ダッソー ミラージュ2000N

フランス空軍のミラージュ2000N

フランス空軍のミラージュ2000N

ダッソー ミラージュ2000N (Dassault Mirage 2000N) はフランスダッソー社が開発したミラージュ2000の複座型をベースとした攻撃機。派生型として通常兵器のみを運用する戦闘爆撃機ミラージュ2000D (Mirage 2000D) がある。

概要 編集

ミラージュ2000N 編集

フランス空軍では戦略爆撃機としてミラージュIV1964年から運用していたが、1980年代に入ると機体の旧式化が進んだことから、後継機が必要となり始めていた。このためフランス空軍は、ダッソー社が開発中のミラージュ2000の発展型を後継機とすることを決め、1979年に侵攻攻撃機型ミラージュ2000P試作機2機の試作契約をダッソー社に与えた。なお、機体名称はすぐに核攻撃力付与を意味するNucle'aireから取ってミラージュ2000Nに変更された。

ミラージュ2000Nは、ミラージュ2000Bの機体フレームを活用した核攻撃能力を備える複座機として開発が進められ、機首レーダーにはダッソー・エレクトロニク社とトムソンCFS社が共同開発したアンテロープ5を搭載。このほか、サジェム慣性プラットフォーム2基、AHV-12電波高度計2基、ヘッド・ダウンCRT表示装置、セイバー妨害システムによる統合対抗手段システム(ICMS)、セルバル・レーダー警戒受信機(RWR)、スパイラル自動チャフ/フレア・ディスペンサーなどを装備している。ミラージュ2000Nに搭載されているアンテロープ5レーダーは、低空飛行および対地攻撃向けレーダーで、地形追随/地形参照機能を有し、高性能のグラウンド・マッピング・モードを有する。このため、亜音速で対地高度60mを維持しての自動操縦飛行能力を備えているとされる。

ミラージュ2000N初号機は1983年2月3日に初飛行し、フランス空軍は75機を発注。このうち最初の31機は核弾頭搭載可能な長射程巡航ミサイルASMP携行専用機[注 1]で、ミラージュ2000N-K1と呼ばれ、32号機以降は通常兵器も携行可能にした複合任務機ミラージュ2000N-K2として区別される(後にK1も全機K2へ改修)。

2000年からは、ミラージュ2000N-K2の航法/攻撃システムに自己防御器材を統合化させたミラージュ2000N-K2-4Cへの改修作業が行われており、さらにタレス製レコNG偵察ポッドや能力向上型のASMPアメリオール巡航ミサイルを携行でき、自己防御電子機器をアップグレードするミラージュ2000N-K3への改修が実施されており、50機が改修対象とされて2007年初期作戦能力(IOC)を獲得している。

ASMPの運用を引き継いだラファールの配備に伴い、2018年6月21日に退役した[1]

ミラージュ2000D 編集

 
ミラージュ2000D
レドームの色がダークグリーンになったほか、レドーム先端のピトー管が無くなった点でミラージュ2000Nと識別できる

ミラージュ2000Dはミラージュ2000Nから核攻撃能力を外し戦闘爆撃機としたもので、ラファールの開発遅延に対するつなぎとして開発された。当初はミラージュ2000N´(プリム)と呼ばれていたが、ミラージュ2000Nとの名称混同を避けるため多様化を意味するDiversifieから取ってミラージュ2000Dと改称されている。初号機は1991年2月19日に初飛行した。

ミラージュ2000Dは、ミラージュ2000Nとの外見上の相違はほとんどないが、機首に地形追随機能や対地攻撃モードなどを加えたアンテロープ5-3Cレーダーを搭載し、自己防御器材の充実化や航法装置の高機能化と高精度化を行っている。航法装置はULISS52P慣性航法装置2基を装備して航法精度を高めているほか、全地球測位システム(GPS)の追加搭載も行っている。また、コクピットのキャノピーにはのコーティングが行われ、ステルス性が高められている。

フランス空軍では1993年4月からミラージュ2000Dによる運用試験を実施し、合わせて部隊配備も進められて同年7月29日に最初の飛行隊EC1/3が初期作戦能力到達を発表した。しかし、この時点ではまだ6機しか配備されておらず、EC1/3が機数を完全に揃えたのは1994年3月31日だった。

なお、ミラージュ2000Dは核攻撃能力が排除されたことから輸出も可能となり、ミラージュ2000Sの名称で潜在的な顧客への説明が行われたが、興味を示した国はなかった。

性能諸元 編集

  • 全幅:9.13 m
  • 全長:14.55 m
  • 全高:5.15 m
  • 主翼面積:41.0 m2
  • 空虚重量:7,600 kg
  • 最大離陸重量:17,000 kg
  • 最大兵装搭載量:6,000 kg
  • スネクマM53-P2ターボファン・エンジン×1
  • エンジン推力:64.3 kN / 95.1 kN (A/B使用時)
  • 最大速度:マッハ2.2
  • 低空侵攻速度:600 kt / 60 m
  • 戦闘行動半径:500 nm(Lo-Lo-Lo)
  • 乗員:2名
  • 固定武装:なし

派生型 編集

ミラージュ2000N
戦略爆撃機型
ミラージュ2000N-K1
ASMP携行専用機型。装備可能な兵器はASMP巡航核ミサイルと自衛用のマジック2 AAMのみ。後に全機K2仕様に改修。
ミラージュ2000N-K2
複合任務機型。レーザー誘導爆弾AS.30L空対地ミサイルなどの精密誘導兵器の運用能力を付与。
ミラージュ2000N-K2-4C
ミラージュ2000N-K2の自己防御器材統合化型
ミラージュ2000D
戦闘爆撃機型
ミラージュ2000S
ミラージュ2000Dの輸出型。発注する顧客がいなかったため、実機は製造されず。

参考資料 編集

  • 青木謙知『Jwings戦闘機年鑑 2005-2006』イカロス出版、2005年。ISBN 4871496325 
  • 浜田一穂「蜃気楼のごとく…ミラージュシリーズの変貌と変容」『航空ファン』、文林堂、2002年12月、84-89頁。 

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ASMPが配備されるまでは暫定的にAN-52核爆弾を搭載。

出典 編集

  1. ^ 航空ファン 2018年 9月号

関連項目 編集

同種の戦闘爆撃機

外部リンク 編集