(あさぐれ みつふみ、1959年3月21日 -)は日本作家推理作家SF作家兵庫県西宮市生まれ。ペンネームは「早起きは三文の徳」から。日本推理作家協会本格ミステリ作家クラブ、各会員。

概要 編集

関西大学経済学部(国際金融論専攻)卒業後[1]、コピーライターを経て[1]森下一仁の小説教室「空想小説ワークショップ」で学び、メタフィクション的な異世界ファンタジー『ダブ(エ)ストン街道』でメフィスト賞を受賞してデビュー[2]。コピーライター時代も複数回の広告賞受賞歴があるが[1]、デビュー後まもなく廃業した。

以降はミステリ系の小説を主に執筆。2003年『石の中の蜘蛛』で、第56回日本推理作家協会賞を受賞[2]。奇想小説を愛しているため、授賞式の挨拶では「これからも、バーセルミスラデックのような小説を書いていきたいと思います」と語り、審査員たちを唖然とさせた。なお、その挨拶にも登場した奇想作家ジョン・スラデックについて「体育会系作家である」という奇説を唱えている。

『カニスの血を嗣ぐ』[3]で「嗅覚」、『左眼を忘れた男』で「視覚」、『石の中の蜘蛛』で「聴覚」、『針』で「皮膚感覚」、『錆びたブルー』では「第六感覚」、『ポルトガルの四月』[4]では「味覚」と、「五感」をテーマにした奇想小説を連続して刊行している。またシリーズ総括編として、「ある事件を5つの語感でながめる」という作品を構想中[5]だったが、2010年『五感集』として刊行。

その他にも、エルサレムという街自身を主人公にした『似非エルサレム記』や、奇想小説ばかりを集めた短編集『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』のような、前衛的な小説も発表[2]。その一方で、作風としては比較的おとなしめの一般的なミステリ、ライトノベル、ファンタジー、自伝的普通小説等も執筆している[2]

2006年には青春ファンタジー『10センチの空』が中学校向け国語の教科書に採用された。

趣味は釣りで、釣りについての著書も刊行している。また、自身も生徒だった空想小説ワークショップの講師もつとめる。

作品リスト 編集

単著 編集

ラストホープシリーズ 編集

  • ラストホープ(2004年6月 創元推理文庫
  • 再びラストホープ パリと悪党たち(2010年8月 創元推理文庫)

刑事課・亜坂誠 事件ファイルシリーズ 編集

  • 百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001(2015年12月 集英社文庫
  • 無敵犯 刑事課・亜坂誠 事件ファイル101(2016年12月 集英社文庫)

セブンシリーズ 編集

  • セブン 秋葉原から消えた少女(2016年12月 光文社文庫
  • セブン opus2 古い街の密かな死(2017年1月 光文社文庫)

困った死体シリーズ 編集

  • 困った死体(2018年12月 集英社文庫)
  • 困った死体は瞑らない(2020年3月 集英社文庫)

その他の小説 編集

  • ダブ(エ)ストン街道(1998年8月 講談社 / 2003年10月 講談社文庫
  • カニスの血を嗣ぐ(1999年8月 講談社ノベルス
  • 夜聖の少年(2000年12月 徳間デュアル文庫
  • 左眼を忘れた男 I wanna see you(2002年3月 講談社ノベルス)
  • 石の中の蜘蛛(2002年6月 集英社 / 2005年3月 集英社文庫)
  • 殺しも鯖もMで始まる(2002年12月 講談社ノベルス)
  • 似非エルサレム記(2003年7月 集英社)
  • 10センチの空(2003年12月 徳間書店 / 2010年8月 徳間文庫
  • 針(2004年1月 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
  • 嘘猫(2004年9月 光文社文庫)
  • 悪夢はダブルでやってくる(2005年1月 小学館
  • 実験小説ぬ 傑作短編集(2005年7月 光文社文庫)
  • 錆びたブルー(2006年4月 角川春樹事務所
  • ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー(2006年10月 講談社ノベルス)
  • 異人類白書(2007年8月 ポプラ社
  • 夜を買いましょう(2007年10月 集英社文庫)
  • クリスマスにさようなら(2007年11月 徳間書店 / 2010年12月 徳間文庫)
  • 広告放浪記(2008年3月 ポプラ社)
  • ぽんこつ喜劇(2008年12月 光文社
  • ポルトガルの四月(2009年2月 ハヤカワ・ミステリワールド
  • 五感集(2010年8月 講談社)
  • やや野球ども(2011年12月 角川書店
  • ロック、そして銃弾 私立警官・音場良(2017年6月 徳間文庫)
  • 誘拐犯はカラスが知っている 天才動物行動学者 白井旗男(2018年2月 新潮文庫
  • 我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を(2022年5月 河出文庫

エッセイ 編集

  • ペートリ・ハイル! あるいは妻を騙して釣りに行く方法(2006年6月 牧野出版
  • おつまミステリー(2019年6月 柏書房
  • 七転びなのに八起きできるわけ(2021年9月 柏書房)

アンソロジー 編集

「」内が浅暮三文の作品

異形コレクション 編集

  • 玩具館(2001年9月 光文社文庫)「喇叭」
  • マスカレード(2002年1月 光文社文庫)「カヴス・カヴス」
  • 恐怖症(2002年5月 光文社文庫)「遠い」
  • 酒の夜語り(2002年12月 光文社文庫)「小さな三つの言葉」
  • 夏のグランドホテル(2003年6月 光文社文庫)「お薬師様」
  • 教室(2003年9月 光文社文庫)「帽子の男」
  • アジアン怪綺(2003年12月 光文社文庫)「雨」
  • 蒐集家(2004年8月 光文社文庫)「參」
  • 闇電話(2006年5月 光文社文庫)「よくある出来事」
  • ひとにぎりの異形(2007年12月 光文社文庫)「渋谷ニ馬鹿ヲ見ル之詩」
  • 喜劇綺劇(2006年5月 光文社文庫)「エレファント・ジョーク」
  • 物語のルミナリエ(2004年8月 光文社文庫)「夏が終わる星」

その他 編集

  • 黄昏ホテル(2004年11月 小学館)「インヴィテイション」
  • 本格ミステリ06 2006年本格短編ベスト・セレクション(2006年5月 講談社ノベルス)「J・サーバーを読んでいた男」
    • 【改題】珍しい物語のつくり方 本格短編ベスト・セレクション(2010年1月 講談社文庫)
  • 午前零時(2007年6月 新潮社)「悪魔の背中」
    • 【改題】午前零時 P.S.昨日の私へ(2009年11月 新潮文庫)
  • ハナシをノベル!! 花見の巻(2007年11月 講談社)「動物記」
  • 逆想コンチェルト 奏の1 イラスト先行・競作アンソロジー Inspired by Yoshimi Moriyama's Illustrations(2010年6月 徳間書店)「新宝島」
  • NOVA 3 書き下ろし日本SFコレクション(2010年12月 河出文庫)「ギリシア小文字の誕生」

脚注 編集

  1. ^ a b c 嗜好と文化「私のポリシー」:第86回 浅暮三文さん「自分のしたいことは地べたを這うようにやれ」 - 毎日新聞”. mainichi.jp. 2022年4月30日閲覧。
  2. ^ a b c d 浅暮三文 | 著者プロフィール”. www.shinchosha.co.jp. 新潮社. 2022年4月30日閲覧。
  3. ^ 執筆したきっかけはパトリック・ジュースキントの『香水』だという。『SFマガジン』2009年4月号、P.220
  4. ^ 題名は『タモリ倶楽部』の空耳アワールイ・アームストロングの空耳から(『SFマガジン』2009年4月号、P.219)。インスピレーションを受け、筆が進んだということで後日感謝状を同番組に送った(空耳アワード2010後編より)。
  5. ^ 『SFマガジン』2009年4月号、P.221

関連項目 編集

外部リンク 編集