アリエル・マルティネス

キューバのプロ野球選手 (1996-)

アリエル・マルティネス・マレーロAriel Martinez Marrero1996年5月28日 - )は、キューバマタンサス州マタンサス出身のプロ野球選手捕手内野手外野手)。右投右打。北海道日本ハムファイターズ所属。

アリエル・マルティネス
Ariel Martinez
北海道日本ハムファイターズ #2
2023年4月9日 京セラドーム大阪
基本情報
国籍  キューバ
出身地 マタンサス州マタンサス
生年月日 (1996-05-28) 1996年5月28日(27歳)
身長
体重
190 cm
95 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 捕手一塁手外野手
初出場 2020年7月3日
年俸 1億2000万円(2024年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
派遣歴
国際大会
代表チーム  キューバ
WBC 2023年
プレミア12 2019年

経歴 編集

来日前 編集

1996年、マタンサスに生まれる[2]コマンダンテ・マヌエル・ピティ・ファハルド体育大学を卒業した後[2]、地元の野球チームであるココドゥリロス・デ・マタンサスに加わり、2017-18シーズンには68試合に出場。試合打率.264、6本塁打、28打点の成績を残した[3]

中日ドラゴンズの巡回コーチを務めていたオマール・リナレスから将来性を評価され、2017年12月には日刊スポーツが同球団とアリエルとの契約の動きを報じた[4]

中日時代 編集

 
中日ドラゴンズ時代
(2022年5月27日 京セラドーム大阪

2018年3月2日、中日と推定年俸1000万円で育成選手契約したことが発表された[5]。3月14日に来日し、同日ナゴヤドームで入団会見が行われ、背番号は210となることが発表された。既に同姓のライデル・マルティネスが在籍していたため、表記は「A.マルティネス」となった。

ウエスタン・リーグで39試合に出場し、打率.239(88打数21安打)、0本塁打、9打点を記録した。10月からはみやざきフェニックス・リーグに参加し、同月18日の埼玉西武ライオンズ戦(南郷町中央公園野球場)では対外試合来日初本塁打を記録するなど、計6試合に出場し、打率.333(15打数5安打)、1本塁打、3打点を記録したが、フェニックス・リーグ開催途中で帰国した。

2019年読谷球場での春季キャンプに初参加。ウ・リーグでは本職の捕手の他、二軍の一塁手不足に伴い、一塁手として試合出場することもあった。最終的に、二軍では52試合の出場で打率.257、2本塁打、21打点を記録。7月5日のオリックス・バファローズ戦(オセアンバファローズスタジアム舞洲)では、来日初本塁打を放った。公式戦終了後は、フェニックス・リーグには参加せず10月2日にオマール・リナレスコーチやR.マルティネスと共に帰国した。帰国後は2019 WBSCプレミア12にキューバ代表選手として参加したがチームはオープニングラウンド敗退となった。12月からはココドゥリロス・デ・マタンサスに加わり、正捕手として活動したがこの時に右膝を負傷している。

2020年は1月26日に育成再契約したことが発表[6]され、読谷球場での春季キャンプに2年連続で参加したが、前述の怪我の影響でリハビリ組として過ごした。6月2日の練習試合から実戦復帰を果たし、ウエスタン・リーグでは開幕戦から出場していた。7月1日に支配下登録され、背番号は210から57に変更された[7]。3日にソイロ・アルモンテが左脇腹痛により、登録抹消されたことに伴い、初めて一軍登録され[8]、同日の対読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)にて代打として初出場。翌4日には6回表に加藤匠馬の代打で出場後、そのまま捕手の守備位置に就いた[注 1]。また、6回裏にルイス・ゴンサレスが登板し、外国人同士でバッテリーを組んだ[注 2]。同月14日の横浜DeNAベイスターズ戦(ナゴヤドーム)で来日初本塁打を放った[12]。同月21日には一軍で初めて一塁の守備についた[13]。その後、8月9日の巨人戦(ナゴヤドーム)でスイングした際に左手を痛め、翌日登録抹消された[14]。シーズン終盤の10月30日に一軍に復帰した[15]

2021年は2月21日に来日[16]。4月13日に一軍に昇格し[17]、同日の巨人戦(東京ドーム)で「5番・一塁手」としてスタメン出場[18]。翌日の同カードではシーズン初本塁打を放った[19][20]が、上肢のコンディション不良のため4月19日に登録抹消された[21][22]。7月9日の二軍戦で実戦復帰[23]。後半戦が始まる8月13日に一軍に復帰し[24]、翌日の試合では4か月ぶりにスタメン出場した[25]。この年は48試合に出場し、打率.244、2本塁打、7打点の成績だった[26]。オフには出場機会を増やすため、外野手としての練習にも取り組んだ[26][27][28]。秋季キャンプに最後まで参加し、11月29日にキューバに帰国した[28]

2022年は1月15日に来日[29]。二軍で結果を残し[30][31]、4月5日に一軍に昇格[31]。同日の東京ヤクルトスワローズ戦(明治神宮野球場)で3番・左翼手としてスタメン出場した[32]。6月18日の巨人戦(バンテリンドーム ナゴヤ)では、同点の9回裏無死一・三塁の場面で自身初となるサヨナラ適時打を放った[33][34]。10月13日、球団は翌年の契約を結ばないと発表した[35]。12月2日に自由契約公示された[36]

日本ハム時代 編集

2022年12月21日、北海道日本ハムファイターズと契約合意したことがキューバ野球連盟から発表され[37][38]、12月22日には日本ハムから正式に入団が発表された[39]。1年契約で年俸は8000万円+出来高。背番号は2

2023年は1月26日に2023 ワールド・ベースボール・クラシックに出場する第5回WBCキューバ代表に内野手として選出された[40][41]。シーズンが始まってからは、4月26日の対オリックス・バファローズ戦(エスコンフィールドHOKKAIDO)で2回無死一塁の打席で田嶋大樹から移籍後初本塁打となる2点本塁打を放った[42]。同月30日の対福岡ソフトバンクホークス戦(エスコンフィールドHOKKAIDO)で、コナー・メネズと外国人同士のバッテリーを組んだ[43]。パ・リーグでは、1991年荘勝雄(当時は台湾国籍)とマイク・ディアズ以来32年ぶりのことだった[44][45]。6月17日の対中日戦(バンテリンドーム ナゴヤ)で2点を追う6回一死一・二塁の打席で古巣相手に移籍後初本塁打となる逆転3点本塁打[46]、7月13日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦(エスコンフィールドHOKKAIDO)では1-1の同点で迎えた3回無死無走者の打席で岸孝之から来日初のシーズン10本塁打となる決勝本塁打を放った[47]オールスターゲーム第2戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)では6回の守備から途中出場。8回二死一・二塁の打席でニック・ターリーから2点適時三塁打を放つなど、2安打2打点の成績で敢闘賞に選出された[48]。シーズン後半戦に入ると、7月23日の対オリックス戦(ほっともっとフィールド神戸)で9回無死満塁の打席で本田仁海から自身初の満塁本塁打[49]、8月4日の対ソフトバンク戦(エスコンフィールドHOKKAIDO)では4-4の同点で迎えた延長11回一死満塁の場面で代打で出場し、椎野新から代打サヨナラ犠飛を放った[50]。この年は状況に応じて捕手、一塁手、外野手、指名打者として119試合に出場し、初めて規定打席に到達。打率.246、15本塁打、66打点を記録した[1]。12月7日、4000万円増となる推定年俸1億2000万円+出来高払いで契約を延長したことが発表された[1]

選手としての特徴 編集

打撃では広角に打ち分ける技術とパンチ力が持ち味[51][52]。守備では強肩を誇るが[53]、スローイングの精度にバラつきがあり、盗塁阻止率に課題がある[54]。一方で、ブロッキング能力は里崎智也が高く評価している[54]。また、本職の捕手の他、一塁手、左翼手として出場することもある[52][注 3]

2024年1月放送のフジテレビ系『ジャンクSPORTS』に出演したチームメイトの玉井大翔によると、捕手でありながら投手に送るサインを覚えていなかったという。主にストレートとスライダーを基本とする宮西尚生からも「謎の変化球のサインが出た」と明かされた[56]

人物 編集

  • 愛称はスペイン語で「田舎者」を意味する「ワチョ(Huacho)」。これは出身地のマサンタスが農村地帯であることに由来する[57]。または優れたカウボーイを意味する「グワチョ(Guacho)」[58]。中日時代は同姓のチームメイトであるライデル・マルティネスのニックネーム「ライマル」との対比で「アリマル」とも呼ばれていた。
  • モデルとして活動する同じキューバ出身の婚約者がおり、自身のInstagramにたびたびツーショットを投稿している[59]。2017年のキューバシリーズ(日本シリーズに相当する)でダブルヘッダーの第1試合終了後、すれ違った瞬間に互いに恋に落ち、第2試合が始まる直前にマルティネスが電話番号を聞き付き合うことになったという[60]
  • 2021年5月19日に長女(第1子)が誕生した[61]
  • 2022年7月1日の阪神タイガース戦で、1-1で迎えた8回裏に湯浅京己から決勝本塁打を放ち、3-1の勝利に導く。ちなみに、この試合の前日に父親から電話があり、「お前がホームランを打つ夢を見たよ」と諭されていたという[62]

詳細情報 編集

年度別打撃成績 編集

















































O
P
S
2014-2015 MAT 34 32 29 5 9 1 0 0 13 7 0 0 0 0 3 0 0 10 0 .310 .375 .488 .823
2015-2016 74 186 155 27 44 5 1 4 63 24 1 0 5 0 23 0 3 30 8 .284 .387 .406 .793
2016-2017 86 285 233 34 79 15 1 3 105 41 1 3 6 3 42 4 1 35 9 .339 .437 .451 .888
2017-2018 68 256 213 35 56 10 2 6 88 30 0 1 1 2 36 3 4 41 7 .263 .404 .413 .790
2020 中日 39 109 95 8 28 6 0 2 40 13 0 0 0 0 14 0 0 31 1 .295 .385 .421 .806
2021 48 94 82 7 20 0 0 2 26 7 0 1 0 0 10 2 2 30 1 .244 .340 .317 .657
2022 82 286 254 29 70 15 1 8 111 24 1 1 0 2 23 1 7 55 8 .276 .350 .437 .787
2023 日本ハム 119 444 386 39 95 24 0 15 164 66 0 4 0 3 44 0 11 99 15 .246 .338 .425 .763
CNS:4年 262 759 630 96 188 31 4 14 269 102 2 4 12 5 104 7 8 116 24 .298 .404 .427 .831
NPB:4年 288 933 817 83 213 45 1 27 341 110 1 6 0 5 91 3 20 215 25 .261 .347 .417 .765
  • 2023年度シーズン終了時
  • キューバで通常用いられる個人通算成績はプレーオフや選抜リーグなども合算するため、この表の合計とは一致しない

WBCでの打撃成績 編集















































2023[63] キューバ 4 15 12 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 4 0 .083 .214 .083

年度別守備成績 編集



捕手 一塁


































2020 中日 21 119 16 1 1 .993 1 16 13 3 .188 9 67 6 0 6 1.000
2021 10 45 3 0 2 1.000 0 8 7 1 .125 15 80 8 0 7 1.000
2022 - 11 58 9 1 2 .985
2023 日本ハム 31 175 18 2 1 .990 1 26 21 5 .192 41 329 28 2 27 .994
NPB 62 339 37 3 4 .992 2 50 41 9 .180 76 534 51 3 42 .995
  • 2023年度シーズン終了時[注 4]

表彰 編集

記録 編集

初記録
その他の記録

背番号 編集

登場曲 編集

  • 「Bajo Cero」El Taiger & Dj Conds Feat.El Brujo(2020年)

代表歴 編集

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 外国人登録選手が捕手として出場するのは2000年7月20日のディンゴ(中日)以来20年ぶり[9]
  2. ^ 外国人バッテリーは1991年6月8日の荘勝雄 - マイク・ディアズロッテ・オリオンズ)以来29年ぶり、セ・リーグでは1955年10月8日の西田亨 - 広田順(巨人、共にハワイ出身の日系人)以来65年ぶりだった[10]。更に翌5日には「8番・捕手」で先発出場。外国人が捕手として先発出場したのは1991年6月12日に出場したロッテのマイク・ディアズ以来29年ぶりだった[11]
  3. ^ 谷繁元信が2022年シーズン中に語ったところによると、中日に捕手登録の選手が多いのは、意図があるというよりは単にサブで他のポジションを守ることや代打で使われることが多い選手が捕手登録だからだという[55]
  4. ^ 捕手成績における2023年度以降の企図数・許盗塁・盗塁刺・阻止率については参考文献参照。

出典 編集

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  9. ^ 中日のA・マルティネスが外国人では球界20年ぶりとなる捕手の守備に…キューバ出身の24歳、自慢の強肩も披露」中日スポーツ、2020年7月4日。2020年7月4日閲覧
  10. ^ セ・リーグ65年ぶり、史上3組目外国人バッテリー」『日刊スポーツ』2020年7月5日。2020年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月3日閲覧
  11. ^ 29年ぶりのスタメン外国人捕手に 中日のA・マルティネスが巨人第3戦で 溝脇が「1番・二塁」阿部は先発外れる:中日スポーツ」『中日スポーツ』2020年7月5日。2020年7月5日閲覧
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参考文献 編集

  • ベースボール・マガジン社(編)、2023、『2023プロ野球シーズン総決算号』別冊新春号、ベースボール・マガジン社 ASIN B0CPQ6FZRV p. 93

外部リンク 編集