オランダ領インドオランダ語: Nederlands Voor-Indië直訳すると前インド)は、インド亜大陸に存在したオランダ東インド会社の入植地と交易所の総称である。そのすべてを一元的に管理する統括者や組織は存在しなかったため、地理的概念としてのみ使用される。オランダ領インドは別々の統治体からなり、総督(gouverneur)の治めるオランダ領セイロンとオランダ領コロマンデル、司令(commandeur)の治めるオランダ領マラバールVOCの取締役(directeuren)が治めるオランダ領ベンガルとオランダ領スーラトからなる。

植民地時代のインド英語版
British Indian Empire
イギリス領インド帝国全図
オランダ領インド 1605年-1825年
デンマーク領インド 1620年-1869年
フランス領インド 1668年-1954年

ポルトガル領インド
(1505年-1961年)
インド商務院 1434年-1833年
ポルトガル東インド会社 1628年-1633年
ゴア併合 1961年

イギリス領インド
(1612年-1947年)
イギリス東インド会社 1612年-1757年
東インド会社統治下のインド 1757年-1858年
イギリス領インド帝国 1858年-1947年
イギリス統治下のビルマ 1824年-1948年
藩王国 1721年-1949年
インド・パキスタン分離独立 1947年

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ベンガルのオランダ入植地、フーグリーの景観(1787年)

なお、オランダ語で単に「オランダ領インド(Nederlands-Indië)」と書くと、オランダ領東インド(現在のインドネシア。区別する場合は、後インドAchter-Indië、東インドOost-Indië等と表記)のことになる。

歴史 編集

インド亜大陸でのオランダ領は1605年から1825年まで続いた。オランダ東インド会社の商人は、東インド諸島の香辛料と交換するための織物を探していたため、最初の拠点はオランダ領コロマンデル、プリカットに設立された[1]。オランダ領スーラトとオランダ領ベンガルは、それぞれ1616年と1627年に設立された[2][3]。オランダが1656年にポルトガル領セイロンを征服した後、5年後に、ポルトガル人の侵入からセイロンを守るために、マラバール海岸のポルトガル砦も占領した[4][5]

織物以外にオランダ領インドで取引されていた商品は、インド半島全域からの宝石、オランダ領ベンガルの硝石アヘン、オランダ領マラバールのコショウなどがある。インド人の奴隷はモルッカ諸島ケープ植民地が輸入した。

18世紀の後半、オランダは影響力を失っていった。有名なコラッチャルの戦い英語版(1741年)で、トラヴァンコール王マルタンダ・ヴァルマの軍隊がオランダ東インド会社を破り、マラバールでのオランダの権力は完全に覆された。フランス革命戦争中の1795年にウィレム5世が英国亡命中に発したキュー書簡英語版は、オランダの植民地をイギリスに委譲させて、フランスに侵略されるのを防いだ。オランダ領コロマンデルとオランダ領ベンガルは、1814年のロンドン条約でオランダ統治に復したが、1824年の英蘭協約によって英領に戻った。条約の条文で、財産と施設のすべての譲渡は1825年3月1日に行われることになっていた。したがって、1825年半ばまでに、オランダはインド亜大陸での最後の拠点を失った。

貨幣 編集

 
パゴダ金貨。ヴィシュヌ神の化身のヴェンカツワラ神をあしらい、プリカットの造幣所で作られた。17世紀~18世紀。

オランダ人がインドで商業的に活動していた時代、彼らはコーチンマスリパトナムナーガパッティナム(またはネガパタム)、ポンディシェリ(オランダがフランスから支配権を獲得した1693年から1698年までの5年間)、プリカットでいくつかの造幣所を運営した。作られた貨幣はすべて現地の物をモデルにしている。

地図 編集

 
 
Poppacamal
 
Pulicat
 
Masulipatnam
 
Nizapatnam
 
Tenganapatnam
 
Golkonda
 
Bheemunipatnam
 
Kakinada
 
Draksharama
 
Palakol
 
Nagulavancha
 
Sadras
 
Thiruppapuliyur
 
Parangippettai
 
Cochin
 
Quilon
 
Cannanore
 
Kayamkulam
 
Cranganore
 
Pallipuram
 
Purakkad
 
Vengurla
 
Barselor
 
Hugli-Chuchura
 
Patna
 
Cossimbazar
 
Dhaka
 
Murshidabad
 
Pipely
 
Balasore
 
Suratte
 
Ahmedabad
 
Agra
 
Kanpur
 
Burhanpur
 
Bharuch
 
Khambhat
 
Vadodara
 
Mrohaung
 
Syriam
 
Martaban
 
Ava
 
Colombo
 
Tuticorin
 
Calpentijn
 
Caraas
 
Mannar
 
Trincomalee
 
Batticaloa
 
Galle
 
Matara
 
Cape Comorin
 
Cotatte

ギャラリー 編集

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ De VOCsite : handelsposten; Coromandel”. De VOCsite. Jaap van Overbeek te Wageningen.. 2020年10月10日閲覧。
  2. ^ De VOCsite : handelsposten; Suratte”. De VOCsite. Jaap van Overbeek te Wageningen.. 2020年10月10日閲覧。
  3. ^ De VOCsite : handelsposten; Bengalen”. De VOCsite. Jaap van Overbeek te Wageningen.. 2020年10月10日閲覧。
  4. ^ De VOCsite : handelsposten; Ceylon”. De VOCsite. Jaap van Overbeek te Wageningen.. 2020年10月10日閲覧。
  5. ^ De VOCsite : handelsposten; Malabar”. De VOCsite. Jaap van Overbeek te Wageningen.. 2020年10月10日閲覧。

外部リンク 編集