ディオロケトゥス学名Diorocetus)は、約2043万年前から約1160.8万年前にかけて(新生代新第三紀中新世中葉)の大西洋太平洋に棲息していた化石クジラ類 (cf.) の1鯨偶蹄目ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ上科ディオロケトゥス科[4]に分類される。

ディオロケトゥス
生息年代: 20.43–11.608 Ma
fossil range
「ディオロケトゥス ヒアトゥス」の若い個体のトーガイコツ化石です。
Diorocetus hiatus の若い個体の頭蓋骨化石
地質時代
約2043万年前[1] - 約1160.8万年前[2]
バーディガリアン初頭 - サーラバリアン末期
新生代新第三紀中新世中葉)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
階級なし : 有胎盤類 Placentalia
北方真獣類 Boreoeutheria
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : クジラ目(クジラ類)Cetacea
階級なし : Pelagiceti
階級なし : 新鯨類 Neoceti
亜目 : ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
階級なし : 無歯ヒゲクジラ類 Chaeomysticeti
階級なし : Plicogulae
上科 : ナガスクジラ上科 Balaenopteroidea [3]
: ディオロケトゥス科 Diorocetidae [3][4]
: ディオロケトゥス Diorocetus
学名
Diorocetus Kellogg, 1968 [5]
和名
ディオロケトゥス
下位分類(

化石は、アメリカ合衆国東海岸メリーランド州バージニア州)、日本ドイツから発見されている[2]

名称 編集

学名 編集

学名の言語的由来については情報を確認できない。ただ、cetus は「クジラ」を意味しており、古典ラテン語で「大型の海洋動物(クジラ、サメなど)」を意味する "cētus日本語音写: ケートゥス)" から来ている。

和名 編集

"cetus" の読みについて日本語表記揺れ・言葉の揺らぎが激しく、一つに絞ることはできない。古典ラテン語発音準拠であれば「ケトゥス」であるが、古典ラテン語発音準拠形の日本語転訛形「ケトス[注 1]」、ラテン語発音と英語発音のちゃんぽん形「ケタス[8]」、そして、英語発音準拠の「セタス」がある。したがって、本属の和名は定義文で示した4種類がある。

分類 編集

上位分類 編集

ディオロケトゥス科には、ディオロケトゥス属のみが分類されている。同科は、ディオロケトゥス属を収めるための新しい科として、デンマーク古生物学者メッテ・エルストルップ・ステーマン (Mette Elstrup Steeman) によって2007年に提唱された[3]

下位分類 編集

地質年代:20.43 - 11.608 Ma(約2043万年前 - 約1160.8万年前)。
地質年代:20.43 - 13.65 Ma(約2043万年前 - 約1365万年前)。
化石は、日本の埼玉県秩父市秩父盆地に分布する秩父町層群 (Chichibumachi Group) 奈倉層英語版内の2か所から産出した[9][12][11]。最初の発見は1984年(昭和59年)であった[9]。このクジラは、約1700万年前から約1500万年前までの約200万年間に亘ってこの地域に存在していた古秩父湾こちちぶわん[注 3]を泳いでいた[9]
  • Diorocetus hiatus  Kellogg, 1968 [5] | 和名:ディオロケトゥス・ヒアトゥス
タイプ[5]
地質年代:15.97 - 13.65 Ma(約1597万年前 - 約1365万年前)。
アメリカ合衆国東海岸にあるチェサピーク層群英語版カルバート層英語版メリーランド州域の地層およびバージニア州域の地層から産出した。
地質年代:20.43 - 15.97 Ma(約2043万年前 - 約1597万年前)。
化石は広島県庄原市備北層群(Bihoku Group. 三次市域と庄原市域に分布する中新統)から1982年(昭和57年)8月に発見された。
  • ドイツ産出の未同定種
化石は、ドイツシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州にあるヴィーナーベルガー粘土鉱山 (Tongrube Wienerberger) から産出した[15][16]
地質年代は 13.7 - 11.608 Ma(約1370万年前 - 約1160.8万年前)で、サーラバリアン階に属する[15]。したがって、本属の種の中で最も若い時代まで生き延びていたことになる。

論文 編集

記載論文 編集

他の研究論文 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ "Homo erectusホモ・エレク)" と同様の訛り。
  2. ^ Brachiosaurus を「ブラオサウルス」と呼ばないのと同じく、ラテン語に準拠する限りは "chichibuensis" を「チチブエンシス」とは読まない。ただ、現地語発音を知らない限り読みようの無い現地語準拠を主張する人は研究者も含めて一定数いるのであり、「チチブエンシス」の読みを否定する規約もまた無い。
  3. ^ cf. 古秩父湾堆積層及び海棲哺乳類化石群

出典 編集

  1. ^ Fossilworks D. chichibuensis.
  2. ^ a b Fossilworks.
  3. ^ a b c Steeman, 2007.
  4. ^ a b c Fossilworks Diorocetidae.
  5. ^ a b c d e Kellogg, 1968.
  6. ^ a b Yoshida et al., 2003.
  7. ^ a b Otsuka et Ota, 2008.
  8. ^ 木村ら (2010), p. 34.
  9. ^ a b c d 秩父の大地に眠る太古の海の物語”. ジオパーク秩父. 秩父まるごとジオパーク推進協議会事務局. 2021年5月25日閲覧。
  10. ^ 埼玉県立自然の博物館、新たにクジラ化石展示」『日本経済新聞日本経済新聞社、2018年1月26日。2021年5月25日閲覧。
  11. ^ a b 川畑仁志「古秩父湾堆積層と海棲哺乳類化石群が天然記念物に複合指定へ」『産経ニュース産業経済新聞社、2015年11月21日。2021年5月25日閲覧。
  12. ^ ようばけ”. ジオパーク秩父. 秩父まるごとジオパーク推進協議会事務局. 2021年5月25日閲覧。
  13. ^ 庄原産クジラ、世界で未発見の3新種が報告される”. 庄原化石集談会. 2021年5月20日閲覧。
  14. ^ 博物館の紹介”. 庄原市. 2021年5月20日閲覧。※博物館の展示物として生態復元像がある。
  15. ^ a b Tongrube Wienerberger (Miocene of Germany)”. Fossilworks. 2021年5月20日閲覧。
  16. ^ Tongrube Wienerberger, Lower Saxony, Germany”. Mindat.org. Hudson Institute of Mineralogy. 2021年5月20日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集