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ノルレボは薬価未収載、プラノバールは収載品ではあるが、緊急避妊は[[医療保険]]が効かない自由診療となる。
 
=== 緊急避妊薬(ピル)の薬局販売未承認及び経口妊娠中絶薬未承認問題 ===
日本では妊娠を回避する緊急妊娠ピル(アフターピル)「[[ノルレボ]]錠」が医師の診断なしには処方されずかつ約15000円と高価であるため、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は、緊急避妊薬(アフターピル)にアクセスする権利がある」とする世界保健機関の勧告に逆行している<ref>{{Cite web |url=https://style.nikkei.com/article/DGXKZO50604600U9A001C1TCC000/ |title=緊急避妊薬、入手の壁なお高く ネット処方解禁でも |publisher=日経電子版ヘルスUP |date=2019-10-7 |accessdate=2020-5-2}}</ref>ところであり、この妊娠回避機会の喪失も影響している。なお2019年にジェネリック薬「レボノルゲストレル錠」が適用となり約9000円で処方可能となった<ref>{{Cite web |url=https://nagoya-yamahara-lc.jp/column/p247/ |title=アフターピルが安くなります |publisher=レディースクリニック山原|date=2019-3-21 |accessdate=2020-6-11}}</ref>。
 
アフターピル・低用量ピルの処方及び妊娠に関することは保険適用外で自費負担となり、一部の医療機関での本人確認で用いられる以外には健康保険証は必要ない。また基本的には問診のみで処方してもらえ、内診(股からの診察)や検査はない<ref>{{Cite web |url=https://byouin-sagashi.com/afterpill-prescription_s_18928/|title=病院さがしガイド 病院でアフターピルの処方をうける流れは?種類と、かかる費用を解説! |publisher=エンパワーヘルスケア株式会社|accessdate=2021-2-10}}</ref>。ただし性暴力被害の場合のアフターピル処方には公費負担がある<ref>{{cite web|url=https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/shien/higai/support/josei.html|title=医療費等の助成・病院の紹介・カウンセリング|publisher=警視庁|accessdate=2021-2-10}}</ref>。
 
[[厚生労働省]]の[[処方箋医薬品]]から要指導・[[一般用医薬品]]への転用に関する評価検討会議でも、経口妊娠中絶薬の市販化について審議されたが、アメリカなどの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較して、参考人として招聘された国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副理事長 矢野哲と公益社団法人日本産婦人科医会常務理事 宮崎亮一郎より性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解などを懸念することが述べられ、[[日本産科婦人科学会]]も反対理由として表明している<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176856.html|title=2017年7月26日 第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議 |accessdate=2020-05-02|publisher=厚生労働省}}</ref>ことが不許可の背景となっている。
 
宮崎参考人は前述の会議で薬剤師の妻が「ピルの話になると全くチンプンカンプン」であるため薬剤師は知識不十分であるとした発言をしている。不許可に対しドラッグストアの業界団体や一部薬剤師らが反発し、一部の産婦人科医からも、緊急避妊薬は早ければ早いほど効果があることを述べ、休日で病院が開いていない際に女性を守る視点が欠けているとの意見もあった。薬剤師からは「医師と薬剤師の関係性」について対等ではないパターナリズムの文脈があると指摘する声もある<ref>{{Cite web |url=https://blogos.com/article/490633/|title=緊急避妊薬の規制緩和について(全国の薬剤師の先生方、そして市民の皆さまへ)|author=高橋秀和 |accessdate=2020-10-14|publisher=BLOGOS}}</ref>。
 
とは言え、検討会議の場で薬剤師会もまた緊急避妊薬のOTC化について現状制度ではスイッチ後、原則3年で第1類医薬品になるとして反対している<ref>{{cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/145947|title=緊急避妊薬の薬局での販売に日本薬剤師会はなぜ慎重姿勢か|publisher=DIAMOND online|date=2017-10-17 |accessdate=2020-10-20}}</ref>。
 
実際に販売する際の対応に不安を抱く薬剤師のために、京都大学SPH薬局情報グループは、薬剤師向けのアフターピルの学習動画を2020年11月6日から公開している。理解力に関するアンケートも実施している。「薬剤師なんかに任せたら性暴力も見逃してただ売るだけになる。」との産婦人科医の意見への反発をきっかけにして京都大学の特定講師の薬剤師と博士課程在籍の医師が作成した<ref>{{citeweb|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/afterpill-douga|title=緊急避妊薬の販売、気をつけることは? 薬剤師向けの動画が公開|publisher=BUZZFEED JAPAN|date=2020年11月12日|accessdate=2021-2-24}}</ref>。
 
ところで、審議委員の指摘する「欧米では確かに(緊急避妊薬)がOTC化されているようです。欧米では20代の90%以上の方が経口避妊薬を使用している状況にあり、避妊薬に慣れているのです。」と引き合いに出して緊急避妊薬が否決されたが、日本において経口避妊薬が普及しないその大きな要因は経口避妊薬ピルの認可には日本は世界でももっとも遅いといえる44年の年月を要した<ref>{{cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/94b80afa1e03653dd2568cb9747503aedc5e43d4?page=1|title=昔の記事で発覚…低用量ピル承認前「男性たちが恐れたこと」の衝撃|author=福田和子|publisher=現代ビシネス|date=2020-09-29|accessdate=2020-10-08}}</ref>こともピルの常用化につながっていない現状を生み出している。初認の遅れに対し、当時の国会議員円より子が質問すると厚労省は欧米で副作用が小さいことが、欧米の女性と日本の女性はからだが違うため結びつかないとの趣旨を答弁をしている<ref>{{cite web|url=https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020081700013.html?page=2|title=新型コロナ危機下の「全国一斉休校」で10代の妊娠が増えた!|author=円より子|date-2020-8-19|accessdate=2021-1-10}}</ref>。
 
また臨床試験はバイアグラはしなかったことを引き合いにピル承認について尋ねると、担当部局に伝えるだけ回答されている<ref>{{cite web|url=https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=114514324X00119990203&spkNum=27&current=5|title=第145回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第1号 平成11年2月3日027 円より子|accessdate=2021-01-10}}</ref>。
 
なお、承認時に婦人科に行きピルを処方する際に性病の検査をしたほうがいいとの議論があり、その項目は女性に必要ならば男性にも必要で、女性に失礼だとの[[黒川清]]委員の見解で削除された。当時の審議会の構成には女性は2名しか参加していなかったことも述べられている<ref>{{cite web|url=https://kiyoshikurokawa.com/igakuseinoobenkyou_2-3|title=「医学生のお勉強」 Chapter2:避妊、中絶、ジェンダー・イッシュー(3)|author=黒川清|accessdate=2020-12-23}}</ref>。
 
平成11年2月衆議院予算特別委員会での国会審議において、末松義規議員よりバイアグラのスピード承認に対しピル承認が9年以上も審議にかかることについて、中央薬事審議会が社会的な価値観を持ち込んでいる疑問が呈され、同議員は「どうも何か大きな思惑があったのじゃないかと思わざるを得ない」と意見している<ref>{{cite web|url=https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=114505270X00219990218&spkNum=138&current=25|title=第145回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 平成11年2月18日139.141末松義規|accessdate=2020-12-29}}</ref>。
 
緊急避妊薬に関するパブリックコメントは「今は時期尚早で否ですという形でパブコメを行うということ」という前提で行われ、<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176856.html|title=2017年7月26日 第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議 |accessdate=2020-05-02|publisher=厚生労働省}}</ref>9月11日から1ヵ月間受け付けられ、全部で348件。賛成が320件、反対はわずか28件だったにも関わらず、国民の意思が反映されない決着となった<ref>{{cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/149842?page=1|title=緊急避妊薬のOTC化、圧倒的世論を受けてもやはり不可|publisher=週刊ダイヤモンド編集部|date=2017-11-16|accessdate=2020-08-02}}</ref>。
 
スイッチOTC検討会の委員、鈴木邦彦・日本医師会常任理事は、望まない妊娠を減らしたいという考え方そのものに反対ではないとしつつも、審議会の議論について、医師の関与の必要性、緊急避妊薬への国民の理解度、販売体制の問題が示され、とてもOTCにできないという結論であり、反対意見ばかりで賛成は誰もいなかったとの見解を示している<ref>{{cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/145747|title=緊急避妊薬のスイッチOTC化に日本医師会が反対する理由|publisher=週刊ダイヤモンド編集部|date=2017-10-16|accessdate=2020-08-04}}</ref>。
 
ちなみに医師向けサイトで行われた現場の産婦人科医師のアンケート(n=124)では47%が反対よりの意見を表明しているが、27%がどちらでもないことを表明している。また60代男性医師は、基本的には個人の選択に任せるべき、妊娠反応薬の時も産婦人科医会は反対していたことを述べている<ref>{{cite web|url=https://ishicome.medpeer.jp/entry/1136|title=緊急避妊のOTC(一般医薬品)化についてどう思われますか?産婦人科120名に聞きました|publisher=イシコメ|date=2018-02-13|accessdate=2020-08-02}}</ref>。
 
産婦人科医の有志9人による5月の産婦人科医に緊急アンケート(n=559)では、6割以上がアフターピルの市販化とオンライン処方のいずれも肯定している。ただし主催者の医師は緊急避妊薬のオンライン診療が解禁になった場合も性暴力被害者に限定されたり、オンライン診療を行っている産婦人科医を探すならば今よりアクセスしやすいかと疑問を呈している<ref>{{cite web|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ec-online-otc|title=アフターピル(緊急避妊薬)のオンライン処方 産婦人科医の6割超が「望ましい」|publisher=Buzzfeednews|date=2019-6-6|accessdate=2020-08-02}}</ref>。
 
2019年に行われたオンライン診療指針見直し検討会では、ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子構成員が、産婦人科受診に抵抗を感じる女性が多いため、その受診に精神的な負担のあるときもオンライン診療を可能とすべきと述べ、諸外国では薬局で緊急避妊薬を購入できるところもある補足した。それに対し、「『精神的負担のあるとき』との表現はあまりに広すぎだと牽制し、諸外国と日本の文化が異なることを掲げ、対象が無制限に広がってはいけないとの指摘も多数でた(今村聡構成員:日本医師会副会長、黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長・日本オンライン診療研究会会長ら)<ref>{{cite web|url=https://gemmed.ghc-j.com/?p=26695|title=オンライン診療での緊急避妊薬処方、産科医へのアクセス困難な場合に限定―オンライン診療指針見直し検討会|publisher=GLOBAL HEALTH CONSULTING|date=2019-06-03|accessdate=2020-08-04}}</ref>。
 
傍聴者からは検討委員のひとりで日本医師会副会長の今村聡氏は検討会で「(緊急避妊薬へのアクセスが)無制限に広がってしまうのも困るという思いがあります。」というWHO勧告に逆行する趣旨の発言に疑問を呈されている<ref>{{cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65430?page=4|title=女性の健康世界会議で大衝撃!23歳が「日本ヤバイ」と痛感した理由|publisher=現代ビジネス|author=福田和子|date=2019-06-23|accessdate=2020-08-04}}</ref>。
 
2020年10月、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は知識不足である女性が気軽に薬局で購入できる状況になることを憂慮し、まだ早いとの意見を述べている<ref>{{cite web|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ikai-afterpill|title=産婦人科医会「アフターピル、薬局で買えるようにするのはおかしい」 改めて反対意見を表明|publisher=Buzzfeed|author=岩永直子|date=2020年10月22日|accessdate=2020-10-28}}</ref>。
 
昔に比べ女性医師が増加しているが、産婦人科医会の執行理事40名中女性比率は4名に留まり、2018年に明らかになった医学部入試における女性差別問題により多くの女性が能力ではなく性別により医師になる機会すら与えられなかった<ref>{{cite web|url=https://dot.asahi.com/aera/2020031800021.html?page=1|title=東京医科大学の受験生差別に「違法」判決 あらゆる場の女性差別の警鐘に|publisher=AERA|author=渡辺豪|date=2020-3-20|accessdate=2020-12-23}}</ref>ことが会への見解に影響している可能性がある。
 
厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、委員16名中女性は3名であり<ref>{{cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000647007.pdf|title=「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」構成員|publisher=厚生労働省|accessdate=2020-10-08}}</ref>、審議の場では検討会委員12人のうち女性はただ1人だけであった<ref>{{cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20200731-00190980/|title=緊急避妊薬を手に入りづらくするのは、「若い女性への性教育が足りないから」!!!|publisher=yahoo news|author=小川たまか|accessdate=2020-10-08}}</ref>。
 
セルフメディケーションのスイッチOTC化の承認状況一覧では女性固有の問題である膣カンジダ症の承認に25年以上かかる一方、発毛剤では6年という短期間で承認されている<ref>{{cite web|url=https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/iryou/20200213/200213iryou01.pdf|title=内閣府 規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループ ヒアリング医療用医薬品から一般用医薬品への転用(スイッチOTC化)の促進|date=2020-02-13|accessdate=2020-10-08}}</ref><ref>{{cite web|url=https://diamond-rm.net/market/33576/3/|title=日本OTC医薬品協会 重点取り組みに「スイッチ・ラグの解消」を明記!|publisher=ダイヤモンド・チェーンストア|date=2019-05-29|accessdate=2020-10-08}}</ref>。
 
承認過程で激しいジェンダーバイアスがかかっている恐れがある。なお、[[ノルレボ]]錠は国内の第Ⅲ相臨床試験において、性交後72時間以内にノルレボを1回経口投与した結果、解析対象例63例のうち、妊娠例は1例で、妊娠阻止率は81.0%であった<ref name="ref3">ノルレボ錠1.5mgインタビューフォーム</ref>。
 
全ての妊娠が防げるわけではなく、性交後72時間を超えて本剤を服用した場合には63%であり、妊娠阻止率が減弱する傾向がみられた<ref name="ref7"> von Hertzen H, et al. Low dose mifepristone and two regimens of levonorgestrel for emergency contraception: a WHO multicentre randomised trial. Lancet. 2002;360:1803-10.</ref>。
 
なお、銅付加子宮内避妊器具IUDは避妊をしなかった性行為の後、5日以内に子宮内に挿入すると、緊急避妊の方法としてほぼ100%の効果があり、希望があれば長期的な避妊手段として入れたままにしておくことも可能である<ref>{{cite web|title=子宮内避妊器具(IUD)|url=https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AE%B6%E6%97%8F%E8%A8%88%E7%94%BB/%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E9%81%BF%E5%A6%8A%E5%99%A8%E5%85%B7-iud|publisher=MSDマニュアル家庭版|accessdate=2021-2-8}}</ref>。
 
アメリカでは2013年より年齢制限などなく誰でも処方箋なしで「プランB」と呼ばれる緊急避妊の購入が可能となった<ref>{{cite news|title=U.S. Drops Bid to Limit Sales of Morning-After Pill|url=https://www.nytimes.com/2013/06/11/us/in-reversal-obama-to-end-effort-to-restrict-morning-after-pill.html?emc=na&_r=0|newspaper=NY Times|accessdate=11 June 2013}}</ref>。
 
しかしジャーナル紙の調査では、アメリカ食品医薬品局FDAの決定にも関わらず、10代の若者の覆面調査では薬局で容易に緊急避妊薬を入手できたのは28%のみにとどまり、3%が氏名などの個人情報を確認されたと問題視されている。またDr. Ian Bishop医学博士はこの薬は中絶を引き起こさず排卵を遅らせる機能があるが、誤解が利用の議論を生んでいると指摘している<ref>{{cite news|title=Pharmacies still blocking U.S. teens looking for emergency contraception|url=https://www.reuters.com/article/us-health-teens-contraceptives-idUSKCN1N72DS|newspaper=HEALTHCARE & PHARMA|date=2018-11-03|accessdate=17 November 2020}}</ref>。
 
緊急避妊薬はイギリスでは2001年に処方箋なしで購入できる薬局薬として承認されているが、薬剤師との相談を要するため訓練を受けた薬剤師の不在や在庫不十分のため調査では5人に1人が薬を入手できなかった。法の要件ではないその場で飲むことや身分の証明を求められた事例もあった。このため一般販売用医薬品に切り替えるべきとの見解がある<ref>{{cite news|title=Emergency contraception from the pharmacy 20 years on: a mystery shopper study|url=https://srh.bmj.com/content/early/2020/07/26/bmjsrh-2020-200648|newspaper=BMAjournal|accessdate=17 November 2020}}</ref>。
 
オーストラリアでは薬剤師に緊急避妊を求める女性が購入前に、性的暴行または性感染症の症状があるかどうかを宣言するように求める問診に記述するように誤って指導されることが問題視されている。ニューサウスウェールズ州家族計画のメディカルディレクターであるデボラベイトソン博士はプライベートな質問が個室ではない場所で行われることで女性に恥をかかせ、購入を思いとどまらせる可能性を懸念し、また緊急避妊薬は「非常に安全な」薬であり、世界の一部の地域のスーパーマーケットや自動販売機でさえ調剤されたと付け加えている<ref>{{cite news|title=Some chemists wrongly telling women they must fill in form to access emergency contraception|url=https://www.theguardian.com/society/2020/apr/09/some-chemists-wrongly-telling-women-they-must-fill-in-form-to-access-emergency-contraception|newspaper=the guardian|accessdate=17 November 2020}}</ref>。
 
ドイツでは、有効成分レボノルゲストレルまたはウリプリスタル酢酸塩を含む独自の医薬品が、処方箋なしで緊急避妊薬として利用できる。既存の妊娠が疑われる場合は、活性物質ウリプリスタルアセテート(UPA)は禁忌としているが、発覚していないものを含めた既存の妊娠の場合でも1.5mgのレボノルゲストレルの単回投与は問題ではないとしている<ref>{{cite web|title=Non-prescription dispensing of emergency oral contraceptives: Recommendations from the German Federal Chamber of Pharmacists [Bundesapothekerkammer]|url=http://scielo.isciii.es/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S1885-642X2016000300012|webcite=Mi SciELO|accessdate=17 November 2020}}</ref>。
 
またアメリカでは19歳までに3分の2は性交を経験する。しかし性的暴行は、青年期の意図しない妊娠のリスクに関連する1つの要因でであり、発達障害やその他の障害を持つ若者は、同級生よりも性的虐待や暴行を経験するリスクがさらに高い可能性がある。また性的活動の低下ではなく、避妊の使用の改善が、過去10年間の米国の10代の若者の妊娠リスクの低下の最も重要な要因となっている。高水準の10代の出産に憂慮し、米国小児科学会は10代の妊娠を減らすための1つの公衆衛生戦略として定期的なカウンセリングを奨励し、EC処方箋を進める方針を持ち、ノルレボ錠(EC)の投与の前には使用前に身体検査や妊娠検査は必要ないとしている。またEC使用後3週間期間内に月経がない場合は、自宅または診療所での妊娠検査を推奨している<ref>{{cite web|url=https://pediatrics.aappublications.org/content/144/6/e20193149|title=rom the American Academy of PediatricsPolicy Statement Emergency Contraception|publisher=APP news&journals Gateway|date= December 2019|accessdate=2020-10-17}}</ref>。
 
一方で、日本では薬剤の転売や薬害などのリスクもあるとされ、「3週間後に確実に産婦人科医を受診するよう求める」「産婦人科専門医など、高度な専門知識をもつ医師のみに限定する」「1回分のみの処方とし、調剤薬局の薬剤師が内服の事実を確認する」などの厳格な要件を設定する方針でオンライン診療指針見直し検討会が行われた<ref>{{cite web|url=https://gemmed.ghc-j.com/?p=26216|title=オンライン診療での緊急避妊薬処方、現実的かつ厳格な要件設定に向けた議論を―オンライン診療指針見直し検討会|publisher=Gem Med|date=2019-05-02|accessdate=2020-10-17}}</ref>。
 
日本では緊急避妊薬の処方箋なしの薬局販売に反対する理由として「次も使えばいいや」という安易な考えに流されることを懸念することが挙げられている<ref>{{cite web|url=https://biz-journal.jp/2020/07/post_171066.html|title=産婦人科医会副会長、NHKで緊急避妊薬めぐり「安易な考えに流れてしまう」発言が物議|publisher=Business Journal |date=2020年7月29日|accessdate=2020-10-18}}</ref>が、2000年12月からブリティッシュコロンビア州では、薬剤師が処方箋なしで緊急避妊薬が提供されているがその調査ではECの繰り返し使用は、ユーザーのわずか2.1%のが研究期間中に3回以上緊急避妊を受けている状況で稀だった<ref>{{cite web|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC554872/|title=Effects of making emergency contraception available without a physician's prescription: a population-based study|publisher=US National Library of Medicine National Institutes of Health|date=2005 Mar 29|accessdate=2020-10-18}}</ref>。
 
WHOによると懸念される子宮外妊娠は、以前は緊急避妊薬使用に対する禁忌と考えられていたが、55,666人の女性事例のうち5件子宮外妊娠しか報告されていないので、ECは安全であると考えることができるとされている<ref>{{cite web|url=https://extranet.who.int/rhl/topics/fertility-regulation/contraception/interventions-emergency-contraception|title=Interventions for emergency contraception|publisher=WHO|date=2012-11-01|accessdate=2020-10-17}}</ref>。
 
日本産科婦人科学会編「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(平成28年度改訂版)でも異所性妊娠について総合的にはレボノルゲストレルによってこのリスクは増加しないことと、既に妊娠していた場合、反復投与によって流産が誘発されることはないと述べている。ただし、副作用として服用後は、3.6%に悪心が認められ、2時間以内に嘔吐した場合追加服用を要するとあるが、診療時間外であった場合の示唆はない<ref>{{cite web|url=http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf|title=日本産科婦人科学会編「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(平成28年度改訂版)|publisher=日本産科婦人科学会 |date=平成28年9月|accessdate=2020-12-23}}</ref>。
 
新型コロナウイルスについて[[アメリカ疾病予防管理センター|米疾病予防管理センター]](CDC)が2020年11月6日に公表した最新調査結果では妊婦は同じ年齢層の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化や死亡のリスクが高いと報道されている<ref>{{Cite news|url=https://forbesjapan.com/articles/detail/38508|title=妊婦は、コロナ感染で重症化しやすく死亡リスクも高い|publisher=forbes|date=2020-12-3|accessdate=2020-12-29}}</ref>。
 
場合により妊娠高血圧症などの疾患を抱える妊婦の定期健診と緊急避妊薬を求める女性が同じ待合を利用せざるを得ないが、無自覚感染者の問題もあるため可能な限り接触を控えるしか手法がない。しかし同時に室内におらず同じ座席を時間差で利用しただけで罹患した事例もある<ref>{{cite news|url=https://www.tokai-tv.com/newsone/corner/20200318-baramakishibou.html|title=がん患う中で感染し“外出”か…「ウイルスばらまく」50代男性が死亡 訪れた飲食店のオーナーも驚き|webcite=東海テレビ|date=2020-3-18|accessdate=2020-12-29}}</ref>。
 
薬局で日常的に市販されれば緊急避妊による来院者を増やす必要がなくなる。現在では、直接対面ではなく、コロナ影響化によりオンライン診療及びオンライン処方で研修を受けた医師と薬剤師が処方することが可能となっている。産婦人科だけではなく総合病院が脳神経外科や眼科医師も処方可能リストに名を連ねている<ref>{{cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186912_00002.html|title=緊急避妊に係る取組について|publisher=厚生労働省|accessdate=2021-2-1}}</ref>。
 
2019年米国産科婦人科学会(ACOG)は避妊に関する声明を改め、腟リングや避妊パッチを含めた全ての避妊薬を市販薬(OTC)として、処方箋なしで販売すべきだとの見解を「Obstetrics & Gynecology」10月号に発表している。またDMPA(デポ型酢酸メドロキシプロゲステロン)注射薬についても、年齢制限なく処方箋なしで販売すべきだとし、女性が避妊薬にアクセスするのを阻む障壁を取り除くべきだと主張している<ref>{{cite web|url=https://mainichi.jp/premier/health/articles/20191011/med/00m/070/002000d|title=「避妊薬はすべて市販薬にすべきだ」と米産婦人科学会|publisher=毎日新聞|date=2019-10-15|accessdate=2020-07-31}}</ref>のと対比的な状況となっている。
 
なお産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減った場合、クリニック収入が減る可能を医師が懸念する可能性を指摘する意見もあり<ref>{{Cite web |url=https://president.jp/articles/-/29212?page=4 |title=ピルを出したがらない産婦人科医の屁理屈 "人工妊娠中絶"の収入減を懸念か | author=山本佳奈 |accessdate=2020-05-02 | newspaper = PRESIDENT Online | publisher = [[プレジデント社]]}}</ref>、中絶が「罪人に対する処罰」であり産婦人科医の「いい金づる」とも表現されている<ref>{{cite web |url=https://www.ohtabooks.com/qjkettle/news/2018/08/03074223.html|title=「世界一遅れた中絶手術」 なぜ日本の医療は女性に優しくないのか? | accessdate=2020-05-05|publisher=太田出版ケトルニュース}}</ref>。
 
また、中絶胎児は万能細胞としてアメリカではパーキンソン病患者に胎児から取った神経細胞を移植する研究が進められ、中国でも脊髄損傷患者などに実際の治療が始まっている<ref>{{cite web|url=http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20050409|title=NHKスペシャル中絶胎児利用の衝撃|publisher=NHK|date=2005年4月9日|accessdate=2020-08-01}}</ref>が、現状では女性から摘出した中絶胎児は産婦人科が処分しているが他の用途の転用可能性もある。日本やポーランド、アイルランド等のミフェプリストンが未認可の国々では、掻爬術あるいは吸引処置が選択されるが、子宮穿孔や出血などの合併症のリスクが高く安全性において「薬物による中絶」に大きく劣る。ミフェプリストンが開発される以前は、妊娠初期であっても吸引術や掻破術がファーストチョイスとして選択されていたが、ミフェプリストンが認可された国々ではリスクの問題のためにファーストチョイスとされない。また、子宮内膜が薄くなる子宮内膜菲薄化、子宮に穴が開いてしまう子宮穿孔や術後に[[アッシャーマン症候群]]を起こすことがあり、[[不妊症]]となるケースがあるのも欠点となっている。海外では30年以上前から使用され、安全な中絶・流産の方法としてWHOの必須医薬品にも指定されている経口中絶薬([[ミフェプリストン]]、[[ミソプロストール]])は日本では中絶や流産に対しての適応は許可されていない<ref>{{cite web|url=https://woman.excite.co.jp/article/beauty/rid_Wome_2568/pid_2.html|title=ビューティ情報『目を背けてはいけない 日本の中絶問題 産婦人科医 遠見才希子さんインタビュー<最終回>|publisher=woman excite|date=2020-4-24|accessdate=2020-10-17}}</ref>。
 
『フランス・ジャポン・エコー』編集長レジス・アルノーからは、経口妊娠中絶薬はすべての先進国、それに発展途上国の多くでも認可され中国やウズベキスタンの女性も手に入れているにも関わらず厚生労働省は、経口妊娠中絶薬についてFDAの古い危険という、誤った見解の情報を発し続けてリンク切れを起こしている<ref>{{cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1c.html|title=ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について|publisher=厚生労働省|accessdate=2020-12-25}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.fda.gov/cder/drug/infopage/mifepristone/|title=page not found|publisher=https://www.fda.gov/cder/drug/infopage/mifepristone/|accessdate=2020-12-25}}</ref>、ことを指摘しており、認可されていない状況を憂いている<ref>{{cite news|url=https://toyokeizai.net/articles/-/246717?page=4|title=「妊娠中絶後進国」の日本女性に感じる哀れさ「性と生殖の権利」について知っていますか?|publisher=東洋経済|author=レジス・アルノー : 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東|dat「ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について」はe=2018/11/05 |accessdate=2020-12-25}}</ref>。
 
この件に関しては、ハーバード大学パブリックヘルス大学院博士(国際保健)、東京大学薬学部学士である赤地葉子も厚生労働省の「[[ミフェプレックス]](MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について」は古い情報に基づくものと指摘している<ref>{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_602227adc5b6c56a89a3f2a8|title=避妊と妊娠中絶で取り残される日本。海の向こうから送られる経口妊娠中絶薬〈後編〉| date=2021年02月13日|accessdate=2021-2-22|author=赤地葉子|publisher=HuffPost News}}</ref>。
 
厚生労働省は2018年、インターネットでインド製と表示された経口妊娠中絶薬を個人輸入し服用した20代の女性に、多量の出血やけいれん、腹痛などの健康被害が起きていたと発表し、個人輸入規制の強化を図った<ref>{{cite news|url=https://www.nishinippon.co.jp/item/o/416247/|title=経口中絶薬で健康被害 厚労省、注意呼び掛け|publisher=西日本新聞|date=2018/5/14 |accessdate=2020-12-25}}</ref>。
 
[[バイアグラ]]が個人輸入による健康被害を生み、スピード承認の運びとなったことと対比的な動きとなっている。不妊治療中、流産の掻爬手術を麻酔なしに2回受けたバイオリニストは心身ともにつらい経験だったことを著作で語っている<ref>ダーリンの進化論 わが家の仁義ある戦い 高嶋ちさ子 小学館 2021年1月発行 p119 ISBN978-4-388806-6</ref>。
 
コロナ禍による影響を受けた若年層の妊娠不安増加を背景として緊急経口避妊薬の市販化への議論が高まったが、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めてちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と2020年7月にNHKでコメントし、物議を醸しだした<ref>{{cite web|url=https://biz-journal.jp/2020/07/post_171066.html|title=産婦人科医会副会長、NHKで緊急避妊薬めぐり「安易な考えに流れてしまう」発言が物議|publisher=Business Journal |date=2020-7-29|accessdate=2020-03-31}}</ref>。
 
片や国内で認可されているノルレボは、売上ベースで年間11万個の販売に対し、日本国内の人工中絶は年間におよそ16万8千件(平成28年度・厚生労働省)で、1日にすると国内の中絶数は460件という結果から、緊急避妊薬にリーチできない人が多数であることを懸念し、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」というアフターピルを処方する医師もいる<ref>{{cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59092?page=2|title=「アフターピルが市販されると女性の性が乱れる」という大嘘|author=及川夕子|publisher=現代ビジネス|date=2018-12-23|accessdate=2020-08-03}}</ref>。
 
緊急避妊薬が処方されたクリニックではのべ1414人の女性の緊急避妊薬の処方についての処方状況を確認したところ、処方理由としては、[[コンドーム]]が破れた・外れたが最多であり、次いでコンドームをつけなかったという理由が多かった<ref>{{cite web|url=https://dot.asahi.com/dot/2019112900030.html?page=3|title=年間61万件が「予定外の妊娠」 緊急避妊薬の切実な処方状況|author=山本佳奈|publisher=AERA|date=2019-12-4|accessdate=2021-2-4}}</ref>。日本において一般的であるコンドームの避妊による失敗を補う目的で女性が妊娠を回避するために受診している現状がある。
 
2020年10月、政府が性交直後の服用で妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」について、医師の処方箋がなくても2021年より薬局で購入できるようにする方針を固めたと報道された<ref>{{cite web|url=https://www.chunichi.co.jp/article/133477|title=緊急避妊薬、薬局で購入可能に 来年にも、望まない妊娠防ぐ|publisher=中日新聞|2020年10月7日 |accessdate=2020-10-08}}</ref>。
 
内閣府の第5次男女共同参画基本計画素案には、「避妊をしなかった、又は、避妊手段が適切かつ十分でなかった結果、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性の求めに応じて、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する。」という文言が盛り込まれた<ref>{{cite web|url=http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/5th/sidai/pdf/07/01-1.pdf|title=第5次男女共同参画基本計画の策定に当たっての基本的な考え方(案)|publisher=内閣府|2020年10月8日 |accessdate=2020-10-08}}</ref>。
 
これに対する緊急避妊薬に対する日本医師会猪口雄二副会長の会見では、薬局でなく産婦人科で取り扱われる緊急避妊薬のアクセスの悪さが指摘されていることを述べ、専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させるとの同調査会の提言には同意を示している<ref>{{cite web|url=https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009623.html|title=緊急避妊薬に対する日本医師会の見解について|publisher=日医on-line|date=2020年10月15日 |accessdate=2020-10-17}}</ref>。
 
なお2020年より幼稚園から小中高校、大学で「生命の安全教育」という新しい教育を始める方針があるが、引き続き性行為や避妊は取り扱わない予定とされている<ref>{{cite web|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201006/k10012648811000.html|title=変わるか 日本の“性教育”|web cite=NHK|2020年10月6日 |accessdate=2020-10-08}}</ref>。2020年12月、日本産科婦人科学会の木村正理事長は定例記者会見で「いろんな条件が成熟していない」とし、導入に極めて慎重な姿勢を示している<ref>{{cite web|url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fd4a1c2c5b663c37596d738|title=アフターピルの処方箋なし販売、産科婦人科学会トップが慎重姿勢 海外では90カ国で販売|publisher=HUFFPOST|date=2020-12-13 |accessdate=2020-12-15}}</ref>。
 
しかしながら、医師法はその第1条で「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とその使命を定め、公益社団法人日本産婦人科医会はその会則で「母子の生命健康を保護するとともに、女性の健康を保持・増進し、もって国民の保健の向上に寄与することを目的とする」ことを謳い、女性保健に関する啓発を事業内容として掲げている<ref>{{cite web|url=http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/teikan.pdf|title=公益社団法人日本産婦人科医会定款|publisher=公益社団法人日本産婦人科医会|accessdate=2020-12-15}}</ref>。
 
また日本産科婦人科学会の木村正理事長は学会代表あいさつでリプロダクティブ・ヘルスの概念を日本の女性にあまねく享受を目的として述べている<ref>{{cite web|url=http://www.jsog.or.jp/modules/about/index.php?content_id=2|title=挨拶|publisher=公益社団法人日本産科婦人科学会|accessdate=2020-12-20}}</ref>。
 
日本に住む学齢期の10代を初め、既卒者であり既に経産婦も含まれる20~40代の妊孕性がある女性達が、国内において海外の多くで使用される緊急避妊薬を入手するという同等の権利を得るための要件として関係者から述べられる、既卒者にも届く「性教育の普及」や薬の悪用・乱用を防ぐなどの「いろんな条件」解消に向けては、医師自身も寄与することがその立場上要されている。現役の産婦人科医からは「性教育が先」論については、これまで性教育を十分に受けてこられなかった女性に対して何の救済もないことを指摘し、性教育充実もアフターピルへのアクセスも両方一刻も早い対応を求める声がある<ref>{{cite news|url=https://president.jp/articles/-/41712?page=4|title=「アフターピル」の薬局販売に産婦人科医会が反対するのはなぜか|publisher=プレジデントオンライン|author=宋 美玄|date=2020-12-25|accessdate=2020-01-03}}</ref>。
 
2020年10月、田村厚労相は緊急避妊薬薬局での販売について「これまでの議論を踏まえ、しっかり検討していく」と述べたが解禁の時期は「期限を区切ってとは考えていない」と明言を避けている<ref>{{cite web|url=https://mainichi.jp/articles/20201009/k00/00m/040/194000c|title=緊急避妊薬市販化 田村厚労相「検討する」 解禁時期は明言せず|publisher=毎日新聞|date=2020-10-9|accessdate=2020-12-15}}</ref>。
 
しかし厚生労働省は厚生労働省設置法により、「国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること」を任務としている。性教育が不十分なことが過去のピル承認の遅れやアフターピルや中絶薬承認や市販化への障壁であるならば、既卒者に届く性に対する正しい知識を提供することは厚生労働省の責務となっている。医師からはアフターピルの議論が男性を中心に行われてきたことに対し、本来、避妊やその方法は、社会全体の問題であると同時に、まずは「女性の生き方」の問題で「女性の生きる権利」の一部あるとの指摘がある<ref>{{cite web|url=https://toyokeizai.net/articles/-/382790?page=4|title=アフターピルで「性が乱れる」と叫ぶ人の勘違い女性側の事情を考慮しない「有識者」の言い分|publisher=東洋経済|author=久住 英二|date=2020-10-20|accessdate=2021-1-10}}</ref>。
 
一連の緊急避妊薬OTC化未承認問題については、2021年2月The Lancet Regional health western pacificにも掲載された<ref>{{cite web|url=https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(21)00004-3/fulltext|title=Why is it so difficult to access emergency contraceptive pills in Japan?|publisher=The Lancet Regional health western pacific|author=Sumire Sorano Sakiko Emmi Chris Smith|date=January 28 2021|accessdate=2021-2-8}}</ref>。
 
医師会が「時期尚早」という理論でアフターピルOTC化や経口中絶薬を見送る背景には、人工中絶費用は自由診療にあたるため患者の自費負担で15~30万円が相場であるが、推計240~510億円ほどの産業規模のマーケットであるためその費用も病院には貴重な収入源であることが指摘されている<ref>{{citenews|url=https://www.cyzo.com/2021/02/post_267510_entry_2.html|title=医師会は明確な理由なく「時期尚早」で煙に巻き…政府「緊急避妊薬」薬局販売検討も中絶利権に群がる医師界の反対|publisher=日刊サイゾー|author=河鐘基|date=2021-02-07| accessdate=2021-2-24}}</ref>。
 
実際、[[特別養子縁組制度]]成立のきっかけとなった[[菊田昇]]医師も、当時許されなかった秘密裏に乳児を譲渡する[[赤ちゃんあっせん事件]](菊田医師事件とも)を起こしたことにより医師会を除名され母体保護法指定医師がはく奪されたため、おもな収入源とする[[人工妊娠中絶]]が行えなくなり苦しい経営を迫られた時期があった<ref>赤ちゃんをわが子として育てる方を求む 石井光太 ISBN 13 : 9784093865746 小学館 2020年04月</ref>。
 
ただし、クリニックの中には12週までの中絶手術がWHOの推奨する手動真空吸引法で行い9万円で休診曜日なく、アフターピルも4800円、全ての施術が料金表で明示な医院もある<ref>{{citenews|url=https://fides.clinic/?utm_source=google&utm_medium=maps&utm_campaign=meo|title=フィデスレディースクリニック田町|publisher=FIDES ladies clinic tamachi| accessdate=2021-2-27}}</ref>。しかい医院によってはノルレボ錠ではなく前時代的で副作用が強いヤッペ法を安価で処方するところもあるので注意を要する。
 
中期中絶では薬で陣痛を促し、出産と変わらない状況で子供を生み出す。男女の性別もわかる場合があるし、産声をあげたり動いたりする場合もある<ref>{{cite web|url=https://biz-journal.jp/2016/08/post_16194_2.html|title=鳥取県の闇…人工中絶数が日本一、その原因は?日本最低レベル賃金や「風土」が影響か|publisher=Business Journal|date=2016-08-06|accessdate=2021-2-22}}</ref>。
 
最終的に体内から排出された胎児は棺に納められ火葬される。産婦人科看護師はその手術を受けた若い女性の支援を通して、アフターピルが女性が自分を守るためにある薬であり、自分で自分の身体を、自分の未来を守る事はそんなにいけないことなのだろうかと心情を吐露している<ref>{{cite web|url=http://medg.jp/mt/?p=9106|title=Vol.124 性犯罪被害者でなくとも、アフターピルが必要な人は沢山居ます〜産婦人科の現|publisher=医療ガバナンス学会|date=2019年7月17日|accessdate=2021-2-22}}</ref>。
 
第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方についての公聴会及び意見募集に寄せられた意見では、20代の女性からは女性達自身が避妊の知識があるからアフターピルを薬局で購入を望むのに、なぜ「私たちが無知」という前提にされるのか、望まぬ性交で積極的にできる避妊方法であるアフターピルが速やかに利用できない憤りと、女性が自分の人生や自分の身体を管理することをこの国は認めないと怒りを表明している<ref>{{cite web|url=https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/5th/sidai/pdf/07/02-2-8.pdf|title= 第5次基本計画策定専門調査会(第7回)議事次第「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」についての公聴会及び意見募集の意見|publisher=男女共同参画局|accessdate=2021-3-3}}</ref>。
 
緊急避妊薬の入手が困難なことに乗じ、2021年1月には、交際相手との子を妊娠した不安がある女子中学生に対し、避妊薬を対価に43歳の男がわいせつ行為をして逮捕された<ref>{{cite web|url=https://newsfanjp.com/archives/42325|title=避妊薬対価に…女子中学生に“わいせつ”|publisher=NEWS FAN|date=2021-1-22|accessdate=2021-1-31}}</ref>。
 
日本においても、世界で承認されている、子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め「産む・産まない」の選択を女性自身が決める「[[リプロダクティブ・ヘルス・ライツ]]」の権利が尊重される必要がある<ref>{{Cite web |url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65043?page=6 |title=荻上チキsession体も心も痛い…「時代遅れの中絶手術」で傷つく日本の女性たちの叫び| date=2019-06-06|accessdate=2020-05-05|publisher=現代ビジネス}}</ref>。
 
ただし、2020年10月厚生労働省が開催した「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)において、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。スイッチが停滞してきた状況が打破される予期とメンバーのドラッグストア関係者なども加入する可能性が報道されている。医療用医薬品で義務化された服薬フォローアップの実施を含め、薬を渡しっぱなしではない関りを店頭ができれば、国民へのQOL向上に資する意義は大きいと期待されている<ref>{{Cite web |url=https://www.dgs-on-line.com/articles/473 |title=【一変したスイッチOTC検討会議】今後はドラッグストアも参画か| date=2020年10月30日|accessdate=2021-2-26|publisher=ドラビズON=LINE}}</ref>。
 
日本保健薬局協会は、薬剤師の技量を磨き緊急避妊薬をOTCとして薬局で提供することは可能と思うとの見解を示している<ref>{{citeweb|url=https://www.yakuji.co.jp/entry82936.html|title=【NPhA】薬局での販売に前向き‐緊急避妊薬OTC化言及|publisher=薬事日報|date=2020年11月17日|accessdate=2021-3-3}}</ref>。また薬剤師のオンライン処方研修会も順次執り行われている<ref>{{citeweb|url=https://www.kpa.or.jp/kpa_workshop_past/71350/|title=オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤に関する研修会 受付終了|publisher=神奈川県薬剤師会|accessdate=2021-3-3}}</ref>。
 
カナダに拠点をおく非営利団体「ウィメン・オン・ウェブ([[en|Women on Web]])」(WoW)はオンライン診療を通して日本人女性にも避妊薬・妊娠中絶薬を処方しており、メールは日本語でも可能である。厚労省によると、WoWを通じて処方を受ける場合には制度上「個人輸入」にあたり医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき医師の診断書や指示書が必要になるが、国外の医師の処方せんもこの指示書にあたるため問題がないとされる。しかし、本人を含む、母体保護法指定医以外の人が中絶をした場合、刑法上の堕胎罪に当たる可能性があることも報道されている。この団体代表者レベッカ・ゴンパーツ医師は、社会権規約(ICESCR)に批准している日本政府には、避妊薬、その他の避妊方法、緊急避妊薬、中絶薬を含むWHOの必須医薬品を確保する義務があるため、日本の女性たちには中絶薬を使う権利を持ち中絶薬は安全であり世界中で使用されていると表明している。日本からWoWに連絡をした女性たち、支援を受けた女性たちは年々増加し、2011年から2020年までに合計4175件の相談件数と、2286件の避妊薬・妊娠中絶薬の発送件数があった<ref>{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_602227adc5b6c56a89a3f2a8|title=避妊と妊娠中絶で取り残される日本。海の向こうから送られる経口妊娠中絶薬〈後編〉| date=2021年02月13日|accessdate=2021-2-22|author=赤地葉子|publisher=HuffPost News}}</ref>。
 
日本では医薬品開発を目的とした臨床試験(治験)は,第Ⅰ相,第Ⅱ相,第Ⅲ相などの開発相を経てPMDAでの1年の承認審査後、承認可能と判断された場合には厚生労働省の薬事・食品衛生審議会に諮問され、承認して差し支えないと判断されれば厚生労働大臣により承認されるというプロセスを経る<ref>{{Cite web |url=https://jsn.or.jp/journal/document/59_8/1233-1239.pdf|title=招請講演 医薬品の開発プロセスと PMDA|accessdate=2021-2-27|author=篠原(三ツ木)加代|publisher=日腎会誌}}</ref>。
 
もともと胃潰瘍などの治療薬として承認済である経口中絶薬に使用するミフェプリストン、ミソプロストールは第Ⅲ相試験を2020年8月に終了している状態にある<ref>{{Cite web |url=https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?clinicalTrialId=30249|title=更新履歴 / update history information|accessdate=2021-2-27|publisher=一般財団法人日本医薬情報センター 臨床試験情報}}</ref>。
 
== 脚注 ==