交響曲ホ長調 (シューベルト)

フランツ・シューベルトの交響曲

交響曲ホ長調(こうきょうきょくホちょうちょう)D729は、フランツ・シューベルトが作曲した未完成の交響曲群の中の一曲[1][2]。シューベルトの交響曲第7番と呼ばれる作品の一つ[3]である。

経緯 編集

シューベルトは、『未完成』として有名なD 759以外にも、交響曲の作曲に着手しては放棄するということを頻繁に行っていたが、旧シューベルト全集英語版ではホ長調D 729に関しては完成扱いになっていた。完成した作品とみなされた理由は、第4楽章まで終止線が引かれ、小節数まで確定した未完のフルスコアという、シューベルトの未完成作品では珍しい形で放棄されていたからである。旧全集の編纂者は、ピアノ・スケッチはすでに書き終わり、あとはフルスコアに取りかかるまでになっていたと判断し、完成扱いで「交響曲第7番」の番号を与えた。しかし、新シューベルト全集英語版の編纂者は「ほとんど何も書いていないフルスコアを『完成』と判断するのは早計」と判断したため、番号は与えられていない。これが「グムンデン=ガスタイン交響曲」であろうという見解も初期の研究時には見られたが、現在は撤回されている。後世の研究者にとっては、シューベルトの作曲語法を知るうえで貴重な存在になっている。

自筆譜は王立音楽大学所蔵である[4]

補筆完成版 編集

上述のような事情から、「スコアの空白を埋める」という形で後世に補筆完成版が作られた。オーケストレーションが施されたものでは、フェリックス・ワインガルトナーによるもの[5]ブライアン・ニューボールド英語版[6]によるものの2種類が存在する。ワインガルトナー版はシューベルトのスコアの音符を大胆に変更しているのに対して、ニューボールドはスコア通りに復元したと主張している。例えば「第4楽章の結末が唐突」として書き変えたワインガルトナーに対し、ニューボールドは無変更で処理している。この他、ジョン・フランシス・バーネット英語版によるピアノ独奏のための版もある[7]

楽章構成 編集

ワインガルトナー版 編集

  1. Adagio ma non troppo – Allegro
  2. Andante
  3. Scherzo: Allegro deciso
  4. Allegro vivace

ニューボールド版 編集

  1. Adagio – Allegro
  2. Andante
  3. Scherzo: Allegro
  4. Allegro giusto


第1楽章冒頭

 

ディスコグラフィー 編集

ワインガルトナー版

ニューボールド版

関連文献 編集

脚注 編集

  1. ^ Music and Letters, Volume 74, Issue 3, August 1993, Pages 482–483
  2. ^ Schubert Franz, Symphony No. 7 in E (D729): full score, ed. Brian Newbould”. academic.oup.com. academic.oup.com. 2021年4月23日閲覧。
  3. ^ But there is another Schubert unfinished symphony - No. 7 in E・・・”. www.nytimes.com. www.nytimes.com. 2021年4月23日閲覧。
  4. ^ MS 586 Schubert Unfinished Symphony”. archive.org. archive.org. 2021年4月22日閲覧。
  5. ^ SCHUBERT, F.: Symphony No. 7 (arr. F. Weingartner from 1821 sketches) (Vienna State Opera Orchestra, Litschauer) (1952)”. www.naxos.com. www.naxos.com. 2021年4月21日閲覧。
  6. ^ Schubert: Symphony no 7 (D729) in E major”. www.bbc.co.uk. www.bbc.co.uk. 2021年4月21日閲覧。
  7. ^ Symphony_No.7,_D.729”. imslp.org. imslp.org. 2021年4月22日閲覧。

外部リンク 編集