再建されたフィン祖語は6種類の場所格を持つ。場所格には"s"を持つ内部格と"l"を持つ外部格の2種類の系列が存在し、そのそれぞれに静的な位置・移動の起点・移動の到達点の3種の方向性の区別がある。

場所格 到達点 位置 起点
内部格 sVn 「〜の中へ」 (入格) ssA (<*s+nA) 「〜の中に」 (内格) stA 「〜の中から」 (出格)
外部格 *len, *lek? 「〜の表面へ」 (向格) llA (<*l+nA) 「〜の表面に」 (接格) ltA 「〜の表面から」 (向格)

表中のAはa, äのうち母音調和に適合するいずれかであり、Vは挿入母音である。-nAはフィン・ウゴル祖語の地格(フィン語族の様格の起源)の標識であり、-tAは離格(フィン語族の分格の先祖)の標識であり、-n, -s, -kは向格の標識であると再建できる。

-s / -lの格はウラル語族の諸語とも対応が見られるものの、この体系はおそらくウラル語族とフィン語族の分岐後に、フィン語族で起こった言語革新である。[1]

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Laakso, Johanna (2001), “The Finnic Languages”, in Dahl, Östen; Koptjevskaja-Tamm, Maria, The Circum-Baltic Languages: Typology and Contact, Studies in Language Companion Series, 44-45, Amsterdam: John Benjamins B.V., ISSN 0165-7763