交響変奏曲イシュタル(イスタール)』(Istar, Variations symphoniques作品42ヴァンサン・ダンディ1896年に作曲した管弦楽曲。演奏時間は約15分。

概要 編集

古代メソポタミアで広く崇拝された豊饒、性愛、戦争の女神イシュタルが冥界へと下る様を音楽化した作品。標題は付されているが、音楽は標題を写実的に描写したものにはなっておらず、変奏毎に気分の変化を表すに留まっている。イシュタルを表す主題と10の変奏から構成される[1]

作曲者による四手連弾用編曲が残されている。

初演 編集

1897年1月10日ベルギーブリュッセルウジェーヌ・イザイの指揮により初演。1912年にバレエ化され、1924年にはオペラ座でも上演された。

編成 編集

ピッコロフルート2、オーボエ2、コーラングレクラリネット2、バス・クラリネットファゴット3
ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ
ティンパニトライアングルシンバル
弦五部

構成 編集

標題
罪の娘イシュタルは冥界へと下る。エレシュキガルの7つの門を超え、未だ還る者のない国へと下りていく。
第1の門の門番は彼女の王冠を取り去った。
第2の門の門番は彼女の耳飾りを取り去った。
第3の門の門番は彼女の首飾りを取り去った。
第4の門の門番は彼女の胸飾りを取り去った。
第5の門の門番は彼女の腰帯を取り去った。
第6の門の門番は彼女の腕環、足環を取り去った。
第7の門の門番は彼女の衣を取り去った。
罪の娘イシュタルはなおも前へ進む。
生の水を注ぎ、若き恋人を蘇らせた。
主題

静かなホルンの序奏により始まる。続いてヴィオラ、クラリネットに東洋的なイシュタルの主題が登場、楽器を変えながらしばらく演奏される。木管の下降旋律がイシュタルの冥界下りの開始を表し、もう一度イシュタルの主題を繰り返す。

第1変奏

ヴァイオリン・ソロにより開始される。

第2変奏

木管楽器に主題が登場する。

第3変奏

コーラングレにより開始される。

第4変奏

変拍子で生き生きと奏される。

第5変奏

気分は落ち着き、低弦で三拍子の変奏が奏される。

第6変奏

全体のクライマックスが形成される。

第7変奏

弦楽器を主体に奏される。

第8変奏

フルートにより開始される。

第9変奏

全管弦楽により斉奏される。

第10変奏

前の変奏で登場したメロディの和声化。コーダでもう一度イシュタルの主題を奏し、静かに終わる。

脚注 編集

  1. ^ 主題と7つの変奏から構成されるとする見方もある。

参考文献 編集

  • 「最新名曲解説全集5 管弦楽曲II」(大宮真琴 執筆、音楽之友社

外部リンク 編集