オトコヨウゾメ(男ようぞめ[2]学名: Viburnum phlebotrichum)は、ガマズミ科[注 1]ガマズミ属落葉低木[4][5][6]。別名、コネソ[6]

オトコヨウゾメ
東京大学植物園日光分園 2012年5月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: マツムシソウ目 Dipsacales
: ガマズミ科 Viburnaceae
: ガマズミ属 Viburnum
: オトコヨウゾメ V. phlebotrichum
学名
Viburnum phlebotrichum Siebold et Zucc. (1846)[1]
和名
オトコヨウゾメ

名前の由来 編集

和名オトコヨウゾメの由来の定説はない。ガマズミ類を地方名でヨウゾメなどとよぶ地方があり[7]、果実が赤く熟すと子供たちが食用にしていた。それに対し、本種の果実はやせていて食用にならないので、「男」の字を冠して「オトコヨウゾメ」とよばれたのではないかという説がある[5][6][7]。別名で、「コネソ」ともよばれる[8]。学名の種小名 phlebotrichum は、「脈に毛のある」の意味[9]

分布と生育環境 編集

日本固有種北陸地方を除く本州四国九州に分布しする[5]。低地[10]や山地の樹林内や林縁などに生育する[5]。山野の日当たりのよい場所に生える[7]。まれに庭に植えられる[10]

形態・生態 編集

落葉広葉樹低木[8]。樹高は1 - 3メートル (m) になり、密に分枝して茂る。の樹皮は灰褐色[2]。若いは赤褐色で毛はなく、のちに灰色や灰白色、または灰褐色になり[7][8][2]、髄は白色をしている[8]

対生し、葉柄は長さ3 - 8ミリメートル (mm) になり、紫色を帯び、ふつう無毛でときに長い毛が散毛し、葉柄の上面に広い溝がある。葉身は長さ4 - 8センチメートル (cm) 、幅1.5 - 4 cm、形はふつう卵円形、ときに長楕円状卵形から広卵形で、先端は尖り、基部は広いくさび形から円形、葉縁には粗い鋸歯があり、鋸歯の先は鋭くとがる[7][8]。葉の表面は青緑色で無毛[10]中脈上に長い絹毛が散生し、裏面は主脈に沿って長い絹毛が生え、脈腋に星状毛がすこし生える。側脈は5 - 8対あり、平行して葉の縁までまっすぐに伸び、表面はへこみ裏面に突き出る[4][5][6]。秋になると葉は赤色から淡紅色に美しく紅葉するが[10][2]、乾くと黒くなる特性があり[5][6]、この特性は他のガマズミ類にはみられない[5]。日陰部の紅葉は薄い黄色になることが多い[10]

花期は4月 - 6月[8][2]。短い枝先に1対の葉とともに散房花序をつけ、白色のをまばらに5 - 10個つけ、花はしばしば薄い紅色を帯びる[7][8]。花序はしばしば垂れさがり、径1 - 6 cm、花序の柄の長さは2 - 3 cmになる。花柄は長さ7 - 10 mmあり、細く、基部に線形のがあり、苞は早く落ちる。は小さく5裂し、裂片は長さ約0.5 - 1 mmの小さな3角形で帯赤色。花冠の先は5中裂し、斜めに開いて直径60 - 90 mmになる[8]雄蕊は5個あり、花冠裂片より短く、花糸の長さ1 - 1.8 mm、葯は広楕円形で長さ0.5 - 0.8 mmになる。子房は長さ約1.2 mmで無毛、柱頭はほぼ無柄で3裂する。

果期は9 - 10月[7]果実は長さ5 - 8 mm、厚さ4.5 - 6 mmになる球形から楕円体の核果で、赤く熟して垂れ下がり、光沢がある[7][8]。中に種子1個が入る核は、長さ5 - 7 mm、厚さ1.5 - 2.5 mmになる扁平な広卵形で、核の背側に浅い溝が2個、腹側に溝が1個と浅い条が2個ある[4][5][6]

冬芽は枝に対生し、卵形のつやがある暗紅色で毛はなく、芽鱗は4枚つき外側2枚が小さい[2]。枝先には頂芽または仮頂芽をつける[2]。花芽は葉芽よりの丸みがある[2]。葉痕は三角形やV字形で、維管束痕は3個つく[2]

下位分類 編集

  • キミノオトコヨウゾメ Viburnum phlebotrichum Siebold et Zucc. f. xanthocarpum Hayashi[11] - 果実が黄色に熟す品種[4]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 最新のAPG体系ではガマズミ科 (Viburnaceae) に分類される。2017年に採択される以前はレンプクソウ科 (Adoxaceae) に分類され、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではスイカズラ科 (Caprifoliaceae) に分類されていた[1]APG植物分類体系ではガマズミ属は、ニワトコ属とともに、スイカズラ科からレンプクソウ科に移されている[3]

出典 編集

参考文献 編集

  • 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年2月。ISBN 4582535054 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、27頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 西田尚道 監修、学習研究社 編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、68頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  • 平野隆久 監修、永岡書店 編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、264頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 茂木透、城川四郎ほか『樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑5〉、2001年7月。ISBN 4635070050 
  • 牧野富太郎 原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男 編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年11月。ISBN 978-4-83261000-2 
  • 大場秀章 編著『植物分類表』(初版第3刷訂正入)アボック社、2011年。ISBN 978-4-90035861-4