特に最近発展した領域や最先端の学問分野などにおいて、日本語における定訳が与えられていない、定訳として定まった語が存在しない言葉がしばしば登場します。そのような語は例えば、専門家間でももはや対応する英単語をそのまま使用していたり、造語であるために逐語訳すら取れなかったりするために起こります。

一方、ウィキペディアでは検証可能性あるいは独自研究は載せないといった方針に則り、信頼できる情報源に基づいた記述が求められます。ということは、定訳のない言葉をどのように書くにせよ、記事の編集者はそれが何らかの根拠によるものだと説明できることが求められます――そうでなければそれは、「新しい用語を定義する」「新しい造語を、その造語が何らかの評判の良い資料に由来することを示さずに、導入したり使ったりする」すなわち独自研究とみなされ、除去あるいは削除されることになるでしょう。

このページの対象 編集

この解説ページでは主に学術分野において、定訳のない語を記事中に登場させなければならない時の対処法について記述します。例えば適当な言い換えによって造語や独自訳を作らずに済むという場合は、そのようにした方がよいでしょう。その他の、以下に挙げるような場合はそれぞれ対応した別のページを参考にしてください。

その語を記事名にした独立記事を立項したい
記事名にその語を使用する場合は、Template:暫定記事名を使用して記事名が暫定的であることを示す方法が使えます。ただし独立記事作成の目安記事名の付け方をよく確認して、少なくともその記事名がこれらガイドラインに沿っていることをよく確認しましょう。機械翻訳をそのまま書き写すこと、百科事典的でない記事を書いてしまうことはページの削除に繋がります。
その語は映画や小説などのタイトルである
映画などのタイトルの場合は、Template:翻訳を使い、元の語や文を直訳したものを記載することが多いようです。このテンプレートは原題の直訳と邦題が異なる場合などにも使われます。
その語はなんらかの固有名詞である
固有名詞である場合は、まず日本語表記例が本当にないか慎重に探してください。そしてそのような表記例が存在しない場合、Wikipedia:外来語表記法によるカタカナ表記または原語表記を行うことが通常でしょう。特に建築物の名前や国際会議の名前といったものについて、逐語訳などを書くことは大抵の場合相応しくありません。
その語は喩え話などのためにわずかな回数だけ登場した語彙である
喩え話などによって仮想的に導入された概念や事物の場合、定訳があることが必ずしも重要でないこともあるでしょう。その場合は、例えばTemplate:Literal translationや、同等のマーカー(例えば「(逐語訳:~~)」と記述する)を使い、逐語訳を与えることで問題が解決するかもしれません。

定訳がないことの確認 編集

何事もそうですが、何かが存在することを証明するより、存在しないことを証明する方が一般的に困難です。存在することの証明は証拠を持ってくればいいだけですが、存在しないことの証明は調べる対象のすべてを調べなければならないからです(消極的事実の証明)。

決してGoogle検索や機械翻訳を過信しないでください。技術の進歩により、現在われわれは比較的性能のいい機械翻訳によって他言語の文献を読みやすい環境にはなっています。しかし、機械翻訳は各種の専門用語や固有名詞のすべてに対応しているわけではありません。場合によってはただの逐語訳か、あるいは誤訳を生成することもあるでしょう。機械翻訳の結果は現状 (2022年2月) で信頼できる情報源とはなりえません。

また、Google検索を行うと右側にナレッジパネルが表示されることがあります。このページで対象とされているような語句をGoogle検索したとき、ナレッジパネルの情報源は英語版Wikipediaを機械翻訳にかけたものである場合があります。記述の信頼性を自分自身に求めることはできませんから、ナレッジパネルに書いてあったからと言って正式な用語とは限りません。

定訳が書かれているかもしれない、書かれていたとしたら出典として信頼できる情報源を探す方法は、例えば以下に挙げられるものがあります。

訳書を探す 編集

他言語で書かれた著名な書籍に登場したことがはっきりしている単語ならば、まずはその訳書をあたって、対訳が存在しないかを確認するべきでしょう。はっきりしていない場合でも、何らかの訳書において対訳としてその語が書かれていないかは確認する方がよいでしょう。そのような書籍そのものが、訳語の使用に対する情報源となるからです。

研究資料を探す 編集

日本の専門者間で原語がそのまま通っていたとしても、しばしば彼らは訳語を用意する場合があります。その場合、日本語資料がオンライン上に残っていることがあります。もちろん発表資料は査読論文に比べれば信頼性に劣りますが、訳語の用例としては一定の信頼性が担保できるでしょう。

また、科研費の申請は日本語で行うため、研究内容の説明のために何らかの訳語を定めて使用している可能性があります。それらは(公開部分に書かれていれば)J-GLOBALあるいはGRANTSを使って調べることができます。

関連項目 編集

定訳がない語の扱い 編集

十分な調査を行った上で、かつ定訳がない言葉をどうしても本文中に登場させなければならないと判断した場合、その対処方法はいくつか考えられます。ウィキペディアは規則主義ではないので、これに対して一様な対処方法のガイドラインといったものは存在しませんし存在しえません。個々の状況に合わせて最適な対処は何かを考える必要があります。

定訳がない語を示すマーカーとして、Template:定訳なしがあります。当然ながらこれはオリジナル訳語の免罪符ではありませんが、やむをえず定訳のない言葉を使用したことを誠実に読者に伝える手段となるでしょう。

一部の専門家が使用している表記 編集

定訳というほど定着していないものの、一部の専門家が訳語として使用した例がある場合は、例えば逐語訳などよりも多少は信頼性があると考えられます。そのような用例がもし存在して、かつ信頼がおけると判断した場合は、その語を使用することは悪い手段ではないでしょう。

カタカナ転写 編集

定訳のない言葉の表記方法として、それをカタカナで転写する方法がまず考えられます。ウィキペディアにはWikipedia:外来語表記法というページが存在し、これはまだ提案中のガイドラインですが外来語をどのように表記するかについて分野・言語ごとにまとめてあります。

原語表記 編集

カタカナ転写が不適当と判断される場合には、原語そのままで書くことも選択肢の1つになります。Wikipedia:記事名の付け方には「漢字・平仮名による表記がない場合は原則として片仮名で表記します。しかし略号・記号・片仮名表記を排除する意図はなく、慣例なども考慮し、最終的には日本語圏においてその表記が一般的であるかを重視して記事名を決めます。」とあります。これはあくまでも記事名に対するガイドラインですが、本文においてもいくらかは準じた扱いにする方がよいでしょう。方針やガイドラインではないですが、Wikipedia:素晴らしい記事を書くにはでは「他言語表記は控えめにしましょう」と書かれています。