美星スペースガードセンター
美星スペースガードセンター(びせいスペースガードセンター)は、岡山県井原市美星天文台に隣接する、スペースデブリや太陽系内の地球近傍小惑星を観測する施設である。 財団法人日本宇宙フォーラム(JSF)が設立した。主な利用者は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の追跡ネットワーク技術センター SSAシステムプロジェクトチームであり、JSFからの委託を受け、日本スペースガード協会が運用している。
概要
編集口径1mの大型光学望遠鏡により、地球近傍小惑星や高度36,000kmの静止軌道近傍のスペースデブリを観測する。その他に、50cm・25cm口径の追尾用小型望遠鏡がある。最初からスペースデブリ等の観測を目的として設計された施設は、世界でも初めてである。施設は2001年(平成13年)度に完成した。
2019年現在「美星スペースガードセンター」に設置されているレーダーでは大きさ1.6メートルまでの宇宙ゴミしか捕捉できず、それ以下の宇宙ゴミの接近についてはアメリカからの情報に依存していた[1]。2023年度を目途に、美星スペースガードセンターのレーダー施設に隣接して高出力高感度のレーダー設備を新設、特殊な信号の処理技術も採用し、既存のレーダー設備の約200倍の宇宙ゴミ探知能力を持たせる計画になっている[1]。防衛省が計画している別のレーダー施設とも連携する予定で[1]、これにより低軌道で周回している10センチ程度の宇宙ごみの監視が可能になる[1]。
小惑星観測プロジェクトは「バッターズ (BATTeRS, Bisei Asteroid Tracking Telescope for Rapid Survey) 」と名付けられ、プロ野球選手の写真入りのロゴマークが作られている。
観測設備
編集大型望遠鏡
- 1m光学望遠鏡
追尾用小型望遠鏡
- 50cm光学望遠鏡(主に高速で移動するスペースデブリ等の追尾観測のために使われている)
- 諸元
- 焦点モード:カセグレン焦点、合成 約2
- 視野直径:2度角
- 最大追尾速度:赤経・赤緯5度/秒以上
- 架台方式:フォーク式赤道儀
- CCDカメラ:視野直径約50mm、2,000×4,000ピクセルのチップを2枚並べたものを使用していた。近年は老朽化のため、U42(アポジー社)を使用している。
- CCD温度:観測時は約-20℃(現カメラ)(旧カメラ:約-90℃)
- 諸元
- 25cm光学望遠鏡(1m及び50cm光学望遠鏡の補助として使用されている)
- 諸元
- 焦点モード:ベーカーリッチクレチアン式、合成F 約5
- 視野直径:5度角
- 最大追尾速度:赤経・赤緯5度/秒以上
- 架台方式:ドイツ式赤道儀
- CCDカメラ:2,000×2,000ピクセルのCCDを1個使用
- CCD温度:観測時は約-20℃
- 諸元
観測成果
編集- 地球近傍小惑星の(20826) 2000 UV13や2007 YZなど、多数の小惑星を発見し、2017年4月までにそのうち434個が番号登録されている[2]。
- 2000年7月8日に発見した小惑星帯の小惑星は、この施設がある地名に因み美星 (17286 Bisei)と名づけられた。
- バッターズ彗星 (C/2001 W2)(BATTeRS、周期75.9年)を発見している。