勧誘行為(カンバス、: Canvassing)とはコミュニティで行われている議論を知らせるために多数のウィキペディアンにメッセージを送ることです[1]。状況によっては、他の編集者に現在行われている議論について知らせることも認められますが、議論の質を高めるためというよりも議論の結果を影響させようとして書かれたメッセージは、合意形成のプロセスをだめにし、一般的に攪乱行為と見なされます。このガイドラインでは、攪乱行為となるような勧誘を行わずに、他の編集者にお知らせをする方法を述べています[2]

勧誘の種類 編集

下記の表では、どのような状況において告知が容認され(適切な告知)、どのような状況において容認されない(不適切な告知)かを説明しています。端的に言えば、ウィキペディアにおける合意形成プロセスを攪乱しないためには、利用者は告知数を少なくとどめ(または適切なウィキプロジェクトを探し)、メッセージ内容を中立に留め、知らせる相手をその思想・立場によって選別してはいけません。

  大きさ   メッセージ   受け手   透明性
適切な告知 限定的な書き込み かつ 中立的 かつ 無所属 かつ 開放的
不適切な告知 大量の書き込み または 偏向 または 党派的 または 閉鎖的
用語 過剰なクロスポスト   キャンペーン   票の誘導   裏での勧誘

適切な告知 編集

少数の利用者に、中立的な立場で書かれたお知らせを送ることは、そのお知らせが議論の流れを自分に有利にするためではなく、議論を改善しようと意図されたものであれば、「適切なお知らせ」と見なされています(例えば、あるウィキペディアンが特定の分野の専門家として知られており、かつその分野と関連する議論へ参加してもよいという意思を示している場合など)。このようなお知らせは、受け手が事前に、自発的に進行を知らせてくれるよう頼んでいる場合はより望ましいものとなりますが、逆に相手が知らせるのをやめるように告げた場合は、容認されないものとなります。適切なお知らせの例は以下の通りです。

メッセージは常に中立を保ち、議論が行われている場に、お知らせを送付したことについて書き込んでください。

以下のような告知の仕方がウィキペディアンの中で広く認められているものです。

  • オープンにする。個人的なメッセージと受け取れるようなクロスポストをしないでください。
  • 礼儀正しくする。多くの人の目に触れる可能性のあるメッセージでは、エチケットを守ることが特に大切です。
  • 繰り返しを避ける。A4用紙5枚のエッセイを20人の会話ページに貼り付けて回るよりも、最も適切な場所に書いた上で、そこへのリンクを知らせるようにしましょう。
  • Botを使わない。手作業でメッセージを送る時間がもったいないと感じるのであれば、他の人たちにそれを読む、あるいは捨てる時間を取らせないでください。
  • 特定の見解を持っていると知っている人々を議論に呼び込んで、結論を動かそうとしないでください。

たいていの場合、告知には適切な手段があります。例えば、新規記事を書いて、多くの人に読んでほしいのなら、他の百科事典の関連する記事からリンクを張り、適切なカテゴリを追加しましょう。このようにすれば、他の利用者を不快にさせることなく、あなたの記事が多くの人の目に触れ、また百科事典の役にも立つことになるのです。

不適切な告知 編集

過剰なクロスポスト 編集

ウィキペディアでは、重要な議論が人のあまり見ていない場所で行われていることがままあるため、他のウィキペディアンに大量のメッセージを送ってこの議論について大々的に知らせたい気に駆られることもあるかもしれません。たとえ、議論の結果に影響を与えることが目的ではなくとも、無関係の利用者に無差別に告知を送り付けることは、「会話ページ・スパム」(あるいは電子メールスパム)と見なされ、攪乱行為と見なされます[3]。議論へより多くの参加者を呼び込みたい場合は、まず関連するウィキプロジェクトや、ウィキペディア全体に広く周知するべき案件であればWikipedia:お知らせなどを利用し、個別の利用者に送るお知らせは少量にとどめましょう。

キャンペーン 編集

投票結果を左右するために、特定の立場を持っている、あるいは持っていると思われる利用者に対して選択的に告知をすることに対しては、確固としたルールは定まっていません。しかし、連絡を受ける利用者が多ければ多いほど、このような行為が意図的である可能性が高く、攪乱を受ける程度も大きくなり、このような行為が警告を受け、また(あるいは)制裁を受ける可能性が高まります。一部のウィキペディアンは、当該論争の全ての「側」の利用者(例えば先行する議論に参加した利用者全員)に連絡をしていれば、認められると考えています。

票の誘導 編集

票の誘導とは、(例えばユーザーボックスや利用者のカテゴリなどを利用して)特定の意見を持っているとわかっている利用者にだけ、大量に会話ページへのメッセージを投稿し、現在実施中、もしくは実施予定の投票について告知することです。過去の議論を再検討する場合に、過去の議論で特定の見解だけを示した利用者にだけ連絡することも、多くの利用者から好ましくないことと見なされています(削除依頼で削除票を投じた人だけに連絡する、など)。

裏での勧誘 編集

電子メールや匿名掲示板、SNSなど、ウィキペディア外の手段を使って利用者に告知をすることは、ウィキペディア上での告知に較べて透明性が低いため、会話ページでの告知を避ける充分な理由がないかぎり、推奨されません。状況によっては、特定の人々にメールを通じて連絡をすることは、同じ人々に会話ページを通じてメッセージを送ることよりも否定的に見られることがあります。

フォーラム・ショッピング 編集

フォーラム・ショッピング」とは、自分が望む意見が得られるまで、外部の意見を求め続けることを指します。例えば、投稿ブロックを受けた時に[英語版では]そのブロックが妥当かどうか第三者の評価を要求することができます。もしこの評価において、ブロックが妥当と判断された場合には、また別の第三者評価を求めることは、通常不適切なことです。フォーラム・ショッピングは、「内部スパム」と見なされ、ブロックの理由となりえます。

フォーラム・ショッピングはまた、最初の議論の場で自分が望む結果が得られなかった時に、同じ話題をあちこち(例えば、井戸端、管理者伝言板、削除依頼など)に連続して持ち込むことにもあてはまります。

不適切な告知への対応 編集

行われたばかりの明らかに攪乱的な勧誘へのもっとも効果的な対応は、その勧誘を行っている利用者(たち)に、告知の投稿をやめるよう丁寧に頼み、それでも継続するようであれば、それ以上の告知の投稿を止めるためにブロックを行うことです。過去に攪乱的な勧誘を行い、やめるように依頼された経歴のある利用者の場合、ブロックが必要であると考えられれば、新たな警告無しで即座にブロックしても構いません。ロールバックを使って会話ページへの告知を除去することは推奨されていません。なぜなら、告知を送られた人はどのみちその告知を読み、そしてロールバックをしたあなたの会話ページには大量の苦情が寄せられかねないからです。勧誘のメッセージが投稿された会話ページを特定版削除すれば、メッセージを削除することはできますが、版数の極端に多い会話ページの復旧は難しい場合があり、また大量の内部リンクがあるページの削除はサーバーを遅くする可能性がありますので、この方法をとる時には慎重に行う必要があります。

注と出典 編集

  1. ^ これにはあらゆる種類の勧誘が含まれえます。例えば、カスタム署名によって、署名付きの発言を行うごとにその署名に自動的に勧誘メッセージを付加するようにすることなども含まれます。
  2. ^ [英語版では、]クロスポストによって進行中の投票の投票数を積み重ねようとした挑発的な行為を行ったことにより、裁定委員会によって「攪乱行為」との裁定を受けて保護観察に処され、最終的にはコミュニティによって追放された事例が、少なくとも1例あります。この際、とある裁定委員は次のように述べてその立場を明らかにしています。「手短に言えば、常識的な量であれば問題について情報を流すのも構わないと考えます。(ですが、)積極的なプロパガンダは困ります。その違いは、攪乱行為にあたるかならないかです。起こしていることが皆を苛立たせているのなら、それは問題です。論争が起きている当該項目を普段編集していない利用者の多くに連絡を取った時、たいてい、越えてはならない線を越えたことになります。」Wikipedia:Requests for arbitration/Guanaco, MarkSweep, et al#StrangerInParadise is disruptiveを参照のこと。
  3. ^ [英語版では]裁定委員会によって「散発的に会話ページに若干のクロスポストを行うことは、ウィキペディアの慣習の一部です。しかし、過剰なクロスポストは現在のウィキペディアの規範に反しています。より広い文脈からは「ウィキらしくない」(unwiki)なのです」(en:Wikipedia:Requests for arbitration/IZAK#Principles参照)。

関連項目 編集