リボヌクレアーゼインヒビター

リボヌクレアーゼインヒビター (RI) は450残基、49kDa、等電点4.7のタンパク質である。ロイシンリッチリピートを持ち、特定のリボヌクレアーゼと非常に強固な複合体を形成する。細胞内に0.1%程存在する主要細胞内タンパクであり、RNAの寿命の制御に重要な役割を果たす[2]

リボヌクレアーゼインヒビター
豚リボヌクレアーゼインヒビター上面図。馬蹄形をしている[1]。外層はαヘリックス、内層は平行型βシートで構成されている。内径は約2.1nm、外径は6.7nm。
識別子
略号 LRR_1
Pfam PF00560
Pfam clan CL0022
InterPro IPR003590
SMART SM00368
SCOP 1bnh
SUPERFAMILY 1bnh
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
PDB 1a4y​, 1dfj​, 1z7x​, 2bex​, 2bnh​, 2q4g
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典型的なタンパクには約1.7%のシステインが含まれるが、RIでは6.5%に及ぶため酸化ストレスに敏感である。また、21.5%のロイシンも含み(典型的には9%)、他の疎水性残基、特にバリンイソロイシンメチオニンチロシンフェニルアラニンの含有量は低い。

構造 編集

典型的なロイシンリッチリピートタンパクであり、骨格に沿ったαヘリックスβシートの繰り返しで構成されている。これらの二次構造は曲がった右巻き螺旋を形成し、全体として馬蹄形になる。αヘリックスとβシートは平行で、それぞれ馬蹄形の内側と外側の壁を構成している。αヘリックスからβシートに移行する部分にはアスパラギンが存在し、ターンを安定化する。α、βは28、29残基ごとに繰り返され、遺伝子構造に対応した57残基のユニットを形成する(各エクソンは57残基をコードする)。

リボヌクレアーゼとの結合 編集

RIとリボヌクレアーゼの親和性は、おそらく他のどんなタンパク質間相互作用よりも強い。RI-RNase A複合体の解離定数は生理条件下で約20fMであり、RI-アンギオゲニン複合体ではそれより小さい(<1fM)。RIは配列同一性の低い様々なRNasesと結合することができる。構造の研究から、RNaseはRIのC末端と会合し、ちょうど"瓶の栓"のようになっていることが示された。この相互作用は静電的なもので、RNaseの表面積の大部分を埋めている (>25 nm2) 。

リボヌクレアーゼは特に癌細胞に対して毒性、増殖抑制効果を示すため、癌治療薬としての研究が続けられている。だが、RIはどこにでも存在し、RIと結合したリボヌクレアーゼは効果がないことから、これを回避する手段が不可欠となる。ヒョウガエルから得られたRNaseの一種ランピルナーゼ英語版(オンコナーゼ)はヒトRIに認識されないようであり、癌治療薬として調査されている[3]。ヒトRNaseを組換え、RNase活性を残しつつもRIに認識されないようにする研究は現在進行中である。

画像 編集

出典 編集

  1. ^ PDB: 2BNH​; Kobe B, Deisenhofer J (1993). “Crystal structure of porcine ribonuclease inhibitor, a protein with leucine-rich repeats”. Nature 366 (6457): 751–6. doi:10.1038/366751a0. PMID 8264799. 
  2. ^ Shapiro R (2001). “Cytoplasmic ribonuclease inhibitor”. Meth. Enzymol. 341: 611–28. doi:10.1016/S0076-6879(01)41180-3. PMID 11582809. 
  3. ^ Rutkoski T, Raines R (2008), “Evasion of Ribonuclease Inhibitor as a Determinant of Ribonuclease Cytotoxicity”, Current pharmaceutical biotechnology 9 (3): 185-199, ISSN 1389-2010, PMC 2818677, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2818677 

参考文献 編集