キツネノボタン(狐の牡丹、回回蒜[7]学名: Ranunculus silerifolius ver. glaber、広義には Ranunculus silerifolius)は、キンポウゲ科キンポウゲ属多年草。実の形から(特に兵庫県三原郡津名郡山口県玖珂郡で)コンペイトウグサと呼ばれることもあり、秋田県雄勝郡山形県酒田市新潟県佐渡市長野県下水内郡福岡県山門郡八女郡柳川市大分県南海部郡佐伯市ではウマゼリとも呼ばれる[8]

キツネノボタン
キツネノボタン
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: キンポウゲ属 Ranunculus
: キツネノボタン
R. silerifolius(広義)
変種 : キツネノボタン R. s. ver. glaber
学名
標準: Ranunculus silerifolius H.Lév. var. glaber (H.Boissieu) Tamura (1988)[1]

広義: Ranunculus silerifolius H.Lév. (1909)[2]

シノニム
和名
キツネノボタン(狐の牡丹)
変種
  • ヒメキツネノボタン
    R. s. var. yaegatakensis
    : 環境省レッドデータブック絶滅危惧IA類(CR)

概要 編集

日本北海道本州四国九州朝鮮半島南部に分布し、水田の近く、湿地の草地など湿り気のある土地に生える[9]

越年草[9]。草丈は30 - 50センチメートル (cm) [9]根生葉葉柄が長く、一つの柄に3枚の葉がつく3出複葉。小葉は卵形で、切れ込みが入って2 - 3裂する[9]。茎生葉は上にいくほど柄が短いものが互生する。

花期は春から初夏にかけて(5 - 7月ごろ)[9]。分岐した茎の先に黄色い5弁のを次々と咲かせる[9]。花の直径は1 - 1.5 cmで花弁に光沢があるのが特徴。花後にコンペイトウのような角のある直径1 cmほどの果実がつく[9]。果実は集合果で、角状の突起それぞれが一つの実であり、その形状は扁平で先端は鈎状に曲がっている。花が咲く前がセリに似ている[10]

毒性 編集

全草に刺激性の有毒成分を含み、葉の汁が皮膚につくと水ぶくれ炎症を起こす[9]。同じキンポウゲ属のウマノアシガタタガラシと共通する成分(ラヌンクリン ranunculin)を含む有毒植物であり、誤って食べると口腔内や消化器に炎症を起こし、胃腸がただれて血便が出ることがある[9]。湿り気のある土地で山菜採りをする際は、本種をいっしょに採取しないように注意が必要である。特にセリとはよく似た環境に生育し、葉の一部だけだとよく似て見えることもあるので、注意が必要である[9]

民間療法で皮膚に貼ると関節痛に効くというものがあるが、実際の効果は不明。それによる皮膚炎が報告されており、紅斑ができて痛み、悪化して水疱、潰瘍を起こす場合もある[11]

近縁種 編集

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus silerifolius H.Lév. var. glaber (H.Boissieu) Tamura キツネノボタン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus silerifolius H.Lév. キツネノボタン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus quelpaertensis (H.Lév.) Nakai var. glaber (H.Boissieu) H.Hara キツネノボタン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus hakkodensis Nakai var. glaber (H.Boissieu) Ohwi et Okuyama キツネノボタン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus quelpaertensis (H.Lév.) Nakai, sens. ampl. キツネノボタン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ranunculus vernyi Franch. et Sav. var. glaber (H.Boissieu) Nakai キツネノボタン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月3日閲覧。
  7. ^ 『日本難訓難語大辞典』遊子館、2007年。 
  8. ^ 八坂書房 (2001).
  9. ^ a b c d e f g h i j 金田初代 2010, p. 186.
  10. ^ さとうち藍、松岡達英『冒険図鑑 野外で生活するために』福音館書店、1985年、306ページ、ISBN 4-8340-0263-2
  11. ^ 渡辺晴二・筏さやか・柳原誠・石崎宏「キツネノボタン (Ranunculus Silerifolius)による接触皮膚炎の2例」、405頁、408頁。

参考文献 編集

  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、186頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 渡辺晴二・筏さやか・柳原誠・石崎宏「キツネノボタン (Ranunculus Silerifolius)による接触皮膚炎の2例」、『皮膚』42巻4号、405-409頁、2000年。
  • 八坂書房 編『日本植物方言集成』八坂書房、2001年、170-2頁。ISBN 4-89694-470-4 

外部リンク 編集