス幅 | 0.22マイクロ秒/0.45マイクロ秒 |
パルス繰返数 | 3,600pps/1,800pps |
送信尖頭電力 | 180-200kW |
アンテナ | |
ビーム幅 |
捜索用:1.5×7.0度 追尾用:2.4度 |
走査速度 | 60rpm |
概要編集
1950年代、シグナール社は戦後第1世代のFCSとして、ボフォース 152mm砲用のM1、ボフォースMk.1 57mm砲用のM2、ボフォース 40mm機関砲用のM4を開発した。これは、オランダ海軍を始めとして各国で採用されるとともに、改良型としてシーキャット個艦防空ミサイル用のM44、中口径砲用のM45に発展した。このM40シリーズの改良型として、まず1960年代中盤にM20シリーズが開発された。M20シリーズは、基本的にはM40シリーズの技術を踏襲していたが、その追尾レーダーと同じ送信機を使用する目標捜索・捕捉レーダーを導入した。これらは特徴的な卵型のレドームに収容されており、上側に追尾用アンテナ、下側に捜索・捕捉用アンテナが設置された[1]。また、1964年には、アメリカ海軍のアッシュビル級哨戒艇の一部艇向けとしてフォード社がM22をライセンス生産し、Mk.87 FCSとして制式化された[2]。
これをもとに、再プログラム可能なデジタル・コンピュータを採用し、コンバット・システムとして自己完結可能な改良型として開発されたのがWM20シリーズである[1]。1970年にノルウェー海軍のストルム級ミサイル艇がWM26を搭載したのを皮切りに、世界各国で採用された[2]。
搭載艦艇編集
- M20
- M22
- WM22
- アルゼンチン海軍
- リュールセンTNC 45型高速戦闘艇
- エスポラ級コルベット
- インドネシア海軍
- マンダウ級ミサイル艇
- カナダ海軍
- イロクォイ級ヘリコプター駆逐艦
(TRUMP改修によりSTIR-180に換装)
- イロクォイ級ヘリコプター駆逐艦
- マレーシア海軍
- タイ海軍
- フリゲート「マクット・ラジャクマーン」
- チョンブリー級哨戒艇
- PF103型コルベット
- WM24
- 対空・対水上用に1つずつチャンネルを持つほか、ASW統制能力ももつ。
- WM25
- SAM誘導のためCWI能力を有するほか、砲用に2つのチャンネルを持つ。
- アルゼンチン海軍
- ベルギー海軍
- エジプト海軍
- ドイツ海軍
- ギリシャ海軍
- エリ級フリゲート
- オスプレイ55型コルベット
- 海上自衛隊
- 大韓民国海軍
- オランダ海軍
- タイ海軍
- ラタナコシン級コルベット
- ラチャリット級ミサイル艇
- トルコ海軍
Mk.92編集
WM28をもとに、スペリー社がライセンス生産したアメリカ版であり、現在ではロッキード・マーティン社により生産されている。
1970年代初頭、オート・メラーラ 76mmコンパット砲用のFCSとして、WM28のライセンス生産版がMk.92 FCSとして制式化され、海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートのほか、アメリカ沿岸警備隊のベア級カッターや近代化改修されたハミルトン級カッターに搭載された。
ただし、ペリー級はミサイルフリゲートであり、砲とともにSM-1MR艦対空ミサイルの射撃指揮も行うことから、同級の搭載モデルにおいては、WM28の卵型レドーム(Combined Antenna System, CASと称されている)とともに、Mk.86 FCSで採用されていたAN/SPG-60に所定の改修を加えたSTIR(Separate Target Illumination Radar)も組み込まれている[2]。
Mk.92には、下記のようなバリエーションがある。
- Mod0
- 海軍向けの最初期モデル。
- Mod1
- 沿岸警備隊向けとして、SAM誘導能力とSTIRを省いたモデル。
- Mod2
- ペリー級ミサイルフリゲート向けのモデル。Mk.107コンソールを有し、対空用チャンネルが2つに増やされている。
- Mod5
- バドル級コルベット向けのモデル。
- Mod6
- Mod2にCORT(Coherent Receiver Transmitter)を適用し、低空目標への対処能力などを強化した改良型。
- Mod12
- Mod6をもとにSM-2MRおよびESSMの運用に対応したモデル。中間指令誘導に対応し、また、VLSにも対応させることができる。
なお、米海軍のペリー級では、コスト低減のため、順次にSM-1MRの運用能力を撤去しているが、これに伴ってMk.92のSTIRも撤去されている。
Mod番号 | AAW | ASuW | SAM誘導能力 |
---|---|---|---|
0 | 1 | 2 | ○ |
1 | 1 | ||
2 | 2 | ○ | |
5 | 1 | ||
6 | 2 | ○ | |
12 | 2 |
搭載艦艇編集
参考文献編集
- ^ a b Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629
- ^ a b c “M20/WM20/WM22/WM25/WM27/WM28/Mk 92 (Netherlands), Command, surveillance and weapon control systems”. Jane's Naval Weapon Systems. Jane's Information Group. (2012-05-25) .
- ^ “MK 92 Fire Control System Manufacturer Doc.”. GlobalSecurity.org. 2009年2月26日閲覧。