シロワニ

ネズミザメ目シロワニ科のサメ

シロワニ Carcharias taurus(白和邇、Sand tiger shark) は、ネズミザメ目シロワニ科[2]に属するサメ。「ワニ(和邇)」はサメの別称。世界中の暖かい海の沿岸に生息する大型のサメで、全長3.2mに達する。繁殖様式はサメの中でも珍しい卵食・共食い型。

シロワニ
シロワニ
Carcharias taurus
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: ネズミザメ目 Lamniformes
: シロワニ科 Carchariidae [2]
: シロワニ属 Carcharias
: シロワニ C. taurus
学名
Carcharias taurus
Rafinesque, 1810
シノニム

Carcharias tricuspidatus Day, 1878

英名
Grey nurse shark
Sand tiger shark
Spotted-ragged tooth shark
シロワニの生息域

シロワニはミズワニが属すミズワニ科シロワニ属とされたこともあった[3]2020年の研究結果からオオワニザメ等が属すオオワニザメ科はオオワニザメ属とシロワニ属で単系統群を形成せず、多系統であることが示され、シロワニはオオワニザメ科からシロワニ属のみで構成されるシロワニ科へ変更された[2][4]

分布・生息地 編集

全世界の温帯・熱帯の海に生息[5]。東太平洋からは知られていない。日本近海にも生息。沿岸性。

形態 編集

 

最大で全長325cm、体重158.8kg。最大全長430cmとするものもあるが、これは未確認の記録であり、信憑性が低い。 [6]。体型は流線型で、太く重量感がある。背側の体色は褐色から灰色で、腹側は白色。幼魚期の体側には不鮮明な薄色斑が見られることもあるが、成魚では消失する。吻はやや扁平な円錐形。口は大きく、常時半開きになっている。両顎歯はほぼ同形。歯の形状は牙状で、小さな副咬頭を2つ備える。最前歯だけでなく、後ろの数列も立ち上がり、歯がずらりと並んだ外見は恐ろしい印象を与えるかもしれない。2基の背鰭はほぼ同じ大きさ。尾鰭は上葉が長く伸びる。

生態 編集

活動は夕方からで昼間は岩陰などでじっとしていることが多い。主な餌生物はサメやエイを含む魚類、甲殻類、頭足類である。

他のサメ同様浮き袋はないが、シロワニは水面で空気を吸い込み、浮き袋の代わりに胃に空気を溜める。

胎生(狭義の卵胎生)。ネズミザメ目に見られる卵食型に分類されるが、シロワニの場合はその最も特殊化したタイプであり、未受精卵だけでなく同じ子宮内の他の胎仔も捕食する卵食・共食い型である。55mmで孵化し、未受精卵や他の胎仔を食べるようになる[7]。17cmになると機能歯が生え揃い、摂食を行う[8]。サメには子宮が2つあり、それぞれに1尾の胎仔が生き残る。そのため産仔数は最大で2尾。妊娠期間は9-12ヶ月、産まれてくる子どもの大きさは約1mである[1]

人との関わり 編集

世界中の海に生息しているが、一部の地域では数が減少している。オーストラリア東海岸、大西洋南東部の個体群は絶滅の危機に瀕しており、IUCNの評価ではCRITICALLY ENDANGERED(CR)とされている。

性格は見かけによらず大人しく人を襲うことはないとされている(温厚な性格であることから、この鮫を「巨大な子犬」と呼んだ学者もいる)。インターナショナル・シャーク・アタック・ファイルにおいては36件の攻撃例のみが報告されている。[9]

飼育 編集

水族館における飼育は比較的容易で、アメリカでは1970年代から飼育を試みる水族館が存在した[10]。現在同国ではジョージア水族館のサメ展示水槽等にて飼育されている[11]。 日本においては1995年オーストラリア産の個体をマリンワールド海の中道が輸送し飼育展示を開始、その後いくつかの水族館が南アフリカ共和国から輸入し水族館飼育種として広まった[12]

2021年時点で、マリンワールド海の中道、京急油壺マリンパークアクアワールド大洗東海大学海洋科学博物館横浜八景島シーパラダイスしながわ水族館登別マリンパークニクス鳥羽水族館須磨海浜水族園すみだ水族館にて飼育展示されている。 この内、すみだ水族館で飼育されている個体は小笠原で捕獲された個体である[13][14][15][16]

飼育展示に比べ繁殖は非常に難しく、過去にシロワニの繁殖に成功した水族館はオーストラリアのアンダーウォーターワールドシーライフムールーラボ英語版マンリーシーライフサンクチュアリー英語版、南アフリカ共和国のシーワールド、ウシャカマリンワールド英語版クウェートクウェートサイエンティフィックセンター英語版日本のアクアワールド大洗の6館のみ[12][17]

また日本国内の水族館では、繁殖に向けた取り組みとしてマリンワールド海の中道、アクアワールド大洗、東海大学海洋科学博物館、横浜八景島シーパラダイス、しながわ水族館のシロワニ飼育を行う水族館5館が積極的な飼育情報共有を目指したシロワニ繁殖協議会2015年に設立された。2019年に登別マリンパークニクスが加盟し6館で情報共有や小笠原諸島での野生個体写真識別調査を行っている[12]

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b Pollard, D.; Smith, A. (2009), Carcharias taurus, 2009, p. e.T3854A10132481, doi:10.2305/IUCN.UK.2009-2.RLTS.T3854A10132481.en 
  2. ^ a b c David A.Ebert,Mare Dando and Sarah Fowler (2021). SHARKS OF THE WORLD A Compleat Guide. WILD NATURE PRESS. pp. 305 
  3. ^ 仲谷 2011, p. 35.
  4. ^ Vella, Noel; Vella, Adriana (2020-07-02). “The complete mitogenome of the Critically Endangered smalltooth sand tiger shark, Odontaspis ferox (Lamniformes: Odontaspididae)”. Mitochondrial DNA Part B 5 (3): 3319–3322. doi:10.1080/23802359.2020.1814886. PMC 7782878. PMID 33458146. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7782878/. 
  5. ^ 国内初、シロワニの水槽内繁殖に成功 アクアワールド茨城県大洗水族館”. 産経ニュース (2021年10月30日). 2021年10月30日閲覧。
  6. ^ David A.Ebert,Mare Dando and Sarah Fowler (2021). SHARKS OF THE WORLD A Compleat Guide. WILD NATURE PRESS. pp. 305
  7. ^ ANIMAL SPECIES:Greynurse Shark, Carcharias taurus Rafinesque, 1810Australian Museum.
  8. ^ Biological Profiles:Sand tiger shark Florida Museum of Natural History Ichthyology Department.
  9. ^ https://www.floridamuseum.ufl.edu/shark-attacks/factors/species-implicated/
  10. ^ 内田詮三 (2012). 沖縄美ら海水族館が日本一になった理由. 光文社新書号. pp. 17 
  11. ^ ジョージア水族館展示ガイド(シロワニ)
  12. ^ a b c 中村雅之ほか (2019). シロワニ繁殖協議会 の活動紹介. 板鰓類研究会報第55号. pp. 24-30 
  13. ^ シロワニ飼育館
  14. ^ 京急油壺マリンパーク展示種(魚たちの国)
  15. ^ アクアワールド茨城県大洗水族館のサメ一覧(シロワニ)
  16. ^ 小笠原の海が東京スカイツリー®︎のふもとに!?すみだ水族館のちょっと違った楽しみ方をご紹介
  17. ^ 日本初!シロワニの赤ちゃん誕生!!!

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集