秘宝館

人間の性風俗や生物の性に関する古今東西の文物を収蔵した施設

秘宝館(ひほうかん)とは、性風俗人間の性生物の性に関する古今東西の文物を収蔵した施設のこと。

淡路島の立川水仙郷には『ナゾのパラダイス』と名付けられた秘宝館が併設される

概要 編集

 
ニューヨークのミュージアム・オブ・セックス

元々の言葉のニュアンスでは性風俗に限らず、歴史的に重要な古今東西の珍品秘宝を収蔵した施設のことを指しているように感じられるが、実際には「○○秘宝館」と呼ばれる施設は性風俗に関係する物品を陳列する施設とほぼ同一であり、「秘宝館」という語は主に性や性風俗を扱った施設を婉曲的に指すのに用いられている。

日本最初の秘宝館は1969年4月にオープンした徳島県の「男女神社秘宝館」である。1972年には京都科学標本が協力した伊勢の「元祖国際秘宝館」が開業[1]。その後、主に温泉街など大規模な観光スポットを中心に全国で作られるようになり、会社などの団体旅行全盛の1970年代後半から1980年代頃に最盛期を迎えた。1970年代後半以降の秘宝館は、男性客だけでなく女性客も視野に入れたり、東宝などの映像・舞台美術業者の制作によるアミューズメント型の展示を行う施設なども多く見られるようになった[1]

その後平成の時代(1990年代以降)になると、団体旅行の減少や社会の「洗練」によって忌避されるようになり次第に入館者が減少し[2]、多くの秘宝館が閉館していった。しかし、1990年代中頃より都築響一らによって各地の秘宝館が雑誌や番組で紹介されるようになり[3]、怖いもの見たさやアウトサイダーアート的な過剰な表現への関心などで秘宝館を見直す動きもある。一方で東北サファリパークに1980年から併設されていた秘宝館が観客からの通報により警察の捜査を受け、経営者がわいせつ図画陳列で逮捕される事件が2006年に起きるなど、性的表現に厳しくなる社会の動きが秘宝館を閉ざすこともある。

こうした、性に関する物品を集めた私設博物館は、1960年代性の革命フリーセックスなどの文化や風潮を背景にヨーロッパをはじめ世界各国に開設されており、21世紀に入ってアジア各国などにも広がりを見せている。普通は「飾り窓」など各都市の売春地区やポルノショップの集まる場所に作られ、「セックスミュージアム」(sex museum、Musée de l'érotisme)、「エロティックミュージアム」(erotic museum)などと呼ばれている。

日本の秘宝館の種別としては、蝋人形などや大掛かりな機械仕掛けを多用して妄想世界を再現した「エンターテイメント系秘宝館」(レジャー系秘宝館ともいう)と性風俗に関係した物品を収集・展示した「コレクション系秘宝館」の二種に大別される。エンターテイメント系秘宝館は、蝋人形や機械などの設置・維持に多額の費用が掛かることから主に企業が営利目的で運営していることが多く、その性格上採算が合わなければ閉館してしまうことが多い。エンターテイメント系秘宝館の中には、「元祖国際秘宝館」(三重県度会郡玉城町)系列のように秘宝館を複数運営し全国的展開していた大規模なところもある。また、「熱海秘宝館」(静岡県熱海市)は東京ドームの系列会社アタミロープウェイが運営している。コレクション系秘宝館は、主に地元の好事家が収集した性風俗品を展示しており、個人が運営していることが多い。

施設の性質上未成年者は入館禁止で、ほとんどの秘宝館では原則として写真撮影が禁止となっている。

展示物 編集

秘宝館には、おおむねこのような展示物がある。

秘宝館一覧 編集

 
立川水仙郷ナゾのパラダイス
 
別府・鉄輪温泉にあった別府秘宝館
 
愛知県にかつて存在した性態博物館
  日本
  アイスランド
  アメリカ合衆国
  • ザ・エロティック・ミュージアム[注釈 13]
  • 性の博物館(ミュージアム・オブ・セックス)[注釈 14]
  イギリス
  オランダ
  スペイン
  韓国

(済州島)

  中国
  • 中華性文化博物館[注釈 21]
  • 丹霞山中華性文化博物館
  • 武漢性学展覧館
  ドイツ
  フランス

秘宝館関連作品 編集

書籍 編集

映像 編集

  • 都築響一 『Sperm Palace 精子宮』(2007年 IMPERIAL PRESS
  • 笹谷遼平 『昭和聖地巡礼 〜秘宝館の胎内〜』(2007年 ササタニーチェ
  • 村上賢司 『伊勢エロスの館 元祖国際秘宝館』(2008年 ローランズ・フィルム
  • 村上賢司 『性愛の里 北海道秘宝館 〜その耽美な世界〜』(2009年 ローランズ・フィルム)
  • 水岩裕介 『韓国済州島 秘宝館×三館 JEJU LOVE LAND×SEX MUSEUM×World Eros Museum』(2009年 ローランズ・フィルム)
  • サワダクニヒロ 『石和秘宝館ロマンの館 〜十年の眠りから目覚める異形の芸術たち〜』(2009年 ローランズ・フィルム)
  • 村上賢司 『エロスの行方・消えゆく“ 秘宝館 ”』(2014年 フジテレビNONFIX
  • 村上賢司 『愛の神秘 嬉野武雄観光秘宝館』(2014年 ローランズ・フィルム )
  • 富田克也『国道20号線』(2007年 空族)では、ドン・キホーテいさわ店に転換した後の旧元祖国際秘宝館石和館が登場する
  • 福田光睦『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』(2022年 エクストリーム)[7]

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b 全国に残りわずか2館! エログロの殿堂「秘宝館」が絶滅の危機宝島 11月14日
  2. ^ 朝日新聞DIGITAL関西 ますます勝手に関西遺産【ナゾのパラダイス】迷える男女 救いたまえ 2011年6月9日
  3. ^ 都築響一『珍日本紀行』アスペクト、1996年12月。ISBN 489366641X 都築響一によってSPA! で連載されたもの。各地方の秘宝館、宗教施設、第3セクターなどの観光施設を扱う。
  4. ^ 33年の歴史に幕を閉じた「鬼怒川秘宝殿」は、最期の瞬間まで夢とモザイクのシャングリラだった”. ねとらぼ (2015年1月10日). 2015年1月12日閲覧。
  5. ^ 元祖国際秘宝館や鎌倉シネマワールドなど廃園した秘宝館やテーマパークの造形物を集め再解釈して公開する施設。
  6. ^ 消えゆく“性の文化遺産” 嬉野秘宝館閉館”. 佐賀新聞 (2014年3月30日). 2015年1月12日閲覧。
  7. ^ 公式サイト”. 2022年12月12日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集