ストームウォッチ〜北海油田の謎

ジェスロ・タルのアルバム

ストームウォッチ〜北海油田の謎』(原題:Stormwatch)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドジェスロ・タル1979年に発表した12作目のスタジオ・アルバム。『神秘の森〜ピブロック組曲』(1977年)、『逞しい馬』(1978年)に続く「フォークロック三部作」の最終作と位置付けられている[12]

ストームウォッチ〜北海油田の謎
ジェスロ・タルスタジオ・アルバム
リリース
ジャンル プログレッシブ・ロックフォークロック
時間
レーベル クリサリス・レコード
プロデュース イアン・アンダーソン、ロビン・ブラック
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1979年
    • 15位(ノルウェー[1]
    • 22位(アメリカ[2]
    • 27位(イギリス[3]、ニュージーランド[4]
    • 28位(ドイツ[5]
  • 2019年
  • ジェスロ・タル アルバム 年表
    ジェスロ・タル・ライヴ
    (1978年)
    ストームウォッチ〜北海油田の謎
    (1979年)
    A
    (1980年)
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    背景 編集

    ジョン・グラスコックは健康上の問題により本作のレコーディングに全面参加できず、「オリオン星座」、「フライング・ダッチマン」、「エレジー」の3曲でベースを弾くにとどまり、残りの曲ではイアン・アンダーソンがベースも兼任した[13]。アンダーソンは後年、「このレコードには、バリー(バリモア・バーロウ)が残した最高の名演が幾らか入っている」「私がベースを弾いたことで、私とバリーの間には、それまでになく強い音楽的な絆が生まれた」「もちろん、ジョンが健康な状態でレコーディングに全面参加できれば、もっと嬉しかったんだけどね」とコメントしている[12]。なお、最終的にグラスコックの体調は回復せず、本作のリリース後に死去しており[13]、バンドは後任の正式ベーシストとして、フェアポート・コンヴェンションのメンバーとしても知られるデイヴ・ペグを迎えた[14]。しかし、バーロウは親友であったグラスコックの死に打ちひしがれ、本作に伴うツアーの終了後にバンドを脱退した[12]

    アンダーソンは、イギリスやノルウェーなどが開発を進めていた北海油田に関心を抱いており、本作に収録された「北海油田」だけでなく、「ブロードフォード・バザール」(未発表音源集『ナイトキャップ-アンリリースド・マスターズ1973年〜1991年-』が初出)という曲でも北海油田を歌っている[15]。「ダン・リンギル」には、テームズTVの気象予報士フランシス・ウィルソンがスポークン・ワードで参加しており、そのフレーズは本作のジャケットにも印刷された[15]。「エレジー」は、デヴィッド・パーマーが自身の父に捧げたインストゥルメンタルである[13]

    反響・評価 編集

    全英アルバムチャートでは4週トップ100入りするが、最高位は27位に終わり、バンドのスタジオ・アルバムとしては『ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる』(1976年)以来3年ぶりに、全英トップ20入りを逃す結果となった[3]。アメリカのBillboard 200では、1979年11月10日に最高22位を記録した[2]

    ノルウェーのアルバム・チャートでは2週連続で15位を記録し、合計12週トップ40入りした[1]。ドイツのアルバム・チャートでは、オリジナル・リリース当時は8週トップ50入りし、最高28位を記録した[5]

    Bruce Ederはオールミュージックにおいて5点満点中2点を付け「ここに来てアンダーソンの閃きは枯渇したようで、彼が書いた歌詞の題材は、環境問題に対する懸念や、闇雲な社会批評にまで及んでいる」「インストゥルメンタルの"Warm Sporran"を別とすれば、アンダーソンのフォーク的な作曲能力の源泉も枯れてしまったことが示されている」と評している[16]

    リイシュー 編集

    2004年発売のリマスターCDには、4曲のボーナス・トラックが追加された[13]。「ア・スティッチ・イン・タイム」は1978年11月リリースのシングルA面曲、「クロスワード」と「ケルピー」は本作のためのセッションで録音されたアウトテイクで、「キング・ヘンリーズ・マドリガル」は新ベーシストのデイヴ・ペグが参加した初音源に当たり、1979年11月にEP『ホーム』のカップリング曲として発表された[15]

    2019年に発売された40周年記念エディション『Stormwatch: 40th Anniversary Force 10 Edition』は、4枚のCDと2枚のDVD-Audioから成る内容で、CD1はオリジナル盤のスティーヴン・ウィルソン・リミックス、CD2は未発表曲やアウトテイクなどを含むボーナス・ディスク、CD3とCD4は1980年3月6日に行われたオランダ公演のライブ音源を収録している[17]。このヴァージョンは、ドイツのアルバム・チャートではオリジナル・リリース時を上回る8位に達した[5]

    収録曲 編集

    特記なき楽曲はイアン・アンダーソン作。5. 10.はインストゥルメンタル

    1. 北海油田 "North Sea Oil" – 3:12
    2. オリオン星座 "Orion" – 3:58
    3. ホーム "Home" – 2:46
    4. ダーク・エイジズ "Dark Ages" – 9:13
    5. 防寒具スポラン "Warm Sporran" – 3:33
    6. サムシングス・オン・ザ・ムーヴ "Something's on the Move" – 4:27
    7. 年老いた妖怪達 "Old Ghosts" – 4:23
    8. ダン・リンギル "Dun Ringill" – 2:41
    9. フライング・ダッチマン "Flying Dutchman" – 7:46
    10. エレジー "Elegy" (David Palmer) – 3:38

    2004年リマスターCDボーナス・トラック 編集

    1. ア・スティッチ・イン・タイム "A Stitch in Time" – 3:40
    2. クロスワード "Crossword" – 3:38
    3. ケルピー "Kelpie" – 3:37
    4. キング・ヘンリーズ・マドリガル "King Henry's Madrigal" (Traditional) – 2:59

    参加ミュージシャン 編集

    アディショナル・パーソネル

    脚注 編集

    注釈 編集

    1. ^ フランス系をルーツとし姓の表記は“Barre”のため、日本では“バレ”と読まれることも多いが、イギリス人であり“バー”と発音するのが正しい[18]

    出典 編集

    1. ^ a b norwegiancharts.com - Jethro Tull - Stormwatch
    2. ^ a b Stormwatch … The 40th Anniversary Forced Edition Chart History - Billboard 200”. Billboard. 2020年2月26日閲覧。
    3. ^ a b JETHRO TULL | full Official Chart History | Official Charts Company - 「ALBUMS」をクリックすれば表示される。
    4. ^ charts.org.nz - Jethro Tull - Stormwatch
    5. ^ a b c d Offizielle Deutsche Charts
    6. ^ spanishcharts.com - Jethro Tull - Stormwatch
    7. ^ Jethro Tull - Stormwatch - hitparade.ch
    8. ^ Jethro Tull - Stormwatch - austriancharts.at
    9. ^ Jethro Tull - Stormwatch - dutchcharts.nl
    10. ^ ultratop.be - Jethro Tull - Stormwatch
    11. ^ ultratop.be - Jethro Tull - Stormwatch
    12. ^ a b c Reed, Ryan (2014年9月14日). “40 Years Ago: Jethro Tull End '70s With Underrated 'Stormwatch'”. Ultimate Classic Rock. Loudwire Network. 2020年2月26日閲覧。
    13. ^ a b c d Stormwatch”. jethrotull.com. 2020年2月26日閲覧。
    14. ^ Dave Pegg”. jethrotull.com. 2020年2月26日閲覧。
    15. ^ a b c 2004年再発CD (TOCP-67287)、2005年再発CD (TOCP-67678)共通ライナーノーツ(赤岩和美)
    16. ^ Eder, Bruce. “Stormwatch - Jethro Tull”. AllMusic. 2020年2月26日閲覧。
    17. ^ ジェスロ・タル『Stormwatch』 4CD+2DVD仕様の40周年記念エディション発売”. amass.jp (2019年7月18日). 2020年2月26日閲覧。
    18. ^ マーティン・バー、ジェスロ・タルのデビュー50周年を祝うライヴ作を発表【前編】”. 2021年3月31日閲覧。

    外部リンク 編集