鄭 潔(ジェン・ジー、日本語読み:ていけつ、ピン音表記:Zheng Jie, 1983年7月5日 - )は、中華人民共和国四川省成都市出身の女子プロテニス選手。同僚の晏紫とペアを組んで、2006年全豪オープンウィンブルドン女子ダブルスで優勝を飾り、中国のテニス選手として最初の4大大会優勝者に輝いた。シングルスでも2008年ウィンブルドンと2010年全豪オープンの準決勝進出者となった。WTAツアーでは、ダブルスで4大大会2勝を含む15勝を挙げ、シングルスでも4勝がある。自己最高ランキングはシングルス15位、ダブルス3位。右利き、バックハンド・ストロークは両手打ち。身長164cm、体重57kg。

鄭潔
Jie Zheng
鄭潔
基本情報
国籍 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
出身地 四川省成都市
生年月日 (1983-07-05) 1983年7月5日(40歳)
身長 164cm
体重 57kg
利き手
バックハンド 両手打ち
ツアー経歴
デビュー年 2000年
引退年 2015年(最終出場年)
ツアー通算 19勝
シングルス 4勝
ダブルス 15勝
生涯通算成績 821勝470敗
シングルス 384勝266敗
ダブルス 437勝213敗
生涯獲得賞金 $6,157,773
4大大会最高成績・シングルス
全豪 ベスト4(2010)
全仏 4回戦(2004)
全英 ベスト4(2008)
全米 3回戦(2008・09・12・13)
4大大会最高成績・ダブルス
全豪 優勝(2006)
全仏 ベスト4(2006)
全英 優勝(2006)
全米 ベスト4(2010・13)
優勝回数 2(豪1・英1)
4大大会最高成績・混合ダブルス
全豪 ベスト4(2014)
全仏 ベスト4(2008・15)
全英 ベスト4(2006)
全米 1回戦(2012)
キャリア自己最高ランキング
シングルス 15位(2009年5月18日)
ダブルス 3位(2006年7月10日)
獲得メダル
女子 テニス
オリンピック
2008 北京 ダブルス
2017年10月18日現在

来歴 編集

2000年にプロ入り。鄭潔が中国国外のトーナメントに初参加したのは、2001年7月前半のアメリカカリフォルニア州「ロス・ガトス」の大会であった。2002年から女子テニス国別対抗戦・フェドカップの中国代表選手となり、国外のテニス大会に活動の場を広げる。同年5月に福岡のトーナメントで初来日し、本戦の準々決勝まで進出した。2003年は「ジャパン・オープン」でベスト4進出があるが、この時は準々決勝で同僚の晏紫との“中国対決”を制した後、準決勝で当時16歳のマリア・シャラポワに敗れている。シャラポワにとってはこれがWTAツアー初優勝の大会だった。2004年全仏オープン女子シングルスで、鄭潔は中国出身の女子テニス選手として史上初のベスト16入りを達成した。その4回戦では、パオラ・スアレスに4-6, 5-7 で敗れている。

2004年アテネ五輪でテニスの中国代表選手に選ばれた時、女子ダブルスには鄭潔&晏紫の組と、李婷孫甜甜組の2組を送り出した。このアテネ五輪では李婷&孫甜甜組が女子ダブルスの金メダルを獲得し、中国に初めてのテニス金メダルをもたらした。それから1年半後、2006年全豪オープン女子ダブルスでは、鄭潔&晏紫の組が第12シードから勝ち上がった。2人のダブルスは、リターンの時に「2人とも後ろに並ぶ」スタイルで、世界の標準的なダブルスとは大きく異なる。これが対戦相手を戸惑わせ、2人は準決勝で浅越しのぶカタリナ・スレボトニク組に6-2, 7-6で勝ち、決勝では第1シードのリサ・レイモンド&サマンサ・ストーサー組を2-6, 7-6, 6-3の逆転で破り、中国に史上初のテニス4大大会タイトルをもたらした。これで、中国女子テニスからは2組のダブルス・ペアが世界の頂点に立ったことになる。

全豪オープン女子ダブルスで優勝を飾った後、鄭潔は5月第1週にポルトガルエストリル大会の決勝で同じ中国の李娜を6-7, 7-5(李娜の途中棄権)で破り、WTAツアーのシングルスで2勝目を挙げた。その後、ウィンブルドンでも中国テニス界は大きな躍進を見せる。鄭潔は女子シングルス3回戦でキム・クライシュテルスに敗れたが、晏紫とのダブルスで2度目の4大大会決勝に勝ち進み、ビルヒニア・ルアノ・パスクアル&パオラ・スアレス組を6-3, 3-6, 6-2 で破り、中国のテニス選手として最初のウィンブルドン優勝者になった。

ウィンブルドン選手権の後、7月15日-16日にかけて女子テニス国別対抗戦・フェドカップの「ワールドグループ・プレーオフ」が中国の首都北京で開かれ、中国はドイツを「4勝1敗」で下して2007年度のワールドグループ出場権を獲得した。鄭潔はシングルス1試合と晏紫とのダブルス戦に勝利を収め、中国にとって初めてのワールドグループ進出に大きく貢献した。しかし、2007年全豪オープンで鄭潔と晏紫は女子ダブルス準決勝で台湾ペアの詹詠然&荘佳容組に3-6, 4-6 で敗れ、大会2連覇を逃した。

2008年ウィンブルドンにおいて、鄭潔は中国女子選手として史上初のベスト4に進出し、2年前の李娜のベスト8を上回る成績を出した。3回戦で第1シードのアナ・イバノビッチに6-1, 6-4で破る勝利で波に乗り、4回戦でアグネシュ・サバイ、準々決勝でニコル・バイディソバに勝ち、シングルスでも同国の最高記録を更新した。準決勝では第6シードのセリーナ・ウィリアムズに2-6, 6-7で惜敗した。アジア人女性のウィンブルドン準決勝進出も、1996年伊達公子以来12年ぶりの快挙だった。地元開催の北京五輪で、鄭潔と晏紫は女子ダブルスの銅メダルを獲得した。準決勝でスペイン代表のビルヒニア・ルアノ・パスクアル&アナベル・メディナ・ガリゲス組に4-6, 6-7で敗れた2人は、準決勝敗退ペア2組による「銅メダル決定戦」でウクライナの姉妹ペア、アリョーナ・ボンダレンコ&カテリナ・ボンダレンコ組に6-2, 6-2のストレート勝ちを収めた。

2009年全豪オープンで、鄭潔は第22シードとしてシングルス4回戦に初進出を決めたが、スベトラーナ・クズネツォワとの試合を1-4 で途中棄権してしまう。翌2010年全豪オープンでは、鄭潔と李娜の2人が女子シングルスのベスト4に入った。鄭潔も2008年ウィンブルドン以来2度目の4大大会シングルス準決勝でジュスティーヌ・エナンから1ゲームしか奪えず1-6, 0-6のスコアで完敗した。

2012年の開幕戦ASBクラシックの決勝でフラビア・ペンネッタの途中棄権により5年5カ月ぶりのシングルスツアー4勝目を挙げた。7月のロンドン五輪で3度目のオリンピックに出場しシングルスは1回戦でナディア・ペトロワに4-6, 6-7(7) で敗退したが、彭帥と組んだダブルスではベスト8に進出している。

鄭潔は2015年ウィンブルドン選手権を最後に公式戦出場が途絶えている。2016年4月に第1子を出産した[1]

WTAツアー決勝進出結果 編集

シングルス: 7回 (4勝3敗) 編集

大会グレード
2008年以前 2009年以後
グランドスラム (0–0)
WTAファイナルズ (0–0)
ティア I (0–0) プレミア・マンダトリー (0-0)
プレミア5 (0-0)
ティア II (0–0) プレミア (0–1)
ティア III (0–0) インターナショナル (1–1)
ティア IV & V (3-1)
結果 No. 決勝日 大会 サーフェス 対戦相手 スコア
優勝 1. 2005年1月14日   ホバート ハード   ヒセラ・ドゥルコ 6–2, 6–0
準優勝 1. 2005年5月8日   フェズ クレー   ヌリア・リャゴステラ・ビベス 4–6, 2–6
優勝 2. 2006年5月7日   エストリル クレー   李娜 6–7(5), 7–5, 途中棄権
優勝 3. 2006年8月13日   ストックホルム ハード   アナスタシア・ミスキナ 6–4, 6–1
準優勝 2. 2010年5月22日   ワルシャワ クレー   アレクサンドラ・ドゥルゲル 3–6, 4–6
優勝 4. 2012年1月8日   オークランド ハード   フラビア・ペンネッタ 2–6, 6–3, 2–0 途中棄権
準優勝 3. 2014年6月21日   スヘルトーヘンボス   ココ・バンダウェイ 2–6, 4–6

ダブルス: 30回 (15勝15敗) 編集

大会グレード
2008年以前 2009年以後
グランドスラム (2–1)
WTAファイナルズ (0–0)
ティア I (2–1) プレミア・マンダトリー (0-0)
プレミア5 (1-1)
ティア II (2–2) プレミア (2–4)
ティア III (2–3) インターナショナル (1–1)
ティア IV & V (3–2)
結果 No. 決勝日 大会 サーフェス パートナー 対戦相手 スコア
準優勝 1. 2003年6月14日   ウィーン クレー   晏紫   李婷
  孫甜甜
3-6, 4-6
優勝 1. 2005年1月14日   ホバート ハード   晏紫   アナベル・メディナ・ガリゲス
  ディナラ・サフィナ
6–4, 7–5
優勝 2. 2005年2月12日   ハイデラバード ハード   晏紫   李婷
  孫甜甜
6–4, 6–1
準優勝 2. 2005年9月18日   バリ ハード   晏紫   メガン・ショーネシー
  アンナ=レナ・グローネフェルト
3-6, 3-6
準優勝 3. 2005年9月25日   北京 ハード   晏紫   マリア・ベント=カブチ
  ヌリア・リャゴステラ・ビベス
2-6, 4-6
優勝 3. 2006年1月28日   全豪オープン ハード   晏紫   リサ・レイモンド
  サマンサ・ストーサー
2–6, 7–6(7), 6–3
準優勝 4. 2006年2月12日   パタヤ ハード   晏紫   李婷
  孫甜甜
6-3, 1-6, 6-7(5)
優勝 4. 2006年5月14日   ベルリン クレー   晏紫   エレーナ・デメンチェワ
  フラビア・ペンネッタ
6–2, 6–3
優勝 5. 2006年5月21日   ラバト クレー   晏紫   アシュリー・ハークルロード
  ベサニー・マテック
6–1, 6–3
優勝 6. 2006年6月24日   スヘルトーヘンボス   晏紫   アナ・イバノビッチ
  マリア・キリレンコ
3–6, 6–2, 6–2
優勝 7. 2006年7月8日   ウィンブルドン   晏紫   ビルヒニア・ルアノ・パスクアル
  パオラ・スアレス
6–3, 3–6, 6–2
準優勝 5. 2006年8月13日   ストックホルム ハード   晏紫   ヤルミラ・ガイドソバ
  エバ・ブリネロバ
6-0, 4-6, 2-6
優勝 8. 2006年8月26日   ニューヘイブン ハード   晏紫   リサ・レイモンド
  サマンサ・ストーサー
6–4, 6–2
優勝 9. 2007年4月15日   チャールストン クレー   晏紫   彭帥
  孫甜甜
7–5, 6–0
優勝 10. 2007年5月26日   ストラスブール クレー   晏紫   アリシア・モリク
  孫甜甜
6–3, 6–4
準優勝 6. 2008年1月5日   ゴールドコースト ハード   晏紫   ディナラ・サフィナ
  アグネシュ・サバイ
1-6, 2-6
優勝 11. 2008年1月11日   シドニー ハード   晏紫   タチアナ・ペレビニス
  タチアナ・ポウチェク
6–4, 7–6(5)
準優勝 7. 2008年3月1日   ドバイ ハード   晏紫   カーラ・ブラック
  リーゼル・フーバー
5-7, 2-6
準優勝 8. 2008年3月23日   インディアンウェルズ ハード   晏紫   ディナラ・サフィナ
  エレーナ・ベスニナ
1-6, 6-1, [8-10]
準優勝 9. 2009年5月23日   ワルシャワ クレー   晏紫   ラケル・コップス=ジョーンズ
  ベサニー・マテック=サンズ
1-6, 1-6
優勝 12. 2010年2月28日   クアラルンプール ハード   詹詠然   アナスタシア・ロディオノワ
  アリーナ・ロディオノワ
6–7(4), 6–2, [10–7]
準優勝 10. 2010年8月1日   スタンフォード ハード   詹詠然   リンゼイ・ダベンポート
  リーゼル・フーバー
5–7, 7–6(8), [8–10]
優勝 13. 2010年8月8日   サンディエゴ ハード   マリア・キリレンコ   リサ・レイモンド
  レネ・スタブス
6–4, 6–4
準優勝 11. 2011年2月13日   パタヤ ハード   孫勝男   サラ・エラニ
  ロベルタ・ビンチ
6–3, 3–6, [5–10]
優勝 14. 2011年5月15日   ローマ クレー   彭帥   バニア・キング
  ヤロスラワ・シュウェドワ
6–2, 6–3
準優勝 12. 2012年5月26日   ブリュッセル クレー   アリシア・ロソルスカ   ベサニー・マテック=サンズ
  サニア・ミルザ
3–6, 2–6
準優勝 13. 2012年8月19日   シンシナティ ハード   カタリナ・スレボトニク   アンドレア・フラバーチコバ
  ルーシー・ハラデツカ
1–6, 3–6
優勝 15. 2013年8月24日   ニューヘイブン ハード   サニア・ミルザ   アナベル・メディナ・ガリゲス
  カタリナ・スレボトニク
6–3, 6–4
準優勝 14. 2015年1月30日   全豪オープン ハード   詹詠然   ルーシー・サファロバ
  ベサニー・マテック=サンズ
4–6, 6–7(5)
準優勝 15. 2015年6月27日   イーストボーン   詹詠然   キャロリン・ガルシア
  カタリナ・スレボトニク
6–7(5), 2–6

4大大会シングルス成績 編集

略語の説明
 W   F  SF QF #R RR Q# LQ  A  Z# PO  G   S   B  NMS  P  NH

W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.

大会 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 通算成績
全豪オープン A LQ 1R 1R 1R 1R A 4R SF A 4R 3R 3R 1R 15–10
全仏オープン A LQ 4R 1R 2R 1R 3R 2R 2R 2R 2R 3R 1R A 12–11
ウィンブルドン A A 1R A 3R A SF 2R 2R 2R 3R 1R 2R A 13–9
全米オープン LQ LQ 1R 2R 2R A 3R 3R 2R 2R 3R 3R 1R A 11–10

脚注 編集

外部リンク 編集