ジェイコブ・デグロム

アメリカの野球選手 (1988 - )

ジェイコブ・アンソニー・デグロムJacob Anthony deGrom, 英語発音: /ˈʤeɪkəb ˈænθəni dəˈgrɑm/[2]; 1988年6月19日 - )は、アメリカ合衆国フロリダ州ボルーシャ郡デランド英語版出身のプロ野球選手投手)。右投左打。MLBテキサス・レンジャーズ所属。愛称はデグロミネーターdeGrominator[3]

ジェイコブ・デグロム
Jacob deGrom
テキサス・レンジャーズ #48
ニューヨーク・メッツ時代
(2020年9月26日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 フロリダ州ボルーシャ郡デランド英語版
生年月日 (1988-06-19) 1988年6月19日(35歳)
身長
体重
6' 4" =約193 cm
180 lb =約81.6 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 投手
プロ入り 2010年 MLBドラフト9巡目
初出場 2014年5月15日
年俸 $30,000,000(2023年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

経歴 編集

プロ入り前 編集

大学2年生までは遊撃手で、2年生の終わり頃(2009年5月)に投手として初めて試合に出場した[4]

プロ入りとメッツ時代 編集

2010年MLBドラフト9巡目(全体272位)でニューヨーク・メッツから指名され契約。この年は傘下のアパラチアンリーグのルーキー級キングスポート・メッツ英語版でプロデビュー。6試合に登板し、1勝1敗、防御率5.19だった。10月にトミー・ジョン手術を受けた。

2011年は手術の影響でシーズンを全休した。

2012年はA級サバンナ・サンドナッツで15試合に登板し、6勝3敗、防御率2.51だった。8月にA+級セントルーシー・メッツへ昇格。4試合に登板し、3勝0敗、防御率2.08だった。

2013年はA+級セントルーシー、AA級ビンガムトン・メッツ、AAA級ラスベガス・フィフティワンズでプレー。AAA級ラスベガスでは14試合に登板し、4勝2敗、防御率4.52だった。オフの11月20日にメッツとメジャー契約を結び、40人枠入りを果たした。

2014年3月14日にAAA級ラスベガスへ異動し、開幕をAAA級で迎えた。AAA級では7試合に登板し、4勝0敗、防御率2.58と好投。5月13日にメジャーへ昇格した[5]。5月15日のニューヨーク・ヤンキース戦で先発起用されメジャーデビュー。7回を投げ、4安打1失点、6奪三振と好投したが、打線の援護がなく敗戦投手となった[6]。その後は先発ローテーションに定着し、6月21日のマイアミ・マーリンズ戦で初勝利。7月は4勝を記録し、ナショナルリーグルーキー・オブ・ザ・マンスに選出された。9月15日のマーリンズ戦で先発登板した試合では初回先頭打者から8者連続奪三振を記録し、ジム・デシェイズ(1986年)が持つ歴代最多タイ記録に並んだ。11月11日に新人王を受賞した[7][8]

2015年バートロ・コローンに次ぐ先発2番手として開幕し、前半で9勝6敗、防御率2.14と好成績を残し、オールスターに初めて選出された。オールスターゲームでは6回表に5番手として登板し、わずか10球で三者連続三振を奪う圧巻の投球を見せた。この年は14勝(ナ・リーグ7位)を記録し、防御率2.54(同4位)、205奪三振(同8位)などと活躍し、チームの地区優勝に大きく貢献した。

2016年マット・ハービー、コローンに次ぐ先発3番手として開幕した。7月17日のフィラデルフィア・フィリーズ戦、自身初の完投完封を1安打、1四球、7奪三振、105球で記録した[9]9月の練習中に右肘の痛みを発症し、9月20日に同箇所の手術を受ける事が発表された為、そのままシーズン終了となった[10]。離脱もあって、この年は24試合の先発登板で防御率3.04、7勝8敗、36四球、143奪三振という成績に留まった。

2017年ノア・シンダーガードに次ぐ先発2番手として開幕したが、シンダーガードが故障離脱したために実質的にエースとして投げることとなった。結果、自己最多の31試合先発で初の200イニングを記録し、15勝10敗、防御率3.53、239奪三振という成績を挙げた。

2018年は32試合先発、217.0イニング、防御率1.70、269奪三振のキャリアハイの成績を記録し、最優秀防御率のタイトルを獲得。勝ち星には恵まれず、10勝9敗に終わったが、サイ・ヤング賞を受賞。10勝でのサイ・ヤング賞受賞は先発として史上最少の勝利数であった[11][12]

2019年3月26日、メッツの投手では史上最高額となる5年総額1億3750万ドルで契約を延長した。オプションとして全球団トレード拒否権と2022年シーズン終了後に契約を破棄できるオプトアウト権、また2024年シーズンの契約の選択権を球団側が所持し、行使されれば最大で6年総額1億7000万ドルとなる[13]。シーズンでは32先発で11勝8敗、防御率2.43(ナ・リーグ2位)、255奪三振(同1位)成績を残し、最多奪三振のタイトルを獲得。オフには2年連続でサイ・ヤング賞に選出された[14]。また、同年から新設されたオールMLBファーストチームの先発投手に選出された。

2020年COVID-19の影響で60試合の短縮シーズンとなった。12試合の登板で4勝2敗、104奪三振、防御率2.38を記録し、2年連続で最多奪三振のタイトルを獲得した。 オフに12月9日にオールMLBファーストチームの先発投手の1人として2年連続2度目の選出を果たした[15]

2021年5月3日に4月のピッチャー・オブ・ザ・マンスを受賞した[16]。7月4日に選手間投票で通算4度目となるオールスターゲームに選出された[17]。7月7日のブルワーズ戦でウィリー・アダメスから史上2番目に早い198試合目での通算1500奪三振を達成した[18]。また、試合後に選出されていたオールスターゲームへの参加を休養を理由に辞退した[18]。この登板までで15試合に先発して7勝2敗、防御率1.08と歴史的な快投を披露し、MVPサイ・ヤング賞の候補にも挙がっていたが、右肘の故障[19]のため残りのシーズンを欠場[20]し、タイトル獲得はならなかった。

2022年は故障で前半戦を欠場。後半戦から復帰した。オフの11月7日にオプトアウトの権利を行使し、FAとなった。メッツからはクオリファイング・オファーを提示されたが、これを拒否した[21]

レンジャーズ時代 編集

2022年12月2日にテキサス・レンジャーズと5年総額1億8500万ドルの契約を結んだ[22][23]。内訳は2023年が3000万ドル、2024年と2025年が4000万ドル、2026年が3800万ドル、2027年が3700万ドルとなる[23]。また、2028年の契約は無保証の条件付きオプションとなり、行使された場合の総額は2億2200万ドルとなる[23]。この他に、全球団に対するトレード拒否権も含まれる[23]。12月8日に入団会見を行った[24]

2023年は6試合に登板して2勝0敗、防御率2.67という成績を残していたが、4月29日に右肘の張りで15日間の故障者リスト(IL)入りすると、6月5日には60日間のILへ移行。その直後、自身2度目となるトミー・ジョン手術を受ける予定であることが明かされ、2023年シーズンは全休となっ[25]

選手としての特徴 編集

スリークォーター[26]から投じる最速102mph(約164km/h)[27]・平均98-99mph(約157-159km/h)のフォーシームに加え[28]、平均91-92mph(約146-148km/h)のスライダーが投球の約80%を占める[28]。そこに91mph(約146km/h)前後のチェンジアップを織り交ぜ、奪三振の山を築くパワーピッチャー。ごく稀にカーブを投じる[29]

好投しながらも勝ち星に恵まれない事が多く、2018年シーズンは防御率1.70を記録しながら10勝に留まり、自責点1以下に抑えながらも、12試合で勝利投手の権利がつかなかった[30]

詳細情報 編集

年度別投手成績 編集





















































W
H
I
P
2014 NYM 22 22 0 0 0 9 6 0 0 .600 565 140.1 117 7 43 2 1 144 1 0 44 42 2.69 1.14
2015 30 30 0 0 0 14 8 0 0 .636 751 191.0 149 16 38 2 2 205 6 0 59 54 2.54 0.98
2016 24 24 1 1 0 7 8 0 0 .467 604 148.0 142 15 36 0 3 143 4 0 53 50 3.04 1.20
2017 31 31 1 0 0 15 10 0 0 .600 827 201.0 180 28 59 5 2 239 7 0 87 79 3.53 1.19
2018 32 32 1 0 1 10 9 0 0 .526 835 217.0 152 10 46 3 5 269 2 0 48 41 1.70 0.91
2019 32 32 0 0 0 11 8 0 0 .579 804 204.0 154 19 44 1 7 255 2 0 59 55 2.43 0.97
2020 12 12 0 0 0 4 2 0 0 .667 268 68.0 47 7 18 0 0 104 4 0 21 18 2.38 0.96
2021 15 15 1 1 1 7 2 0 0 .778 324 92.0 40 6 11 0 1 146 0 0 14 11 1.08 0.55
2022 11 11 0 0 0 5 4 0 0 .556 239 64.1 40 9 8 0 0 102 0 0 22 22 3.08 0.75
2023 TEX 6 6 0 0 0 2 0 0 0 1.000 115 30.1 19 2 4 0 0 45 1 0 11 9 2.67 0.76
MLB:10年 215 215 4 2 2 84 57 0 0 .596 5332 1356.1 1040 119 307 13 21 1652 27 0 418 381 2.53 0.99
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績 編集



投手(P)












2014 NYM 22 6 20 0 4 1.000
2015 30 17 32 0 3 1.000
2016 24 14 21 2 2 .946
2017 31 6 25 1 1 .969
2018 32 21 23 1 2 .978
2019 32 24 17 1 0 .976
2020 12 7 8 0 0 1.000
2021 15 6 7 0 0 1.000
2022 11 5 1 0 0 1.000
2023 TEX 6 1 1 0 0 1.000
MLB 215 107 155 5 12 .981
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

タイトル 編集

表彰 編集

記録 編集

背番号 編集

  • 48(2014年 - )

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ Jacob deGrom Contract Details, Salaries, & Earnings” (English). Spotrac. 2022年12月21日閲覧。
  2. ^ 英語のIPA発音記号変換(アメリカ英語)”. tophonetics.com. 2020年9月17日閲覧。
  3. ^ The deGrominator is back A Saber-Slanted Baseball Community (英語) (2017年7月7日) 2017年9月29日閲覧
  4. ^ Mets rookie starter Jacob deGrom went from light-hitting shortstop to major league pitcher” (英語). NJ.com (2014年5月21日). 2017年8月5日閲覧。
  5. ^ Mets Roster Moves”. MLB.com Mets Press Release (2014年5月14日). 2014年5月17日閲覧。
  6. ^ Scores for May 15, 2014”. ESPN MLB (2014年5月15日). 2014年5月17日閲覧。
  7. ^ Sporting News names Mets’ deGrom top rookie
  8. ^ Jacob deGrom named NL ROY
  9. ^ Jul 17, 2016, Mets at Phillies Box Score and Play by Play” (英語). Baseball-Reference (2016年7月17日). 2016年8月14日閲覧。
  10. ^ 【MLB】メッツ右腕J.デグロムが今季絶望に、穴埋めはS.マッツに期待”. iSM (2016年9月21日). 2016年11月22日閲覧。
  11. ^ MLBサイ・ヤング賞 ナ・リーグはデグロムが史上最少10勝で初受賞(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181115-00000035-dal-spo 2018年11月15日閲覧
  12. ^ deGrom, Snell rise to top as 1st-time Cy winners” (英語). MLB.com (2018年11月14日). 2018年11月15日閲覧。
  13. ^ Jacob deGrom extension with Mets” (英語). MLB.com. 2019年3月26日閲覧。
  14. ^ デグロムが2年連続のCY賞受賞、ヴァーランダーは8年ぶり2度目”. www.afpbb.com. 2019年11月14日閲覧。
  15. ^ Anthony Castrovince (2020年12月10日). “Here is the star-studded 2020 All-MLB Team” (英語). MLB.com. 2021年11月27日閲覧。
  16. ^ Thomas Harrigan (2021年5月4日). “deGrom, Cole named Pitchers of the Month” (英語). MLB.com. 2021年5月5日閲覧。
  17. ^ Sarah Langs, Thomas Harrigan (2021年7月11日). “Your 2021 MLB All-Stars by position” (英語). MLB.com. July 13, 2021閲覧。
  18. ^ a b c Anthony DiComo (2021年7月8日). “deGrom hopes to start Mets' first-half finale” (英語). MLB.com. 2021年7月10日閲覧。
  19. ^ メッツ・デグロムのケガは内側側副靱帯の捻挫で「自然に治癒」 - MLB : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2021年12月17日閲覧。
  20. ^ デグロム、右肘は「あれで悪化」MRI検査中の体勢が原因とコメント - MLB : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2021年12月17日閲覧。
  21. ^ Two Players Accept Qualifying Offer; 12 Players Decline” (英語). mlbplayers.com (2022年11月6日). 2022年11月14日閲覧。
  22. ^ Press release: Rangers agree to terms with free agent RHP Jacob deGrom on five-year contract”. www.mlb.com. 2022年12月3日閲覧。
  23. ^ a b c d Rangers Sign Jacob deGrom To Five-Year Contract” (英語). MLB Trade Rumors. 2022年12月3日閲覧。
  24. ^ Kennedi Landry (2022年12月9日). “deGrom embracing the vision Rangers putting forth” (英語). MLB.com. 2022年12月9日閲覧。
  25. ^ 258億円デグロムが自身2度目のTJ手術で今季絶望 復帰には最低12か月の見込み…米報道”. Full-Count(フルカウント) ― 野球ニュース・速報・コラム ― (2023年6月7日). 2024年2月19日閲覧。
  26. ^ https://www.cbssports.com/mlb/news/jacob-degroms-fastball-is-better-than-ever-these-three-under-the-radar-factors-help-explain-why/
  27. ^ https://full-count.jp/2021/05/21/post1088531/
  28. ^ a b https://www.fangraphs.com/players/jacob-degrom/10954/stats?position=P
  29. ^ Pitcher Visualization Report Jacob deGrom” (英語). MLB.com. 2020年9月7日閲覧。
  30. ^ 勝ち星恵まれぬデグロム 異例の最優秀投手賞候補”. 日本経済新聞 (2018年9月10日). 2020年9月7日閲覧。

注釈 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集