全日本鉄道労働組合総連合会

JRグループの労働組合の連合組織

全日本鉄道労働組合総連合会(ぜんにほんてつどうろうどうくみあいそうれんごうかい、略称:JR総連(ジェイアールそうれん)、英語Japan Confederation of Railway Workers' Union、略称:JRU)は、JRグループの労働組合の連合組織である。日本労働組合総連合会(連合)、全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)、国際運輸労連(ITF)に加盟している。

全日本鉄道労働組合総連合会
(JR総連)
Japan Confederation of Railway Workers Union
(JRU)
設立年月日 1987年昭和62年)2月2日
組織形態 職種別労働組合
組合員数 16,000人(2022年7月)
国籍 日本の旗 日本
本部所在地 141-0031
東京都品川区西五反田3丁目2-13
法人番号 7010705000667 ウィキデータを編集
加盟組織 日本労働組合総連合会
全日本交通運輸産業労働組合協議会
国際運輸労連
支持政党 立憲民主党
公式サイト JR総連

現在、JR総連はJR東日本JR北海道JR貨物で多数派の労働組合を形成している。その他、鉄道関連(車内販売、古くは列車食堂やビュッフェ営業)としてホテル聚楽の労働組合であるホテル聚楽労働組合が加盟している。

国鉄時代に採用された組合員の定年退職が相次いでいるのに加え、2018年以降のJR東日本での労政転換による傘下組合からの組合員の大量脱退もあり、組合員数は減少傾向にある。2020年令和2年)現在、組合員数は18,742名[1]委員長は山口浩治である。

歴史 編集

1987年昭和62年)の国鉄分割民営化にあたって、国鉄分割民営化に協力し、航空自家用車トラックの台頭で輸送シェアが低下し、斜陽化していた鉄道産業の再生と組合員の雇用を守るため、国鉄時代の国鉄動力車労働組合(動労)・鉄道労働組合(鉄労)・全国鉄道施設労働組合(全施労)・車輌労働組合(車労)・鉄輪会・社員労働組合・更に分割民営化に反対だった国鉄労働組合(国労)から分裂した真国鉄労働組合(真国労)などが、同年2月2日国鉄改革労働組合協議会を結成した。初代会長は鉄労(旧鉄労)出身の志摩好達である。分割民営化後は各企業ごとの労働組合の連合体として全日本鉄道労働組合総連合会(鉄道労連)を発足させ、同年4月1日付けで全民労協に加盟した。略称は後にJR総連としている。

本州では予想以上の退職者が出て、定員割れになりそうな状況であった。 2月2日の鉄道労連結成大会では「われわれの仲間たちが民営化成功のために、派遣や広域異動、一時帰休に応じたのに対して、反対し妨害した汗も涙も流さぬ職員が現地で採用される、などということは絶対に認めない」とする内容を含む『新会社の採用・配属に関する特別決議』を採択し、たとえ定員割れになっても、国労など分割民営化に反対する職員を採用しないよう要請した(詳細は国鉄労働組合#JR以降と政府・経営側の評価を参照)。

JRには、本州・四国では国労・全動労などの組合員もほとんど採用されたが、定員超過の北海道・九州では、採用調査で国労・全動労の方針である「現地現職」と記入したり、白紙で提出したため採用されない組合員もいた。

鉄道労連の不採用者は全国で29名(北海道22、東日本1、西日本2、九州4。東海、四国は全員採用)、採用率は99%を超えた。一方、国労の不採用者は全国で5,049名(北海道3,400、本州3社57、四国2、九州1,550)であり、本州や四国の採用率は99%を超えたが、北海道と九州ではそれぞれ48%、43.1%だった。全動労も、北海道と九州の採用率はそれぞれ28.1%、32%だった。また、旧鉄労出身の志摩は「民営化に反対し、本来採用すべきでない人たちを採用したのだから、この人たちを絶対に本務(本来の鉄道の仕事)につけないこと。もし本務についてドライバー(運転士)や車掌をやるといつストライキをやるか分からない」と要請。JR東日本では、鉄道の本務勤務は鉄道労連が占めた一方、雇用を守るために一時帰休や期限付きで他企業(いすゞ自動車日産自動車など)やグループ会社へ出向・派遣に応じた鉄道労連の組合員も多数いた。

その後、旧鉄労系と旧動労系の間で組織を二分する対立が生じ、結局鉄労色の強いJR東海労組(後のJR東海ユニオン)・JR西労組・JR四国労組・JR九州労組の4組合がJR総連を離脱した。これらの会社のJR総連支持派組合員はこれに反撥して新組合JR東海労JR西労、JR九州労(後に解散し、一部はJR九州ユニオンへ移行)を結成、JR総連に加盟して分裂した。これらの会社では総連系の組合は少数派に転落した。その後1992年(平成4年)5月18日に、1987年(昭和62年)2月28日に国労から分離発足した旧日本鉄道産業労働組合総連合(旧鉄産総連)労働組合が総連を離脱した4組合に合流し、日本鉄道労働組合連合会(JR連合)を発足させている。なお、2006年(平成18年)7月に先述したJR九州労の解散に端を発する組織問題[3]からJR九州ユニオンがJR総連からの脱退を表明(後に除名)。2006年8月以降、JR四国・JR九州にはJR総連加盟組合は存在しない。

JR総連には旧・日本テレコムの流れを汲むソフトバンク労働組合も加盟していたが、情報通信事業のグローバル競争などを踏まえ、2019年の第35回定期大会においてJR総連からの「卒業」の承認を受け、情報労連に移籍した。

革マル派との関係 編集

JR総連の実質的な前身である国鉄動力車労働組合(動労本部)が革マル派の影響下にあったと公然と言われていたが、現在もなおJR総連が革マル派の影響下にあるという見方がある。

革マル派との関係については、以前から『週刊文春』や『週刊現代』などが取り上げていた[4]が、2010年(平成22年)2月、警察庁は広報誌にて「労働運動等への介入を強めた過激派」への動向に警鐘を鳴らした上で、JR総連やJR東労組に革マル派が浸透しているとの認識を示した[5]。これについて佐藤勉衆議院議員第174回国会の質問答弁にて鳩山由紀夫首相に問い質したところ、鳩山首相は「JR総連及びJR東労組の影響を行使し得る立場に、革マル派活動家が相当浸透している」との答弁書を送付した[6]。更に、8月3日に開催された第175回国会衆議院予算委員会にて衆議院議員の平沢勝栄が「JR総連及びJR東労組の政策調査部長という幹部が民主党の公認で全国比例区から出馬し当選している」と指摘、それに対して国家公安委員会委員長中野寛成(当時)は「革マル派が相当浸透しているとの認識は事実である」「候補者が民主党から出たいと希望し、当時の民主党執行部が判断し、公認した」という趣旨の答弁を行った[7]

革マル派と対立関係にある中核派革労協主流派は、JR総連を「JR総連カクマル」(中核派の場合)、「JR総連革マル」(革労協の場合)と呼ぶなど、JR総連やJR東労組が革マル派と密接な関係にあることを当然視している。ただし、中核派は革マル派が2000年に「カクマル中央」(黒田派)と「JR総連カクマル」(松崎派)に分裂したとしており、革労協主流派は革マル派中央とJR総連の分離は偽装で、両者は今でも一体であるとしている。しかし、JR総連側は関連性を否定している。

JR総連と革マル派との関係は、日本国外からも注視されている。韓国民主労総傘下の韓国鉄道公社労組は、JR総連と共闘態勢を取っている。韓国の治安機関は、日本の過激派がJR総連経由で韓国に浸透するかもしれないと警戒している[8]

JR総連およびJR東労組が、『週刊現代』の連載記事「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」で名誉を傷付けられたとして、発行元の講談社などに損害賠償を求めた裁判で、最高裁判所上告棄却し、名誉棄損の成立を認め、講談社などに770万円の賠償を命じた週刊現代側敗訴の判決が確定した[9]

なお、日本政府警察庁は、先述したようにJR総連を「革マル派が浸透している組織」と認識している[5][10][6]

政党との関係 編集

2022年の時点で、選挙では主に立憲民主党を支援しているが、嘗ては民主党生活の党を支援してきた。沖縄での活動も目立つ。[要出典]2010年(平成22年)の第22回参院選では、組織内候補の田城郁比例区で民主党公認を受け、当選している。

一方で、民主党所属議員の枝野幸男らがJR総連より献金を受けている事を、民主党政権時代に野党であった自民党議員が追及していた[10]が、2011年(平成23年)2月10日第177回国会での答弁にて枝野幸男(当時内閣官房長官)は「政治資金規正法に基づき適正に受領している」として返還する必要はないとの認識を明らかにした[11][12]。また、2011年(平成23年)2月8日には、衆議院議員の棚橋泰文により、 内閣総理大臣を務めた菅直人(当時)がJR総連より献金を受けていた事が指摘されている[13][14]

また、小沢一郎リベラル中道左派的な思想に変化すると、小沢グループの議員らとも親しくなっており、山岡賢次が田城の公認を後押しした。その後、小沢が民主党を離党しても協力関係は続き、第23回参院選では比例区において、生活の党の山岡を推薦した[15]。しかし、生活の党は1議席も取れず、山岡は落選した。そして、第24回参院選では比例区から出馬し再選を目指した田城は、高得票落選者の3位で民進党候補としては次点だった。2017年06月のJR総連定期大会に来賓として出席した民進党の選対委員長代理の近藤洋介は、2016年参議院選挙でJR総連の組織内議員であった参議院前議員の田城郁が落選したことについて、「非常に残念で、民進党の力不足でもある」と謝罪した[16]

傘下労働組合・組織 編集

脚注 編集

  1. ^ 連合構成組織一覧連合 2018年4月20日
  2. ^ 西岡研介(2019):トラジャ JR「革マル」三〇年の呪縛、労組の終焉. 東洋経済新報社
  3. ^ 結成後一貫して勢力を漸減させていたJR九州労は、2004年の九州新幹線暫定開業に伴う大規模な配置転換で組織が弱体化することを危惧し、JR九州労組への「なだれ込み」を図った。しかしJR九州労組に加入戦術であることを見抜かれて拒否された(なお、一部の組合員は個人単位でJR九州労組への加入を認められた)ため「なだれ込み」に失敗し、JR九州労の組織が崩壊。大部分の組合員が行き場を失い、各地域での小規模組合の結成とそれらの統合を経て最終的にJR九州ユニオンとなったが、その過程で勢力が半減した[2]
  4. ^ 『週刊現代』の連載をもとにして『マングローブ』という単行本が発行されている。
  5. ^ a b 現在の社会経済情勢を好機ととらえ、労働運動等への介入を強めた過激派”. 平成21年の警備情勢を顧みて【警察庁 焦点 第278号】. 警察庁 (2010年). 2013年9月28日閲覧。
  6. ^ a b 鳩山由紀夫 (2010年5月1日). “衆議院議員佐藤勉君提出革マル派によるJR総連及びJR東労組への浸透に関する質問に対する答弁書”. 衆議院. 2011年2月21日閲覧。
  7. ^ 予算委員会. 第175回国会. Vol. 2. 3 August 2010. 2011年2月21日閲覧
  8. ^ “【追跡~ソウル発】朴槿恵大統領に「体でも売れ」 韓国鉄道公社のスト闘争 JR総連が共闘”. 産経新聞. (2013年12月30日). オリジナルの2013年12月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131229231154/http://sankei.jp.msn.com/world/news/131230/kor13123007010001-n1.htm 2013年12月31日閲覧。 
  9. ^ “JR東労組巡る名誉毀損、週刊現代側の敗訴確定”. 読売新聞. (2012年3月28日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120328-OYT1T00792.htm [リンク切れ]
  10. ^ a b “首相、予算早期成立求める 政権維持へ意欲表明”. 岩手日報. (2011年2月21日). http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_s.cgi?s_main+CN2011022101000175_1 2011年2月21日閲覧。 [リンク切れ]
  11. ^ 予算委員会. 第177回国会. Vol. 10. 10 February 2011. 2013年9月28日閲覧過去にいただいた政治献金については、法に基づいて適正に受領したものでございまして、それについてどうこうしようということは考えておりません。
  12. ^ “枝野氏、JR総連の献金「適正に受領」返還しない意向”. MSN産経ニュース. (2011年2月10日). オリジナルの2011年2月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110214010706/http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110210/plc11021012110006-n1.htm 2011年2月21日閲覧。 
  13. ^ 予算委員会. 第177回国会. Vol. 8. 8 February 2011. 2013年9月28日閲覧私の調査では、あなたは小沢さんと同金額の、少なくともJR総連からの団体献金を受け取っていらっしゃいます。
  14. ^ “首相にJR総連が献金 自民・棚橋氏が指摘”. MSN産経ニュース. (2011年2月8日). オリジナルの2011年2月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110215190234/http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110208/stt11020821090008-n1.htm 2011年2月21日閲覧。 
  15. ^ JR総連 2013年2月15日号 - 全日本鉄道労働組合連合会(機関紙)
  16. ^ JR総連定期大会に近藤洋介選挙対策委員長代理が来賓として出席 民進党 2017年6月6日
  17. ^ 北海道旅客鉄道労働組合 - 北海道生産性本部
  18. ^ a b c 連合加盟労働組合リスト

関連項目 編集

外部リンク 編集