クー・シー(Cu Sith、カーシー)は、スコットランドに伝わる妖精[1]。名もそのままゲール語で「犬の妖精」を意味する(クー=犬、シー=妖精)。

全身に長い暗緑色の毛を生やし、丸まった長い尾を持つ牛並みに大きな犬で、妖精達の番犬とされている[2][3]。人間を襲う事もあるという。全く音をたてず、滑るようにして移動する[3]

呼称 編集

呼称は「クー・シー」の他、「カー・シー(Cir sith)」[4]「ケー・シー(Ce sith)」[5]とも書かれる。

特徴 編集

「2歳の牛」ほどの大きさの体を覆う全身の体毛は、背が暗緑色、脚部は薄い緑色、耳は濃い緑で[6]、尾は長く、背中に上がったまま丸まる、あるいは平たく編んで下にたらされ、妖精達のすむ丘の内側(ブルー「Bru」と呼ばれる)に繋がれていて、誰かの侵入に対して放たれる、とされている。

なお、広く分布している「犬型の妖精」は、黒妖犬(ブラックドック)と呼ばれるように黒く、ほかのケルト圏、 イングランドで伝えられる「妖精丘(ノール「Knoll」と呼ばれる)に住む犬」は「赤いに白い体毛」を持つとされる。

妖精の女性に従い、人間の持つ雌牛の、捜索や搾乳、妖精丘の外側(シーヘン「Sithean」と呼ばれる)への追い込みを行う。また、時折妖精丘(そのものはノウ「Knowe」と呼ばれる)から出て彷徨し、岩場の裂け目で寝泊りすることもあるといわれる[7]。その際、人へのの前兆として[8]現れることもあるという。

獲物を追う際は、絶えず吠えることをせず、3度物凄いうなり声をあげる。その声は遠くからも聞こえるほどだという[9]

クー・シーは人間にとって脅威として語られているが、「妖精丘へ侵入した人間」を追ったクー・シーが人間の持つ犬に撃退された、という話もある。

出典 編集

  1. ^ 草野巧 『妖精』 新紀元社 35頁。
  2. ^ 草野巧 『幻想動物事典』 新紀元社 111頁。
  3. ^ a b 『妖精』 36頁。
  4. ^ キャロル・ローズ『世界の怪物・神獣事典』原書房 2004年 107頁
  5. ^ キャロル・ローズ『世界の怪物・神獣事典』173頁
  6. ^ 日本民話の会外国民話研究会訳『世界の犬の民話』三弥井書房 2009年 79頁
  7. ^ キャサリン・M・ブリッグズ『妖精事典』冨山房 1992年 87頁
  8. ^ キャロル・ローズ『世界の妖精・妖怪事典』原書房 2003年 121頁
  9. ^ 水木しげる漫画大全集』補巻3 媒体別妖怪画報集(3) 2017年 講談社 p544