放浪記 (戯曲)

林芙美子原作、菊田一夫作の戯曲

放浪記』(ほうろうき)は、1961年10月20日芸術座で初演された舞台劇。原作は林芙美子放浪記』。

放浪記
初演パンフレット(1961年当時)
脚本林芙美子(原作)
菊田一夫
登場人物林芙美子ほか
初演日1961年10月20日 (1961-10-20)
初演場所芸術座
オリジナル言語日本語

概要 編集

初演時の脚本演出菊田一夫音楽古関裕而。主演は森光子。初演の森光子に対して、文化庁より同年度(第16回)の芸術祭賞(演劇部門)が授与された。菊田の死後、1981年から1996年までは三木のり平が菊田の脚本を潤色し、演出も手掛けていた(のり平他界後も、ポスターでは潤色・演出を務めていることになっていた)。

主演の森光子は初演から死去まで変更されなかった。1990年には公演回数1000回を、2009年5月9日(森光子の89歳の誕生日)には『放浪記』上演2000回を達成した。2012年11月10日に森が死去したため、森主演の本作は2009年5月29日の2017回目の公演が最後となった。

森演じる林芙美子が喜びのあまりでんぐり返しをするシーンは有名であり、「森光子といえばでんぐり返し」「放浪記と言えばでんぐり返し」と言われ、劇中最大の見所とされていた。森はかつて「『でんぐり返し』が出来なくなったら私は女優を辞める」と発言していたが、年齢的な問題などから2008年からの公演ではそのシーンはやめ、代わりに万歳三唱をすることになった。

2015年仲間由紀恵の主演で『放浪記』が舞台で復活した。仲間は初演の主演女優である森とは2005年のNHKドラマ『ハルとナツ 届かなかった手紙』で共演して以来親交があり、2014年5月にはフジテレビドラマ『森光子を生きた女』で森光子役を務め、『放浪記』の上演までの過程を演じている[1]

なお、1962年に小説と舞台版を原作に、東宝創立30周年記念作品として映画化された。映画の詳細は放浪記#1962年版を参照。

上演記録 編集

1961年 - 1962年(初演)
芸術座(1961年10月20日 - 12月8日)、名鉄ホール(1962年1月2日 - 15日)、梅田コマ劇場(2月2日 - 2月25日)の後に芸術座に凱旋(3月1日 - 5月27日)。全296回公演。
1971年
芸術座(1971年3月2日 - 5月27日)。全120回公演。
1974年
芸術座(1974年3月5日 - 4月28日)。全81回公演。初演の脚本・演出担当の菊田一夫が死去してから初めての再演。
1981年
芸術座(1981年8月25日 - 10月28日)。全90回公演。この期間に初演から500回公演達成。三木のり平が潤色を担当。
1983年
芸術座(1983年9月2日 - 12月26日)。全159回公演。
1986年
中日劇場(1986年6月2日 - 6月28日)。全36回公演。
1987年 - 1988年
芸術座(1987年11月1日 - 12月27日、1988年1月2日 - 2月28日)。全145回公演。
1989年
梅田コマ劇場(1989年4月2日 - 30日)。全40回公演
1990年
芸術座(1990年9月1日 - 12月27日)。全149回公演。この期間に初演から1000回公演を達成。
1994年
初の全国ツアー(北海道・東北・西日本、1994年6月2日 - 10月29日)を開催。その後に芸術座(11月3日 - 12月28日)に凱旋。全132回公演。
1996年
芸術座(1986年9月1日 - 12月28日)。全145回公演。
1999年
芸術座(1999年9月1日 - 12月28日)。全119回公演。この期間に初演から1500回公演を達成。
2002年
芸術座(2002年3月3日 - 4月30日)。全60回公演。
2003年 - 2004年
博多座(2003年8月29日 - 9月25日)、芸術座(11月1日 - 12月28日)、梅田コマ劇場(2004年1月29日 - 2月25日)、中日劇場(3月2日 - 3月29日)。全159回公演。
2005年
芸術座(2005年3月4日 - 3月27日)、博多座(4月2日 - 4月28日)、富山市芸術文化ホール(5月2日 - 5月4日)。全64回公演。
2006年
帝国劇場(2006年9月1日 - 9月28日)、中日劇場(10月4日 - 10月31日)。芸術座の閉館に伴い、帝国劇場での公演となった。全63回公演。
2008年
シアタークリエ(2008年1月4日 - 3月30日)、富山市芸術文化ホール(4月24日 - 4月27日)、博多座(5月2日 - 5月28日)、フェスティバルホール(10月23日 - 11月4日)、中日劇場(11月9日 - 12月25日)。全137回公演。
この年の公演からでんぐり返しが万歳三唱に変更となった。
2009年
帝国劇場(2009年5月5日 - 5月29日)。全22回公演。この期間に初演から2000回公演を達成。
翌年の5月・6月公演も予定されていたが、森の体調不良により公演が中止となった。その後、2012年11月10日に森が死去したことにより、初演から2017回が通算上演となる。
2015年 - 2016年
シアタークリエ(2015年10月14日 - 11月10日)。新歌舞伎座(11月 - 12月)、中日劇場(12月)、博多座(2016年1月)。
この公演から、林芙美子役が仲間由紀恵に交代。
演出も変更が入り、上演時間が20分短縮され、主人公のナレーションも3ヵ所追加予定[2]
でんぐり返しは側転1回のあと、横に寝そべって3回転に変更。演出家の北村文典と仲間が話し合って決まった[3]

主なキャスト 編集

  1961年 - 1962年 1971年 1974年 1981年 1983年 1986年 1987年 - 1988年 1989年
林芙美子 森光子
日夏京子 浜木綿子(芸術座)
原知佐子(名鉄)
加茂さくら(梅田コマ)
加茂さくら 浜木綿子 奈良岡朋子 奈良岡朋子
いしだあゆみ
奈良岡朋子 奈良岡朋子[* 1]
南風洋子(芸術座)[* 2]
奈良岡朋子
悠起 八千草薫(芸術座)
柳川慶子(名鉄・梅田コマ)
北原真記(芸術座)[* 3]
山本陽子
三林京子
松原智恵子 山口いずみ 岸本加世子
大場久美子
大場久美子
白坂五郎 益田喜頓 下元勉 米倉斉加年
菊田一夫 小鹿敦  小鹿番[* 4]
福地貢 市川段四郎[* 5]
中村又五郎(芸術座) [* 3]
戸浦六宏 井上孝雄
安岡信雄 中村芝鶴(芸術座)
和気成一(名鉄)
安達国晴(梅田コマ)
宮口精二 宮川洋一 内山恵司
山本學(芸術座)[* 2]
山本學
香取恭助 林与一 浜田東一郎 真家宏満 上条慎吾 櫻井克明 林与一
きし 赤岡都 三戸部スエ 清水郁子(中日)
大塚道子(芸術座)
大塚道子
  1990年 1994年 1996年 1999年 2002年 2003年 - 2004年 2005年 2006年
林芙美子 森光子
日夏京子 南風洋子
大空真弓
奈良岡朋子 奈良岡朋子
南風洋子
有馬稲子
奈良岡朋子 樫山文枝(博多座・芸術座)
黒柳徹子(芸術座)
奈良岡朋子(梅田コマ・中日)
池内淳子 奈良岡朋子
悠起 大場久美子 藤谷美紀 有森也実 藤谷美紀 有森也実(博多座・芸術座)
藤谷美紀(梅田コマ・中日)
有森也実
白坂五郎 米倉斉加年
菊田一夫 小鹿番  斎藤晴彦
福地貢 井上孝雄 井上孝雄(北海道・東北)
松山政路(西日本・芸術座)[* 6]
寺田農 大出俊
安岡信雄 山本學
香取恭助 林与一 今井耕二(北海道・東北)
鷹西雅裕(西日本・芸術座)
中島久之
きし 大塚道子
  2008年 2009年 2015年 - 2016年
林芙美子 森光子 仲間由紀恵
日夏京子 黒柳徹子(クリエ)
高畑淳子(クリエ)
山本陽子(クリエ以外)
山本陽子 若村麻由美
悠起 有森也実 福田沙紀
白坂五郎 米倉斉加年 羽場裕一
菊田一夫 斎藤晴彦 原康義
福地貢 大出俊 窪塚俊介
安岡信雄 山本學 村田雄浩
香取恭助 中島久之 佐野圭亮
きし 大塚道子 立石涼子
  1. ^ 1998年の芸術座公演は出演せず。
  2. ^ a b 1988年の芸術座公演のみ出演。
  3. ^ a b 凱旋公演のみの出演。
  4. ^ 小鹿敦から芸名を改名。
  5. ^ 凱旋公演には出演せず。
  6. ^ 西日本公演の直前に井上が急逝したため。

上演中止 編集

予定されていた場所・日程
  • シアタークリエ(2010年5月5日 - 6月27日)
    医師から森の体調を考慮し、公演を中止することが、東宝および所属事務所から発表された[4][5]
予定されていたキャスト
  • 林芙美子:森光子
  • 日夏京子:山本陽子
  • 白坂五郎:米倉斉加年
  • 悠起:有森也実
  • 菊田一夫:斉藤晴彦
  • 福地貢:大出俊
  • 安岡信雄:原康義
  • 伊達晴彦:山路和弘
  • 芙美子の母:大塚道子
  • 香取恭助:中島久之

脚注 編集

  1. ^ “仲間由紀恵主演で舞台『放浪記』が復活へ”. シアターガイド. (2014年10月10日). https://web.archive.org/web/20141012021203/http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2014/10/10_02.php 
  2. ^ 仲間由紀恵、放浪記で演出家ムチャぶり「でんぐり返し」4回転半!”. スポーツ報知 (2015年8月17日). 2015年8月17日閲覧。
  3. ^ 仲間由紀恵版「放浪記」開幕 でんぐり返しは側転に 見事成功”. スポニチ (2015年10月14日). 2015年10月14日閲覧。
  4. ^ 公演中止のお知らせとお詫び - 東宝公式サイト(2010年2月26日閲覧)
  5. ^ 森光子からのメッセージ - 東宝公式サイト(PDFファイル

外部リンク 編集