ドリス・イエ

台湾の女性ミュージシャン

ドリス・イエ(Doris Yeh、本名:葉 湘怡(イェ・シァンイー)、1977年[1]9月19日[2] - )は台湾宜蘭県出身の女性ミュージシャンブラックメタルバンド「閃靈樂團ChthoniC/ソニック)」の紅一点メンバーで、バンドリーダーとベーシストを務める。同ボーカルで時代力量所属[注釈 1]立法委員の林昶佐(フレディ・リム)の夫人。芸名としてのドリスのほか、「桃樂絲(ドロシー)」、そこから派生した「阿桃(アータオ。桃ちゃんの意味)」のニックネームがある[1]

ドリス・イエ
基本情報
繁体字 葉湘怡
簡体字 叶湘怡
生誕 (1977-09-19) 1977年9月19日(46歳)
中華民国の旗 台湾 宜蘭県羅東鎮
英語名 Doris Yeh
職業 ミュージシャン(ソニック
ジャンル ブラックメタル
担当楽器 ベーシスト
活動期間 1999年 - 現在
配偶者 フレディ・リム(林昶佐)
子供 一女
教育 国立台北大学
公式サイト https://twitter.com/doris0919
愛称 桃楽絲、阿桃
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ドリス・イエ
(葉 湘怡)
出身地: 中華民国の旗 中華民国台湾
出生地: 中華民国の旗 中華民国台湾宜蘭県羅東鎮
各種表記
ラテン字 Doris Yeh
和名表記: ドリス・イエ
各種表記(本名)
繁体字 葉湘怡
簡体字 叶湘怡
拼音 Yè Xiāng yí
通用拼音 Yè Siang yí
ラテン字 Yeh Hsiang Yi
注音符号 ㄧㄝˋ ㄒㄧㄤ ㄧˊ
台湾語 Hio̍h Siong-î
和名表記: よう しょうい
発音転記: イェ・シァンイー
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人物 編集

家族 編集

1977年、宜蘭県羅東鎮で出生[3][2]。幼いころは三人姉妹でJPOPをよく聴き、少年隊酒井法子斎藤由貴などのファンだった[2]

台湾電視公司の創設した台視大楽団中国語版で父がベーシストだった影響を受け、幼少のころからベースのほか、バレエピアノを学ぶ[2]

24歳時の2001年にボーカルのフレディと正式に結婚。バンド活動での借金もあり、挙式は2004年だった[4]。2017年2月に女児を出産、一女の母となった[5]

ミュージシャン 編集

楽曲や受賞などのディスコグラフィについてはソニック (バンド)を参照。

 
ソニックではベーシストを務める(2007年)

ソニック加入前 編集

中学卒業後は国立台北商業専科学校(台北商専)の五專部(商業高専全日制に相当。現在の国立台北商業大学の前身。)に進学、学長を説得して音楽サークルを設立[2]。自分の声が好きではなかったことからボーカルを避け、キーボードもやる気にならずベースを選んだ[1]。父親は当時、ドリス(の個性)はバンドには合わないと思っていて、成人すれば普通の勤め人になると考えており[2]、「父にとって、娘がブラックメタルのベーシストになることなど予想外だったろう。」と述べている[2]

台北商専時代のバンドサークルでは自身のステージネームを「Jenny(ジェニー)」と名乗っていたが[1]、その後アイルランドのロックバンドクランベリーズでボーカルを務めるドロレス・オリオーダン(Dolores Mary Eileen O’Riordan)のファンになったことから現在の「Doris(ドリス)」に改名している[1]。サークルの部室の確保さえままならず、校内の礼拝堂に近い一室を気に入ったが、既に使用されていたためそこの主だった合唱部との協議で間借りすることになった[6]。ライブを開いたり、ビデオを見せて新入生を勧誘し、校内でCDを売って部費を稼いでいた[6]

1995年から台北で始まったインディーズ系の野外フェス「野台開唱中国語版(Formoz Festival)」にサークルメンバーとともに参加、オーガナイザーも務めている[6]

高専卒業後、進学するか先に就職するかの選択を迫られたドリスは記者になろうとして国立政治大学への進学を目指したが、成績上の事情で国立中興大学法商学院(現・国立台北大学)公共行政系(系は学科に相当)を選んでいる[1]

ソニック加入後 編集

大学では先輩の林昶佐と知り合い[1]、4年時の1999年にベーシストとしてソニック加入を果たす。数年でブラックメタル界を席巻し、ドリスも実力派かつセクシーベーシストとして認知されるようになる[1]。2008年にはバンドのリーダーに選ばれた[1]

自らの音楽活動のほか、上記のとおり高校時代からロックフェスのオーガナイザーを長く務め[7]、2016年には日本での台湾カルチャーの祭典「台ワンダフル」座長として、後輩を支えた[8]

機材 編集

機材はかつてはアイバニーズ、その後は日本のイーエスピー[9]、両社からドリスのシグネチャーモデルも発売されている[10]

女優 編集

2010年の台湾映画「目涙中国語版」(Tears)に檳榔西施役で出演している[1]

2017年のコメディ映画「衝組中国語版」でソニックメンバーとともに本人役として出演、既に出産前に近い体型に戻っており話題となった[11]

雑誌 編集

世界各国で多数の音楽雑誌、大衆娯楽雑誌の表紙を飾ったほか、ミュージシャンとして、または女性として各種ランキングで上位に選ばれている。

世界的な男性雑誌「FHM」では中文国際版の表紙を飾り[12]イギリスオーストラリアドイツメキシコなど計8か国で記事が掲載され、台湾の芸能人では最多記録となっている[1]

英国の音楽雑誌「テロライザー英語版(Terrorizer)」の読者投票でベスト・ベーシスト2位(2009年)に[13][7]、米国の音楽雑誌「リボルバー英語版(Revolver)」で史上最もセクシーなヘヴィメタル・アーティストに選ばれたり[1]ポーランドの音楽雑誌「Teraz Rock英語版ポーランド語版」の「最も美しい女性」で首位(2013年)となった[14][1]

日本でも東京の外国人向けフリーマガジン「メトロポリス英語版」の表紙を飾ったり[15]、ロック雑誌『BURRN!』で最優秀ベーシストの3位に選出されている[7]

2014年、サマーソニック出演を控えて水着姿のポスターを披露した[16]

2015年、台湾国内のネット上のコメントを解析する調査機関「DailyView(網路温度計)」の「国内10大美女ロックミュージシャン」で圧倒的な1位にランクインした[17]

イメージキャラクター 編集

エピソード 編集

 
「林昶佐太太(林の妻)」と書かれた襷を着用して夫フレディの選挙活動に同伴するドリス。(2016年1月)

議員夫人 編集

2016年1月、フレディが立法委員選挙の候補者だったときは地味な街宣活動にも参加して夫の当選を後押しした[19]。当選後はミュージシャン同士としての共同生活が一変、夫婦別々の仕事に就くことになったため、「このような状況は10年来で初めてで、慣れるように適応中。」と述べている[20]

2019年3月のインタビューでは「立法委員林昶佐の妻としては夫の立法委員再選を望んでいない。」とする一方「バンドリーダーの立場としては政治家継続を望んでいる。」と語るなど複雑な胸中を明かしている[1]。これについては、多くの外国のミュージシャンたちに『ソニックの音楽は台湾の歴史そのもので、フレディには台湾人の魂があるから、もし政治的メッセージの発信を継続できるならこれほど素晴らしいことはない』という反応を示されたことを理由としている[1]

2019年8月、夫のフレディが時代力量を離党し、次期立法委員選挙を無所属で戦うことを表明した際は、これまで通り夫の政治活動を支えることと、蔡英文支持を改めて表明した[21]

発言 編集

2016年1月、TWICEツウィが中国からのバッシングで謝罪させられた事件(ツウィ謝罪事件)では騒動の発端となった黄安中国語版ではなく中国政府を激しく非難した[22]

和平紀念日を控えた2016年2月末、国立政治大学で学生が犠牲者の誕生日を書いた文書を校内の蔣介石像に貼り付けたが、警備担当者が排除したことを理由に学校側を非難している[23]

同年6月、当時の行政院長だった林全が『中華台北(チャイニーズ・タイペイ)は中華民国である』と発言した際には「自分は海外公演で台湾出身であることは外国人は理解しており、罵倒してくるのは中国人だけ」と反発している[24]

2018年中華民国統一地方選挙期間中は高雄市韓国瑜の対立候補だった民主進歩党陳其邁支持を表明していた[25]

2019年7月、香港民主化デモの様子に心を痛め、総統選挙では蔡英文に投票すると表明している[26]

その他 編集

2007年、米国セントルイスの在米華僑と面会し、本土意識や独立意識が高まったという[27]

2014年に出版した自伝では、北欧ツアー時に泥酔したスウェーデンのミュージシャンによる変態行為に辟易した話などを盛り込んでいる[28]

2015年、姦通罪の廃止に賛成意見を表明していた[29](2017年廃止へ向けて司法改革が始動[30]。)

2016年春の訪日旅行中に湯布院熊本地震に遭遇し、ホテルの屋外に浴衣姿のまま避難し一夜を過ごした。議員活動中だった夫フレディとは一時連絡が取れなくなったものの、被害はなかった[31]

妊娠中は胎教として娘に台湾語を聞かせていた[32]。1歳になった長女のあまりの可愛さに夫のフレディやその父が大物女優と同名の林志玲(リン・チーリン)に改名しようと言い出したことを暴露している[33]

著書 編集

  • 2012年 - 写真集「Doris 火燒‧島」(CDのパッケージ品として。EAN 4717954162239)[34]
  • 2014年 - 到哪找這款女性,世界一等搖滾女王(明日工作室発行、ISBN 9789862907191

脚注 編集

註釈 編集

  1. ^ 2019年離党

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o (繁体字中国語)蔡育豪 (2019年3月15日). “【蘋中人】卸下屍妝的狂野惡女 葉湘怡”. 台灣蘋果日報. 2019年11月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h (繁体字中国語)王亞玲 (2016年1月16日). “Freddy背後的女人…”. 壹週間. 2019年11月23日閲覧。
  3. ^ (繁体字中国語)曾詩婷 (2016年11月6日). “最辣搖滾女王當媽!閃靈Doris懷胎6月,林昶佐升格當爸”. 風傳媒. 2019年11月23日閲覧。
  4. ^ (繁体字中国語)【高潞趁亂告白】對林昶佐大喊「我愛你」 網酸:他都退黨了,妳怎麼還在”. 上報/Yahoo奇摩 (2019年8月1日). 2019年11月27日閲覧。
  5. ^ (繁体字中国語)林昶佐笑迎前世情人 愛女萌照曝光”. 自由時報 (2017年2月24日). 2019年11月23日閲覧。
  6. ^ a b c (繁体字中国語)葉湘怡校友”. 国立台北商業大学校史館数位典蔵平台. 2019年11月23日閲覧。
  7. ^ a b c 金子厚武. “日本と台湾の音楽関係者が語る、一歩踏み込んだ文化交流のカギ”. CICRA.net. 2019年11月23日閲覧。
  8. ^ Fire EX.など台湾アーティスト6組、日本の音楽フェス参加へ 魅力伝える”. フォーカス台湾 (2016年8月3日). 2019年11月23日閲覧。
  9. ^ (英語)Win an ESP bass guitar signed by Chthonic’s Doris Yeh!”. テロライザー・マガジン (2013年7月9日). 2019年11月24日閲覧。
  10. ^ Doris Yeh”. ESP Guiters. 2019年11月22日閲覧。
  11. ^ (繁体字中国語)哭!閃靈Doris告別深溝爆乳 樂迷崩潰森77”. 自由時報 (2017年10月21日). 2019年11月23日閲覧。
  12. ^ (英語)JUNE 2012 FHM TAIWAN”. 2019年11月23日閲覧。
  13. ^ ChthoniCがTerrorizer誌の読者投票で2009年ベスト・バンドの2位に!”. ハウリング・ブル・エンターテイメント (2010年1月8日). 2019年11月23日閲覧。
  14. ^ (ポーランド語)Polski magazyn: Tajwańska artystka najpiękniejsza”. CSPA(Centrum Studiów Polska-Azja) (2013年4月22日). 2019年11月23日閲覧。
  15. ^ (英語)RIOT GRRRL”. メトロポリスマガジン (2010年9月16日). 2019年11月23日閲覧。
  16. ^ 台湾のメタルバンド、ソニックのドリス セクシーなビキニ姿を披露”. フォーカス台湾 (2014年7月1日). 2019年11月23日閲覧。
  17. ^ (繁体字中国語)她們都是貨真價實的Rocker!網友嚴選十大搖滾正妹!”. DailyView(網路温度計) (2015年8月12日). 2019年11月23日閲覧。
  18. ^ (繁体字中国語)FG新品搶先報 - DIABLO ||| 暗黑女神狂潮來襲”. FashionGuide 華人時尚專業評鑑. 2019年11月27日閲覧。
  19. ^ (繁体字中国語)力挺林昶佐到底!閃靈Doris:打敗國民黨 從沒這麼近過”. 自由時報 (2016年1月6日). 2019年11月23日閲覧。
  20. ^ (繁体字中国語)林昶佐Doris夫妻不同調 10幾年來第1次”. 自由時報 (2016年3月18日). 2019年11月23日閲覧。
  21. ^ (繁体字中国語)(專訪)林昶佐愛女哭醒找爸 Doris同聲:支持蔡英文”. 自由時報 (2019年8月2日). 2019年11月26日閲覧。
  22. ^ (繁体字中国語)子瑜遭中國封殺 閃靈Doris怒轟”. 自由時報 (2016年1月14日). 2019年11月26日閲覧。
  23. ^ (繁体字中国語)政大撕海報爭議 Doris:用選票幹不掉的KMT影響力...”. 自由時報 (2016年2月27日). 2019年11月23日閲覧。
  24. ^ (繁体字中国語)「中華台北」爭議 閃靈Doris:對外只講來自台灣!”. 自由時報 (2016年6月12日). 2019年11月23日閲覧。
  25. ^ (繁体字中国語)「挺陳其邁」影片再添一發!閃靈團長Doris表態支持”. 風傳媒 (2018年11月15日). 2019年11月26日閲覧。
  26. ^ (繁体字中国語)慘烈香港恐變明日台灣 閃靈Doris痛心:票投小英”. 自由時報 (2019年7月23日). 2019年11月26日閲覧。
  27. ^ (繁体字中国語)本土意識強 獨立見解深 閃靈重金屬樂團與聖路易台灣鄉親會面”. 聖路易時報 St. Louis Chinese American News (2007年8月9日). 2019年11月23日閲覧。
  28. ^ (繁体字中国語)閃靈Doris北歐巡演 瑞典男伸鹹豬手”. 自由時報 (2014年11月30日). 2019年11月26日閲覧。
  29. ^ (繁体字中国語)通姦應否除罪化 于美人:夫妻關係回不去”. 自由時報 (2015年3月2日). 2019年11月23日閲覧。
  30. ^ 台湾、姦通罪廃止に動く=司法改革国是会議が決議を採択”. フォーカス台湾 (2017年5月20日). 2019年11月26日閲覧。
  31. ^ (繁体字中国語)Doris九州逃命 林昶佐震驚找不到老婆”. 自由時報 (2016年4月18日). 2019年11月23日閲覧。
  32. ^ (繁体字中国語)(獨家)Doris胖17公斤卸貨倒數 胎前教育是台語”. 自由時報 (2017年2月4日). 2019年11月23日閲覧。
  33. ^ (繁体字中国語)兒童界「林志玲」?閃靈團長女兒遺傳好基因 老公還想改名”. 三立新聞網 (2018年4月18日). 2019年11月26日閲覧。
  34. ^ (繁体字中国語)閃靈火辣貝斯手 葉湘怡出寫真”. 中央通訊社 (2012年8月26日). 2019年11月23日閲覧。

外部リンク 編集