サイバーバード協奏曲は、吉松隆によって1994年に作曲されたアルト・サクソフォーンオーケストラのための協奏曲である。サクソフォーン奏者である須川展也による委嘱第2作として、1991年の「ファジィバード・ソナタ」に続いて作曲された。1994年3月21日、円光寺雅彦指揮読売日本交響楽団により初演され、その後、読売日響、新日本フィル日本フィル新星日響大阪フィル名古屋フィル関西フィル、さらには日本オーケストラ連盟主催「第8回現代日本オーケストラ名曲の調べ(オールジャパン・シンフォニーオーケストラ)」などで再演された。
須川は1996年デイヴィッド・パリー指揮のフィルハーモニア管弦楽団と(東芝EMI)、1999年には藤岡幸夫指揮のBBCフィルハーモニックと(シャンドス)、2度CDを出している。その後2013年には「吉松隆 還暦コンサート『鳥の響展』」(2013年3月20日開催)の模様を収録した『《鳥の響展》ライブ』(DENON)が発売され、この中にも須川と藤岡幸夫指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で収められている。
またDENONレーベルからは2019年にも「鳥の響展」同様東京フィルハーモニー交響楽団の演奏による盤が発売された。この盤は上野耕平のサクソフォーン、アンドレア・バッティストーニの指揮である。

解説 編集

この曲は、アルト・サクソフォーンに加えてピアノパーカッション奏者1人も独奏的に扱っており、一種の三重協奏曲にもなっている。ピアノは小柳美奈子、パーカッションは山口多嘉子が演奏することを想定して作曲された。タイトルの「サイバーバード」(Cyber-bird)とは、電脳(cyber)空間にいる架空の鳥(bird)のことである。3つの楽章からなり、各楽章には以下のような標題がつけられている。

  • 第1楽章:彩の鳥(Bird in Colors)。様々な色彩の断層をすり抜けて飛ぶ、いくぶん錯乱したアレグロ。
  • 第2楽章:悲の鳥(Bird in Grief)。悲しみの鳥の独白と、その横で夢を紡ぐように歌う鳥たちのアンダンテ。
  • 第3楽章:風の鳥(Bird in the Wind)。風に乗ってひたすら一直線に飛翔するプレスト。

この曲を作曲中に、吉松の妹が癌で死去している。連日徹夜で看病をしながら病室で作曲を進めていた吉松に、「生まれ変わったら鳥になりたい」と言ったという。