鞍馬山鋼索鉄道

京都府に所在する宗教法人が運営するケーブルカー

鞍馬山鋼索鉄道(くらまやまこうさくてつどう)は、京都府京都市左京区にある寺院鞍馬寺への参詣者の利便を図るため、宗教法人鞍馬寺が運行しているケーブルカー鉄道事業法による許可を受けた鉄道としては唯一、宗教法人が運営している。

鞍馬山鋼索鉄道
鞍馬山鋼索鉄道の車両 牛若號IV
鞍馬山鋼索鉄道の車両 牛若號IV
基本情報
日本の旗 日本
所在地 京都府京都市左京区
種類 鋼索鉄道(客車・重錘車交走式)
起点 山門駅
終点 多宝塔駅
駅数 2駅
開業 1957年1月1日
所有者 宗教法人鞍馬寺
運営者 宗教法人鞍馬寺
使用車両 車両の節を参照
路線諸元
路線距離 0.2 km
軌間 800 mm
線路数 単線
最大勾配 499
高低差 89 m
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停車場・配線
PENDEa(LG)
0.0 山門駅
STR
PENDEe(LF)
0.2 多宝塔駅

総延長は0.2kmで、鉄道事業法に基づく路線では日本一短い鉄道路線である[1]。1車両が駅間を往復するだけの単線で行き違い設備はない。乗務員や出札係員などの多くは作務衣を着用している。

2016年5月20日から更新された設備・車両で運行している[2][3][4]。車両などのデータは特記なければ2015年5月10日限りで引退した3代目車両[5]のものである。

路線データ 編集

  • 路線距離(営業キロ):191m (0.2km)
  • 軌間:800mm
  • 駅数:2駅(起終点駅含む)
  • 高低差:89m
  • 最急勾配:499(約26°31

運行形態 編集

閑散期は15分間隔または20分間隔の運行で、所要時間は約2分。多客時はピストン運転(高頻度運転)を行う。始発は山門駅発の場合は8時40分で、多宝塔駅はピストン運転時以外は、すべてその5分後の発車。最終は山門駅発の場合が16時30分で、6月から8月までは17時00分に延長される。

車両 編集

車両には幼いころ鞍馬寺で修行した源義経の幼名牛若丸にちなみ「牛若號」の愛称がついている。

1996年製の3代目車両「牛若號III」の諸元は以下の通り。

  • 乗客定員:31人(ただし、実際は28人で運用されている)
  • 軌道及び運行システム設計・施工:安全索道株式会社(1996年)
  • 車両製作:大阪車輌工業株式会社(1996年)

軌間800mmのゴムタイヤ式の車両1両と錘との交走式。1957年の開業当初の車両は軌間762mmの鉄車輪2両交走式だった。1976年から使用された2代目車両はゴムタイヤ式に改められたが、架線集電を行っていた[6](p2)。1996年からの3代目より架線が廃止されモノレールや新交通システムのように軌道脇から集電する方式となった[6](p3)(なお、ケーブルカーの走行中の集電は、照明および前照灯、車内放送および前窓ワイパー用であり動力用ではない)。2016年からの4代目車両「牛若號IV」は車内で使用する電源を駅で充電する方式になった[2]

運賃 編集

鉄道事業法による許可を受けた鉄道としては、現在唯一の運賃が無料の鉄道である(かつては箕面鋼索鉄道も無料であった)。ただし、鞍馬寺に諸堂維持の寄付金1口200円(小学生は100円。2015年までは小学生以上1口100円[7])を寄付した人だけが、鞍馬寺からの「お礼」のかたちで無料で乗車できるようになっているので、寄付金200円が事実上の運賃と言える。これは鉄道(ケーブルカー)に対する「運賃」扱いだと、宗教法人法の規定により営利事業と見なされるため、宗教法人といえども課税されるが、寺院に対しての「寄付金」だと、宗教活動の一環であると見なされるため、非課税扱いとなるためである[8][9]

鞍馬寺の公式サイトでは「鞍馬山ケーブルは、足の弱い方や年配の方が少しでも楽に参拝できるように敷設されたもので営利事業ではありません。そこで運賃を戴くのではなく、鞍馬山内の堂舎維持にご協力いただいた方に、そのお礼としてケーブルを利用していただくということになっています。」としている[10]

2015年の改修前までは、駅受付(事実上の切符売場)で諸堂維持の寄付をした人に、事実上の乗車券である「参拝記念の花びら(片道乗車票)」を1口1枚交付していた。これは「鞍馬山内の諸堂や施設を維持するためにご協力いただきありがとうございました。そのお礼としてケーブルカーを片道ご利用いただきます。この花びらを係員に提示してご乗車ください。」と記された蓮華の花びらの形をした紙の乗車票で、下に半券を切り離すことができるミシン目があり、乗車時に半券を切り離していた。

改修後は自動券売機による寄進票(これが事実上の乗車券)に変わった。寄進票はレシートのような薄い感熱紙で乗車時に寄進票は回収されるが、券売機は領収書も別に発行できる。以前は券売機の横に「参拝記念」と書かれたかつての「参拝記念の花びら(片道乗車票)」と同じ大きさの紙が置かれて、自由に取って記念に持ち帰ることができるようになっていた。これには「鞍馬山内の諸堂や施設を維持するためにご協力いただきありがとうございました。そのお礼としてケーブルカーを片道ご利用いただきます。この花びらはご参拝の記念におもち帰りください」と記されており、下部に半券部分は無かった。ただし、この「花びら」の配布は既に終了している。

なお寺側は、歩くことが可能な人はケーブルカーを使用せずに参道を歩くことを勧めており、山門駅の入口脇にも掲示されている。その理由は、自然の中を歩いて参拝してこそ、鞍馬寺の本尊であり、自然の力の根源である「尊天」をより強く感じることができるからであり、かつ途中に由岐神社や「魔王の滝」など見どころも多い道で、牛若丸や清少納言も歩いた歴史の道であるからである。

歴史 編集

  • 1957年(昭和32年)1月1日 - 山門 - 多宝塔間が開業。
  • 1976年(昭和51年)1月 - 2代目車両運行開始。ゴムタイヤ式[6](p2)
  • 1996年(平成8年)8月8日 - 3代目車両運行開始。ゴムタイヤ式。
  • 2015年(平成27年)5月11日 - 改修工事のため運休[5][11][12](当初2016年3月31日までの予定だった[5])。
  • 2016年(平成28年)5月20日 - 4代目車両で運行再開[2][3][4]

駅一覧 編集

  • 山門駅
    • 「普明殿」という1992年完成の堂が、駅舎を兼ねている。
  • 多宝塔駅
    • ケーブルカー開通当時に建てられた「多宝塔礼堂」という堂が駅舎を兼ねている。

接続路線 編集

輸送実績 編集

年度 旅客輸送人員(千人)
1963 125
1966 224
1970 256
1979 300
1990 359
2000 288
  • 私鉄統計年報各年版、民鉄主要統計『年鑑世界の鉄道』1983年『年鑑日本の鉄道』1993.2003年

脚注 編集

  1. ^ 軌道法に基づく軌道路線を含めた場合、伊予鉄道連絡線(0.1km)が最短となる。
  2. ^ a b c 京都・鞍馬寺のケーブルカー、1年ぶり運転再開”. レスポンス (2016年5月20日). 2021年1月22日閲覧。
  3. ^ a b 【鞍馬寺】新型車輌 "牛若號Ⅳ"運行開始”. 鉄道ホビダス. 鉄道投稿情報局. ネコ・パブリッシング (2016年5月20日). 2021年1月22日閲覧。
  4. ^ a b 生まれ変わった鞍馬山鋼索鉄道。(上)”. 鉄道ホビダス. 編集長敬白. ネコ・パブリッシング (2016年5月31日). 2016年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月22日閲覧。
  5. ^ a b c 鞍馬山ケーブルが運休”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース. 交友社 (2015年5月11日). 2021年1月22日閲覧。
  6. ^ a b c 森口誠之 (2019年5月16日). “乗らずに歩いて…「鉄道事業者」鞍馬寺の願い”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2021年1月22日閲覧。
  7. ^ 生まれ変わった鞍馬山鋼索鉄道。(下)”. 鉄道ホビダス. 編集長敬白. ネコ・パブリッシング (2016年6月1日). 2016年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月22日閲覧。
  8. ^ 日本唯一、お寺が運営する鉄道 距離も日本最短 しかし「乗ることを勧められない」ワケ”. 乗りものニュース. p. 2 (2018年9月18日). 2023年6月4日閲覧。
  9. ^ 高田奈実 (2022年9月26日). “宗教法人の税制優遇はなぜ? 「銃撃」後に広がる疑問の声”. 毎日新聞. 2023年6月4日閲覧。
  10. ^ 入山に関して - 鞍馬寺
  11. ^ 改修運休に入った鞍馬山鋼索鉄道。(上)”. 鉄道ホビダス. 編集長敬白. ネコ・パブリッシング (2015年5月13日). 2015年5月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月22日閲覧。
  12. ^ 鞍馬山ケーブルカー、設備更新で運休中…来春から4代目車両に”. レスポンス (2015年6月8日). 2021年1月22日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集