アカアシカツオドリ

鳥の種類

アカアシカツオドリ(赤脚鰹鳥、Sula sula)は、カツオドリ目カツオドリ科カツオドリ属に分類される鳥類。属名および種小名の sulaノルウェー語シロカツオドリを指す呼称に由来する。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(白色型) Sula sula
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カツオドリ目 Suliformes
: カツオドリ科 Sulidae
: カツオドリ属 Sula
: アカアシカツオドリ S. sula
学名
Sula sula (Linnaeus, 1766)
和名
アカアシカツオドリ
英名
Red-footed Booby
亜種
  • Sula sula sula
  • Sula sula rubripes
  • Sula sula websteri
Sula sula

分布 編集

インド洋大西洋太平洋の熱帯および亜熱帯の海域に分布する[1][2]

日本では2017年に南硫黄島で集団繁殖が確認された[3]。それ以前には亜種アカアシカツオドリが八重山諸島仲御神島に飛来し、1975年1977年に繁殖した例がある。

少数が南西諸島硫黄列島小笠原諸島に飛来する[4]。本州では東京都(1978年)、神奈川県(1975年)の記録があり[5]、近年には東京都内(2008年7月)で保護されている[6]

北海道の森町(2008年9月)でも幼鳥が保護され[7]利尻島(2006年7月)においても若鳥の飛来が記録されている[8]。福岡市西区今津湾に飛来した例もある。

形態 編集

全長約75cm[9] (70-80cm[2])。翼開長約143cm[9] (140-145cm[2])。翼長30.6-40.2cm、嘴峰長7.19-9.1cm、跗蹠長3.12-4.09cm、尾長19.2-24.3cm[2]。体重0.94-1.07kg[10]。雌雄同色。全身は白色(白色型)や灰褐色(褐色型)の羽毛で覆われる。白い羽毛で覆われるが、翼上面の色彩が灰褐色(さらに頭部から体上面も灰褐色)の個体もいる(中間型)。初列風切や次列風切の色彩は黒い。尾羽はくさび型で先端が尖り[1]、色彩は白色(白色型、中間型)や黒褐色(褐色型)。日本では中間型と思われるものも観察されているが[11]、褐色型は確認されていない[1]

顔には羽毛がなく赤い皮膚が露出し、眼の周囲の皮膚は青みがかった灰色。嘴の色彩は淡青色や青紫色。足は赤い。

若鳥の褐色型は全体として褐色であるが、白色型は全体に白みがある[4]。嘴の色彩はピンク色で、先端は紫がかった褐色[4]。足はピンクがかった灰色[9]。幼鳥は褐色型とよく似るが、足が黄色で[1][12]、白色型の幼鳥は頭部が白みを帯びる[1]

亜種 編集

3亜種に分かれるとされる。

  • Sula sula sula (Linnaeus, 1766) - 基亜種。カリブ海ブラジル沖の島々で繁殖する。[13]
  • Sula sula rubripes (Gould, 1838) - 亜種アカアシカツオドリ[14]。熱帯太平洋、インド洋の島々で繁殖する。[13]
日本南部や台湾には、夏鳥として主に6-10月に飛来する[15]
ガラパゴス諸島の繁殖地としては、ダーウィン島、ウォルフ島、マルチェナ島、ヘノベサ島サン・クリストバル島(東部[16])、ガードナー小島(エスパニョラ島沖)が知られ、セイモア・ノルテ島、イサベラ島(モレノ岬[16])、エスパニョラ島などでも観察される[17]

生態 編集

熱帯から亜熱帯の海洋に生息し[1]、20羽以下の群れを形成して生活する[10]

食性は動物食で、魚類軟体動物を食べる。主に空中から水中の獲物を探し、獲物を発見すると急降下して潜水し捕らえる。海面付近を跳躍しているトビウオを捕食することもある。

周年繁殖する。集団繁殖地(コロニー)を形成し、低木の樹上に木の枯枝を組み合わせた皿形の巣を作り[5][10]、1回に1-2個(主に1個)の卵を産む。卵は青色無斑で、大きさは5.9-7.2cm × 3.5-4.85cm[5]。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は42-46日。雛は孵化してから100-144日で巣立つが、幼鳥は巣立ってからも数か月は親鳥から食物を与えられる[10]。生後2-3年で性成熟し、寿命は20年以上。

小笠原航路で、聟島列島の北北西約60kmで記録された個体が船に近付き、約1時間・40km飛翔した後、その船に止まり就眠した。その後、青ヶ島の東、約60kmで飛び立つまで12時間10分、約450kmを船上で過ごした記録がある[18]

人間との関係 編集

卵も含めて食用とされることもある。

食用の乱獲により生息数は減少している。日本では1972年に仲御神島が「仲の神島海鳥繁殖地」として国の天然記念物に指定されている(繁殖例があるのは指定後)。

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

画像 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f 日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版 (2009)
  2. ^ a b c d 箕輪義隆『海鳥識別ハンドブック』文一総合出版、2007年、49頁。ISBN 978-4-8299-0025-3 
  3. ^ アカアシカツオドリの集団繁殖を初確認 南硫黄島 - 日本経済新聞
  4. ^ a b c 日本の野鳥590 (2000)
  5. ^ a b c 高野伸二『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』東海大学出版会、1981年、201頁。 
  6. ^ 東京農業大学、プレスリリース、2008年8月21日。 Archived 2014年1月28日, at the Wayback Machine.
  7. ^ 那覇自然環境事務所「北海道で保護されたアカアシカツオドリの放鳥について」
  8. ^ 風間健太郎・佐藤雅彦 「北海道利尻島におけるアカアシカツオドリ Sula sula の飛来記録」日本鳥学会誌 57(1): 30–32, 2008
  9. ^ a b c フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版 (2007)
  10. ^ a b c d 動物大百科7 鳥I (1986)、178頁
  11. ^ 河野ほか (1986)、9頁
  12. ^ 『鳥630図鑑』、増補改訂版、日本鳥類保護連盟、2002年、40頁。
  13. ^ a b c Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 16. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  14. ^ 日本鳥学会(目録編集委員会)編 編『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会、2012年、69頁。ISBN 978-4-930975-00-3 
  15. ^ Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 112. ISBN 978-0-691-13926-5 
  16. ^ a b c 藤原幸一『ガラパゴス博物学』データハウス、2001年、60-63頁。ISBN 4-88718-616-9 
  17. ^ Isabel Castro and Antonia Phillips, A Guide to The Birds of the Galápagos Islands, Prinston University Press, (1996) pp. 79-80. ISBN 0-691-01225-3.
  18. ^ 樋口行雄花輪伸一塚本洋三 「小笠原航路におけるアカアシカツオドリの観察」『Strix』2巻、日本野鳥の会、1983年、106-107頁。

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集