ウィキペディアの記事の導入部導入節、あるいはリード文、イントロダクション)は、目次よりも前にあるであり、最上位の見出しである記事名から始まります。記事を紹介し、最も重要な側面を要約するという役割があります。

導入部は、前置きであると同時に、それ自体で完結したひとつの記事であるべきです。第1文で主題を定義し、続いて別名や間違いやすい事柄に触れ、前後関係や注目に値する理由を説明し、そして最も重要な点—あらゆる著名な論争も要約することが推奨されます[注釈 1]。主題の特筆性は、通常は最初のわずかな文章にて明らかにされるでしょう。それぞれの話題を強調するには、信頼できる情報源における、その重要性の強弱に大まかに一致している必要があります。細々とした基本的な事実は別にして、重要な情報は以降の記事本文で取り上げないなら導入部でも触れないようにします。

導入部は多くの人々が読むその記事の最初の部分であり、そして導入部だけを読むことも多いです。その記事をさらに読もうという興味を引き出すことが推奨されますが、導入部ではそれに続く内容をほのめかすことで、読み手に対して「もったいぶる」ことは推奨されません。その代わりに、導入部は中立的な観点を伴った理解しやすい表現にて、明確に記述されることが推奨されています。長さは、記事本文の長さに応じて1 - 5段落が目安であり、必要に応じて適切な出典を明らかにします。

導入部の要素 編集

導入部には、説明を補足したり、情報を告知するための各種テンプレートInfobox、記事を代表するような画像が用いられます。それらの次に導入部の文章である導入文が来ます。そして次の見出しまでが導入部です。見出しが記事全体で4つ以上あれば、見出しの前に目次が表示されます。

出典 編集

導入部も記事本文と同様に検証可能性および他の方針やガイドラインを遵守していなければなりません。導入部は通常記事本文に書かれている情報の繰り返しであるため、執筆者は冗長さを回避するために記事本文と重複する出典の提示を避けようとすることと、論争のある話題などで読者が記述の情報源を見つけやすいように本文中に脚注を加えて出典を提示し利便を図ることとのバランスを取らなければなりません。記事本文が記事主題の内容に関して詳しい説明を行うのとは対照的に、導入部は一般的な内容を大まかにまとめて書かれるのが普通であるため、論争の対象とはならないような主題の導入部における情報に出典の提示を求められることはあまりないでしょう。一方で、論争の対象となるような主題の記事であったり、内容に説明が求められる、もしくは説明が求められそうな記述に対しては本文中に脚注を加えて出典を提示することが求められるでしょう。導入部における出典提示の必要性は編集者間の合意形成によってケースバイケースで決められるべきです。複雑な主題、現在進行中の主題、あるいは論争の対象となるような主題であれば多くの出典の提示が要求されるでしょうが、そうでない記事については、出典の提示はほんのわずかか、あるいはなくても構わないでしょう。導入部における出典の提示は全ての記事において必要とされているわけではなく、禁止されているわけでもありません。いずれにせよ、検証可能性を満たさない情報を導入部に記載できるような、特別な方針の例外があるわけではないことには注意してください。

著作物の引用存命人物の伝記における論争のある話題などを含むいくつかのケースでは、一般性の程度や記述場所に関係なく、その話題が言及されるたびに本文中に脚注を加えて出典を提示しなければなりません。これは、著作物を合法的に引用するために必要な著作権法上の要求や、存命中の人物の伝記に関するウィキメディア財団の方針などによって求められる要件であるため、これらのケースにおいては編集者間での合意形成によって出典の提示を不要とすることはできません。

導入文 編集

理解しやすい概要を提供する 編集

導入部は記事全体の前置きであると同時に、それ自体で完結したひとつの記事であるべきです。その記事が取り扱う最も重要な点を簡潔に述べる必要があります。主題が注目に値する理由を明確にしたり、少なくとも導入部にてそのことが紹介されている必要があります(しかし大言壮語とならないように)。記事の他の部分よりも、理解しやすい文章であることがいっそう重要です。続く詳細項目への興味を持てるように心がけます。ただし驚くべき事実について、それを説明することなくほのめかすのはいけません。非常に長い段落や、過剰に細かな説明は避けるようにします。より詳しい説明は、記事本文で行います。

多くの場合、役立つ略語は紹介しますが、専門用語や記号といった理解の難しいものは避けます。数学の方程式や数式は、幅広い読者が理解できる導入部を作るという目標を妨げるのであれば、通常は避けるべきです。一般的でない用語が必須であれば、文脈中に登場させて結びつけ、手短に定義します。主題は一般の読者にも親しみやすい文脈の中に置かれているべきです。例えば町の位置を説明するには、緯度経度を使うよりは地域名や、さらに広域の地名を持ち出す方がよいということです。読者を最初の単語からいきなり主題の中心へと放り込むのではなく、そっとその中へと進ませる必要があります。

強調は適切に 編集

話題の重要性を強調する時には、相応に重視するという方針によって、公表された信頼できる情報源に従って相対的に重要性を反映させるべきです。これは導入部と記事本文の両方で当てはまります。もしこれら2つの部分で重視の度合が異なれば、その不一致の解消に努めるべきです。重要な情報は、記事の導入部以外の部分で扱われていないなら、導入部でも取り上げないようにすべきです。しかし、導入部に登場する全てを、記事本文でも再び取り上げなければならないということでもありません。そのような例外は、引用文、例示、生年月日、分類名といった特定の事項です。このことは、ある情報を導入部から除去する理由とするのではなく、むしろ導入部の話題の範囲を、記事本文と調和させるためにあります。

最初の段落 編集

最初の段落では、主題が中立的な観点から定義されていなければいけませんが、過剰に詳しくもしないようにします。主題を取り巻く一連の状況や事実を提示することで、その主題が何であるかの文脈を確立します。必要であれば、その時間と場所にも触れるべきです。また、主題の境界も定めます。

最初の文の形式 編集

  1. 第1文の主題(主語)を項目名とし、定義を記載する。項目名を'''で囲み強調(太字)します。ただし、記事名の付け方に従って項目名が一般名である場合は、第1文の主語を正式名称とし強調表示としてもいいでしょう。
  2. 曖昧さ回避の括弧書きがある場合は、第1文の主題(主語)に含めません。
    例:キーボード (コンピュータ)キーボード
  3. 項目名の後には括弧()でくくって中に読み仮名をいれる。括弧の中には読み仮名の後に付加情報(生年月日など)を書いてもよい。
  4. 「(項目名)は」、「(項目名)とは」の後の読点は入れても入れなくてもよい。
  5. この定義文については、「(項目名)とは……である。」という文体に統一すべきという意見と、体言止めにするべきという意見、どちらでも構わないという意見がそれぞれあり、過去に議論が行なわれたが、今のところ一致した見解はない。
  6. よく知られている別名があれば、最初の文の中や、導入部に強調(太字)で書く。記事名が愛称や通称の場合、正式名称を導入部に強調(太字)で書く。

導入部の書き方は分野ごとに規定されている場合もあります。詳しくはWikipedia:ウィキプロジェクトを参照してください。

導入部(第1段落)の例 編集

  • 鉛筆(えんぴつ)とは、筆記用具の一種で、黒鉛粘土などの粉末を混ぜ合わせて焼いたもので芯をつくり、その外側に木材などを接着し持ちやすくしたもの。芯をに擦りつけて炭素を付着させる。
  • フィガロの結婚』(フィガロのけっこん、Le nozze di Figaro)とは、フランスの劇作家ボーマルシェによる戯曲、および同戯曲をロレンツォ・ダ・ポンテがイタリア語に訳したものをもとにモーツァルトが作曲したオペラである。原作は『セビリアの理髪師』の続編にあたり、1784年にパリで初演された。
  • ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei、ユリウス暦1564年2月15日 - グレゴリオ暦1642年1月8日)はイタリア物理学者天文学者で近代科学の創始者の1人。物理学の分野では、落下運動の法則や投射物の軌跡について発見したり、モーメントの概念を導入した。天文学の分野では、発明されたばかりの望遠鏡を使って、太陽の黒点、月の凹凸、木星の衛星、金星の満ち欠けなどを発見した。また、実験・観測を重視し、近代科学の礎を築いた。
  • 東洋思想での(みち)は、人や国の規範としての意味と、宇宙の中心となる原理としての意味、あるいは両者を兼ねそろえた概念を持つ。道家では、道を人間は感覚としてとらえることができないが、万物の根源として存在するものとしている。一方、儒家での道は、倫理道徳の規範、あるいは理想の意味をもつ。
  • 水酸化ナトリウム(すいさんかナトリウム)は、ナトリウムの水酸化物。化学式はNaOH。強塩基性で、苛性ソーダ(かせいソーダ)とも呼ばれる。食塩水から安価に製造できることから、工業用に広く使われる。
  • シャア・アズナブルは、アニメ『機動戦士ガンダム』およびその関連作品の登場人物である。『機動戦士ガンダム』では主人公であるアムロ・レイのライバルとしての役割をもった。アムロと同じくニュータイプ(高い認識能力をもつ新しい人類のこと)であり、ジオン公国軍のパイロットや指揮官として数々の活躍をした。
  • HyperText Markup Language(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ、略称:HTML)は、ウェブ上のドキュメントを記述するためのマークアップ言語である。

定義 編集

導入文の第1文はその項目の主題についての定義を書きます。その理由として次のことが挙げられます。

  • 読者が調べたいものかどうかの判断がしやすくなる - 定義がなければ、調べたいものかどうかを判断するために読み進めなければなりません。これでは、使いやすい百科事典とは言えません。
  • 全文検索のときにその項目が検索できるようになる - ウィキペディアで使用されているMediaWikiソフトウェアは、全文検索のときにページ名の検索を行いません。ですから、記事のどこかに項目名がなければ検索できなくなります。
  • 外部検索サイトで検索しやすくなる - Googleなど外部の検索サイトの中には、検索結果にそのページの一部が表示されるものがあります。そのとき、項目名を主題にした定義がかかれていると、その項目名で検索したときにその定義が検索結果に表示されやすくなるので、読者が読みたいものかどうか判別しやすくなります。
  • 執筆者が別の内容を投稿してしまうのを防止する - 第1文を定義とすることで、その項目名とずれたことを執筆してしまう間違いを防止します。また、他の人も、その項目の主題に対する知識がなくても誤りであることがはっきり分かるので対処しやすくなります。

定義文は次のことに注意してください。

  1. 項目名は定義文の先頭にあるのが望ましいが、場合によっては文の途中にあってもよい。
  2. 架空の人物・事柄を扱っている場合には、それが分かるようにしておく。

読み仮名 編集

読み仮名は次のガイドラインに沿ってください。

※人名で「○○X世」などの記事では読み仮名を付けないことが慣例となっています(「Wikipedia:スタイルマニュアル/人物伝」を参照)。
※用例に挙げた項目名は、本来の強調(太字)表記を省略しています。
1. 項目名の直後に丸括弧( )をつけ、括弧内の最初に読みをつける。
2. 以下に示す項目名に読み仮名は不要です。
  • 仮名のみ(平仮名のみ、片仮名のみ、それらの組み合わせのみ)で構成された項目名。
  • 英数字だけで構成され、特殊な読み方をしない(英字は1文字ずつ文字の名称を読む)項目名。
  • 仮名と、特殊な読み方をしない英数字の組み合わせによる項目名。
用例:F1レギュレーション
3. 文字の種類に応じた読み仮名の付け方は以下のとおりです。
用例:片仮名(かたかな)。
  • 読み仮名の必要な項目名に含まれる平仮名と片仮名は、省略せず、読み仮名のほうにもそのまま書く。
用例:アメリカ大陸の発見(アメリカたいりくのはっけん)。
  • 特殊な読み方をしない英数字に読み仮名は不要です。そのままに記載してください。
用例:STS-135
  • 特殊な読み方をする英数字は、片仮名もしくは平仮名で読みを示す。その際、日本語以外に準じた読みは片仮名で、日本語に準じた読みは平仮名で表す。
用例:U-17サッカー日本代表(ユーじゅうしちサッカーにっぽんだいひょう、アンダーセブンティーンサッカーにっぽんだいひょう)。
4. 読みを見やすくするために適度に半角スペースを入れてもよい。
用例:オークニー諸島の新石器時代遺跡中心地(オークニーしょとう の しんせっきじだい いせき ちゅうしんち)。
5. 項目名の区切り文字として使われている「・」(中黒)「=」はそのまま入れる。
用例:アクアワールド・大洗(アクアワールド・おおあらい)。
6. 項目名の中で使われている「。」「、」(句読点)や括弧などは読みに含まない。
用例:モーニング娘。(モーニングむすめ)。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院(レオナルド・ダ・ヴィンチ の さいごのばんさん がある サンタ・マリア・デッレ・グラツィエきょうかい と ドメニコかいしゅうどういん)。
7. 読みが複数ある場合には「、」(読点)で区切って併記する。
用例:U-17サッカー日本代表(ユーじゅうしちサッカーにっぽんだいひょう、アンダーセブンティーンサッカーにっぽんだいひょう)。
8. 読み仮名の後に関連性の無い解説文が続く場合(文脈の区切りを明示すべき場合)、「。」(句点)で区切るのが望ましい。
用例:≪未編集≫
9. 読みを'''を使って強調(太字)としてもよい。
用例:≪未編集≫

原語表記 編集

1. 日本語以外に由来する項目名の場合は、丸括弧( )内に原語表記を追加する。項目名に読みをつけなければならない場合は、読みの後につける。
例:ドップラー効果の項目 → ドップラー効果(ドップラーこうか、: Doppler effect
2. 和製英語のような語は、日本語に由来するのであって日本語以外と直接には関係ないので、原語表記はつけない。

別名 編集

別名は強調(太字に)します。できれば第1段落中に記すと読者が探しやすいでしょう。導入部に雑多な別名が詰め込まれて、記事の全体像が説明されなかったり、言語表記が多すぎて可読性がよくない場合には、別名については節にして記事本文で言及します。導入部では、いくつかの特によく知られた別名や、主題に関連深い言語での言語表記が挙げられるでしょう。名称に関する節をつくり、定義や観点の違いを説明することも読者の助けとなるでしょう。

要約 編集

定義と名称に続いて、その記事の要約を記します。要約は、読者にその記事の要点を示し、記事の主題がなぜ重要であるのかを説明するものです。主題に関する著名な論争点があればそれも記してください。ただし、データを羅列したり、記事全体の説明にならないような雑多な内容を記すことは避けてください。

定義だけで記事の基本的な説明が十分なされるような場合や、スタブのような短い記事の場合は必要ありません。ただし、ウィキペディアは辞書ではありませんから、通常は続いてその記事の要約を手短に、かつ全面的に説明します。短すぎず、また長すぎて読むのが困難にならない長さが必要です。

導入部の長さ 編集

導入部の長さは、一般に記事全体の長さに対応します。ウィキペディア日本語版では、以前は導入部は3段落以内とされていたために、記事が大きくなるにつれ読みやすさの観点から記事の概要を記す、「概要」あるいは「概略」節を作る慣行ができました。2008年に導入部を記事の長さに応じるよう改定し、2014年に大雑把な目安として、30,000バイト以上の長い記事で3 - 5段落の長さを採用しました。これは導入部がそれ以降の本文の量を反映しているという説明を大雑把に試みたに過ぎません。段落を整えるためだけに編集するのではなく、定義文に続いて記事全体の重要な内容を手短に紹介しているかということも考慮してください。

導入部が長大になっていたり、節に雑多な内容が含まれている場合などは、記事の構成を見直すことで、文章の長さを調整します。要約は「概要」の節を作って書くのもいいでしょう。「概要」節を作る場合でも、重複した内容を導入部に要約として記載しても構いません。ただし導入部での説明はより簡潔にするよう努めて下さい。導入部に記事の要約があると、本文に何が書いてあるか見当を付けやすいでしょう。

「概要」節を作る場合 編集

記事に「概要」「概略」などの節を設ける際は、以下のことに注意してください。

「概要」節を作る場合の注意 編集

  • 数行程度しかない「概要」節を作るとかえって読みにくくなることもあります。記事に関する基本的な説明を補足したいが十分な量がない場合は、導入部に組み込むようにしてください。
  • 既存の記事の長い導入部から「概要」節を作る場合、単純に導入部の途中に見出しを挿入することはやめてください。文章のつながりがたたれ、かえって読みにくくなる場合があります。導入部を編集する場合は、導入部の長さだけではなく、記事全体の内容や構成を十分に考慮してください。
  • さほど長い記事でないにもかかわらず導入部だけが長くなってしまっている場合、単純に「概要」節を作るのではなく、定義の書き方に問題が無いか、導入部に雑多な内容が含まれていないかなど、記事全体の構成を見直すようにして下さい。
  • 節を作るかどうかは、各記事の執筆者間で意見を調整してください。

概要節を修正する場合の注意 編集

  • 記事の内容の大部分が「概要」節に書かれている場合、節の分け方を修正すべきであることが多いです。1 - 5段落程度であって導入部に統合可能な内容の場合は統合する、内容的に「歴史」など別の名前がふさわしければ節の名前を変更する、長すぎる「概要」節であれば複数の節に整理して正常な節分けにする、などの対応を検討してみて下さい。
  • 「概要」節が数行程度しかないからといって、単純に導入部へ入れ込むのはやめてください。組み込む場合は、文脈に注意してください。意味不明になる場合があります。
  • 既に「概要」節のある記事の導入部に要約を追加するために、「概要」節を導入部へ移動させる場合は、文章の構成や長さに注意してください。一部を単純に移動させても各節が完結しなくなりますし、全部移動させると導入部が大きくなりすぎるでしょう。このようなときは、新たに適切な要約を作成してください。

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 導入部では、さほど重視されない論争に必要以上の注意を加えることによって、中立的な観点に反しないこと。