ケトテリウム科Cetotheriidae)は主に新生代中新世前期 - 鮮新世後期にかけて生息したヒゲクジラ分類群の一つであり、コセミクジラの再分類が行われるまでは絶滅したと考えられていた。

ケトテリウム科
Cetotherium riabininiの骨格標本
地質時代
漸新世後期または中新世前期 - 完新世現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : クジラ目 Cetacea
亜目 : ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
上科 : ナガスクジラ上科
: ケトテリウム科 Cetotheriidae
学名
Cetotheriidae
Brandt1873
他 本文参照

分類 編集

 
テチス海の名残の一つであり、大規模なであったパラテチス海 (英語版) にも生息していた C. riabinini は、湖の縮小につれて矮小化を経た結果、既知のヒゲクジラ類では最小の一種となったとされる。

鯨偶蹄目 - ヒゲクジラ亜目に属する。このケトテリウム科はナガスクジラ科の祖先を含むとされる[1]

かつてケトテリウム科は多様なヒゲクジラの絶滅群が属していた。属する種は80を超える程であったが、これは現生群に属さない化石ヒゲクジラ類を全てこの科に放り込んだ為であった。結果、この科は多系統となってしまっていた。

しかし、近年分類の整理が進められ、初期のグループはケトテリオプシス科として独立、エオミスティケタス上科に含められた。

また、ナガスクジラ上科内にペロケタス科アグラオケタス科ディオロケタス科の三つの科を新設する案も出され、ケトテリウム科は単系統の分類群として再定義される事になった。この再定義後を(狭義)ケトテリウム科、従来のものを(広義)ケトテリウム科と呼ばれる事が多い。新たな三科はほぼ耳骨の形態に基づいて定義されている為、この分類の妥当性については定かではない。しかし、いずれケトテリウム科内の分類見直しが進むにつれ、広義の呼び方は廃されるであろう。[2]

さらに、コセミクジラがこの科の唯一の生存種である可能性が浮上した[3][4]

形態 編集

(広義)ケトテリウム科に属する種の頭骨の形態には大きく二つのグループがある事が判明している。一つはケトテリウムなどで、上顎骨を構成する骨が後方へと伸長するグループ。もう一つは Parietobalaena など伸長が見られないグループである。このうち前者のみを(狭義)ケトテリウム科に分類される。[5]以下の表には狭義ケトテリウム科には含まれないものも示す[6][7]

†ケトテリウム科 Cetotheriidae(多系統)

  • ケトテリウムCetotherium
  • Piscobalaena
  • Cophocetus
  • Pinocetus
  • Tiphyocetus
  • Metopocetus
  • Imerocetus
  • Mesocetus
  • Herpetocetus
  • Isocetus
  • Peripolocetus
  • Halicetus
  • Eucetotherium
  • Cetotheriomorphus
  • Thinocetus
  • Otradnocetus
  • Heterocetus
  • Nannocetus
  • Mixocetus
  • Amphicetus
  • Cephalotropis
  • Piscocetus
  • Rhegnopsis
  • ?Parietobalaena
  • ?Nanisocetus

ペロケタス科?

  • ペロケタス属 Pelocetus

アグラオケタス科?

  • アグラオケタス属 Aglaocetus

ディオロケタス科?

  • ディオロケタス属 Diorocetus

科不明のナガスクジラ上科

  • Mauicetus

エオミスティケタス上科ケトテリオプシス科として独立

  • ケトテリオプシス属 Cetotheriopsis
  • Micromysticetus

脚注 編集

  1. ^ 『絶滅哺乳類図鑑』 123頁
  2. ^ 『鯨類学』 39 - 41頁
  3. ^ Fordyce, R. E.; Marx, F. G. (2013). “The pygmy right whale Caperea marginata: the last of the cetotheres”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 280 (1753): 1–6. doi:10.1098/rspb.2012.2645. PMC 3574355. PMID 23256199. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3574355/. 
  4. ^ 'Extinct' whale found: Odd-looking pygmy whale traced back 2 million years”. CSMonitor.com (2012年4月23日). 2017年3月4日閲覧。
  5. ^ 『鯨類学』 40頁
  6. ^ 『鯨類学』 4頁
  7. ^ 哺乳類の系統分類

参考文献 編集

関連項目 編集