ファミリー・フュード

アメリカの視聴者参加クイズ番組

ファミリー・フュード」(Family Feud)は、アメリカの視聴者参加クイズ番組1976年に開始し、2021年現在も放送中である。

ファミリー・フュード
ジャンル クイズ番組
企画 マーク・グッドソン
司会者 スティーブ・ハービー(2010 – )
ナレーター ルービン・アービン
国・地域 アメリカ合衆国
製作
制作 フリーマントル
配給 CBSテレビジョン・ディストリビューション(2019 – )
放送
放送局シンジケーション
放送期間1976年 -
公式ウェブサイト
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概要 編集

ジェパディ![1]」「ホイール・オブ・フォーチュン」「ザ・プライス・イズ・ライト[2]」と並び、アメリカを代表する「Game Show(クイズ・ゲーム番組)」である。[3]

主にゴールデンタイム帯番組(30分間)として、シンジケーション(米国特有の番組流通網)を経由し、米国各地で放送されている。また番組を抜粋した動画がYouTubeで毎日公開されている。

メディア企業・フリーマントル著作権を持っており、日本のテレビ番組「クイズ100人に聞きました」(TBSテレビ)の元になっている(日本版にはフリーマントル社のクレジットはない)。

有名人が出演するバージョン「Celebrity Family Feud」も独立した番組として制作されており(収録場所も異なる)、現在はABCが放映権を持っている。米国のクイズ番組では一般的に有名人バージョンは個別の番組として成立しているが、本項目では両者を一緒に扱う。

現在はロサンゼルスでの公開収録が行われている。

「Family Feud」は「家族間の骨肉の争い」と言った意味である[4]

特徴 編集

番組の性格上、富裕層は対象でなく一般庶民が出場し、また視聴する番組である。下ネタや尾籠な言葉も多く発せられる。

「Name something ...(~は何でしょう?)」「Survey said ...(答えたのは何人?)」「Good Answer!(いい答えだ!)[5]」など、「お約束」となっているフレーズがいくつかある。

構成 編集

1976年の放送開始以来、細かな部分を除くと大きくは変えられていない。家族(親戚を含んでよい)5人を1チーム(ファミリー)とし、2チーム同士で対戦する。

なおセレブリティ版では賞金はすべて寄付(チャリティー)される。

レギュラー問題

100人にアンケートを取り、2人以上の回答があった答え(最大8つ)が「ボード」と呼ばれるディスプレイ上に表示される。

1ゲームのはじめは早押しクイズとなっており、チームのうち1人ずつが早押しの解答者として、早押しボタンのあるスタジオセット中央に移動。先にボタンを押した解答者が先に解答権を得る(誤答(解答が答えの中にない)、もしくは答えられない[6] 場合は、対戦相手の解答者が答えることができる)。ボタンを押せなかった解答者も解答し、より回答者数の多い(「Popular」)答えを当てたチームが先攻・後攻を選べる(強制的に先攻となった時期もある)。早押し解答者が両者とも解答できなかった場合は、チーム席に残ったメンバーが交互に解答する。

先攻となったチームメンバーはチーム席に戻り、後はボードの答えを予想して1人ずつ回答していく。答えが合っていれば順位は問わない。メンバー同士の相談は不可。逆に「後攻」となったチームはこの間、5人で相談をしていてよい。

答えがすべて開かれるまで答え続けることができ、答えの回答者数が「仮のポイント」となって蓄積されていく。誤答、もしくは言いよどんだ場合、ブザーが鳴り、画面上に「×」(「Strike」)が表示される。「×」が2つ以内の状態で答えをすべて解答し終えた場合、「仮のポイント」はすべて先攻チームのものとなって1ゲームが終了する(なお、1人しかない少数解答はボードに載らないため、ポイントは100に満たないことが多い[7])。

答えをすべて解答できずに「×」が3つになると後攻に解答権が移る。後攻が解答できるチャンスは1回しかないが、ここで正解すれば、先攻が答えた分を含め、仮のポイントを総取り(「Steal」)することができる。逆に後攻が解答に失敗した場合はブザーが鳴り「×」が表示され、仮のポイントは先攻が獲得する。

ゲームを繰り返し、ポイントを先に300点(時期により変動あり)獲得したチームが勝利となるが、スピードアップのために途中でポイントが2倍、さらに3倍となる。それでも時間がなくなった場合、1位だけを当てさせる「サドンデス」で決着をつける。

ファストマネー(Fast Money)

レギュラー問題で勝利したチームが挑戦するラストゲームである。「100人に聞きました」の「トラベルチャンス」に相当する。

勝利チームの中から代表者2人が登場し、短い制限時間中[8]に司会者から出される5つのアンケート問題に1人ずつ解答する。レギュラー問題同様に回答者数=ポイントとなる。2人で累計200ポイントを獲得すればクリア。現在は20000ドルを獲得できる(「ブルズアイゲーム」があった時期は最大30000ドル)。2人で解答して200ポイントに満たなかった場合は、ポイント×5ドルを獲得。

2人目の解答者はスタジオの裏でヘッドフォンと目隠しをされ、1人目の解答が終わった後に登場する。2人目は解答時間が5秒プラスされ、1人目と解答が重複した場合はブザーが鳴り答え直しが可能。

ファストマネーの結果を問わず、勝者チームは賞金を繰り越して次の回にも出演し、5回勝ち抜けすると自動車も獲得できる。

セレブリティ版の場合はクリアすれば25000ドルを獲得、ただし全額寄付される。勝ち抜き制はない。

ブルズアイゲーム(Bullseye Game)

放送時間が延長された1992年以降、2010年まで断続的に続けられたゲーム。ドーソン復帰時のみ「バンクロール(Bank Roll)」と改称されている。各チーム1人ずつ早押し問題に挑戦し、1位を解答できたチームは「ファストマネー」の賞金が上乗せされていく(2位以下は誤答扱い)。2010年のリニューアル以降、現在まで行われていない。

略史 編集

1976年、ABCで放送が始まる。初代司会はリチャード・ドーソン英語版俳優[9])。「ボード」は、レギュラー問題用の回転式パネルと、「ファストマネー」に使う電光掲示板で構成されていた。国民的番組となり[10]1985年まで放送される。

1988年レイ・コームスコメディアン)を起用して復活。CBSに放映権が移る(シンジケーションでも放送)。カントリー・ミュージック調のテーマ曲がアレンジし直される(このときのバージョンは2020年現在も使われている)。放送時間を1時間に延長するなど好評を博す。1994年にリニューアルし、初代のドーソンが司会として呼び戻される[11] が翌年に再度終了。

1999年にシンジケーションで再び復活し、ルイ・アンダーソン(コメディアン)が起用される。テーマ曲やスタジオ意匠、タイトルロゴを一新。これ以降、「ボード」は大型ディスプレイとなっている。

2002年にはリチャード・カーン(俳優)が司会に就任。ハロウィン仮装大会、消防士大会、軍人大会など出場者を限定した回も制作された。2003年にはテーマ曲が1988年のものに戻されたが、短期間で1999年のものに再度変更された。

2006年のリニューアルでは「となりのサインフェルド」に出演していた俳優、ジョン・オハーリーを起用。タイトルロゴが変更され、2008年には、テーマ曲が三たび1988年のものが採用された(以降、現在まで変更されていない)。これと平行し、同2008年にはNBCをキー局として有名人バージョンが独立番組として開始され、お天気キャスターとして人気のあった司会者、アル・ローカーが起用されたが1シーズン(1ヶ月)で放送を終えている。

2010年からは、朝のラジオパーソナリティとして人気のあったコメディアン・司会者、スティーブ・ハービー[12] が司会に起用され、2020年現在も継続中である。

2015年に有名人バージョンが、「元祖」であるABCで復活。シンジケーション同様にハービーが司会を務め、以降1年ごとに新作が作られている。

海外版 編集

イギリス版 編集

イギリスでは「Family Fortunes」のタイトルで1980年2002年の間、ITVネットワークで断続的に放送された。回転式パネルは用いず、「ミスターバベッジ[13]」と呼ばれる電光掲示板が番組の名物となっていた(80年代には、米国に先駆けLED式巨大ディスプレイを採用したが、1年間で元の電光掲示板に戻している)。

司会はボブ・モンクハウス(司会者)、マックス・バイグレイブス歌手)が務めた後、レス・デニス(コメディアン)が(最後の1年間を除き)15年間担当、番組の顔となった。

特定の答えの中に賞品が隠されており、それを獲得できるルールがあった。またラストゲーム「Big Money(米国版のFast Money)」では、5つの設問すべてで1位を当てると自動車も獲得できた。

2006年に有名人バージョン「All Star Family Fortunes」として復活、2015年で終了。2020年には一般参加版が18年ぶりに開始された。

その他 編集

オーストラリアフランスインドネシアなど世界各国で放映実績がある。長寿番組ゆえ放映終了した国も少なくないが、2019年には米国版のスタイルをほぼ踏襲したカナダ[14] が、CBC(カナダ放送協会)で立ち上げられた。コメディアンのジェリー・ディーが司会を務めている。

2020年には、スティーブ・ハービー自身が番組を売り込んだ南アフリカ共和国およびガーナ共和国で放送が始まり[15] 、米国から出張する形でハービーが司会を務めている。さらにオーストラリアでは大規模森林火災被害者・関係者や、新型コロナウイルス感染症患者・医療関係者を勇気づける企画として、短期シリーズの復活版制作が発表されている[16]

日本ではTBSテレビが放送。「Family Feud」から遅れること2年後の1978年に「家族対抗クイズ合戦」の題で日曜午後に関東ローカルで開始、1年後にタイトルを「クイズ100人に聞きました」に改め、月曜のゴールデンタイム・全国ネットに移行。1992年までの14年間続いた。司会は俳優の関口宏が務めた。日本国内では2000年12月30日に特別番組として放送された。

関連 編集

出典・脚注 編集

  1. ^ 日本では「クイズグランプリ」として放送。
  2. ^ 日本では「ザ・チャンス!」として放送。
  3. ^ Entertainment venue centered on TV game shows coming to Mount Pleasant”. Post and Courier (2019年12月25日). 2020年2月16日閲覧。
  4. ^ 日本版の当初のタイトル「家族対抗クイズ合戦」は直訳に近い。逆にイギリス版では「Feud」の語が避けられ、代わりに「Family Fortunes(家族の幸運)」という題名がつけられた。
  5. ^ 「100人に聞きました」の「あるあるある!」に相当するが、観客ではなくチームメンバーが言う。
  6. ^ 無制限に考え続けることはできず、数秒言いよどむとブザーが鳴り誤答と同じ扱いとなる。開始当初は3秒ほど猶予があったが、2020年現在は1秒程度。ただし、ブザーと同時に解答したと司会者が判断した場合は、その解答は認められる。
  7. ^ 「100人に聞きました」では司会者が少数解答を読み上げていたが、「Family Feud」では特に取り上げることはない。
  8. ^ 当初は15秒/20秒。その後20秒/25秒に改められる。パスが可能だが時間切れすると無回答扱いとなる。
  9. ^ 当時、クイズ番組「Match Game(日本の「アイ・アイゲーム」の元になった番組)」で解答者として人気を博していた。
  10. ^ ドーソンが女性出場者にスキンシップキスをするのがおなじみとなる。A・シュワルツェネッガー主演の映画「バトルランナー」には、ドーソンが当番組の司会者を彷彿とさせる悪役で出演している。
  11. ^ この時期のみ解答者が1チーム4名に減らされ、「ボード」は電光掲示板のみとなり、「ファストマネー」以外はCGに置き換えられた。
  12. ^ 「スティーブ・ハーベイ」とも表記。
  13. ^ 英国の数学者チャールズ・バベッジに由来
  14. ^ カナダでは米国のテレビ番組を視聴するのが容易で、米国版の同番組も広く視聴されてきた経緯がある。
  15. ^ STEVE HARVEY OBTAINS LICENSING RIGHTS TO BRING “FAMILY FEUD” TO GHANA AND SOUTH AFRICA”. BLACK ENTERPRISE (2020年3月5日). 2020年5月11日閲覧。
  16. ^ Family Feud to make television comeback on Channel 10 in July”. DAILY TELEGRAPH (2020年5月22日). 2020年5月31日閲覧。