2011年のマレーシアグランプリ (ロードレース)

2011年のマレーシアグランプリは、ロードレース世界選手権2011年シーズン第17戦として、10月21日から23日までマレーシアセパン・インターナショナル・サーキットで開催された。この年のレースでは、MotoGPクラスでマルコ・シモンチェリの事故死という悲劇が起こった。

マレーシアの旗   2011年のマレーシアグランプリ
レース詳細
2011年のロードレース世界選手権 全18戦中第17戦
決勝日 2011年10月23日
開催地 セパン・インターナショナル・サーキット
開催コース 常設サーキット
5.543km
MotoGP
ポールポジション ファステストラップ
スペインの旗 ダニ・ペドロサ 不明の旗 レース中止
2:01.462
表彰台
1. 不明の旗 レース中止
2. 不明の旗 レース中止 3. 不明の旗 レース中止


Moto2
ポールポジション ファステストラップ
スイスの旗 トーマス・ルティ ドイツの旗 ステファン・ブラドル
2:07.512 2:08.220
表彰台
1. スイスの旗 トーマス・ルティ
2. ドイツの旗 ステファン・ブラドル 3. スペインの旗 ポル・エスパルガロ


125 cc
ポールポジション ファステストラップ
スペインの旗 ニコラス・テロル スペインの旗 ニコラス・テロル
2:13.579 2:14.229
表彰台
1. スペインの旗 マーベリック・ビニャーレス
2. ドイツの旗 サンドロ・コルテセ 3. フランスの旗 ヨハン・ザルコ


概要 編集

125ccクラス 編集

125ccクラスではランキングトップのニコラス・テロルが、2番手のヨハン・ザルコに対し25ポイントのリードを持って今回のグランプリに臨んでおり、ザルコが1ポイントも差を詰められなければテロルのタイトルが確定する状況となっていた[1]

土曜日の予選では、テロルがシーズン7度目のポールポジションを獲得した。以下フロントロウにはエクトル・ファウベルサンドロ・コルテセが並んだ。ザルコはセッション序盤に転倒し、マシンを破損。修理に時間を費やすこととなり、終盤に再びコースインしたものの15番手に終わった[2]

日曜日の決勝レースでは、テロルが5台の集団バトルの主導権を終盤まで握っていた。しかしテロルはファイナルラップにハイサイドを起こして転倒寸前となりコースアウト、大きくタイムをロスして5位に終わった。レースを制したのはマーベリック・ビニャーレス(シーズン3勝目)、僅差の2位にはコルテセが続いた。そして3位には15番グリッドから追い上げを見せたザルコが入った。この結果チャンピオン争いでは、テロルとザルコの差は20ポイントに詰まって最終戦での決着を迎えることとなった[3]

Moto2クラス 編集

Moto2クラスでは、金曜朝のフリー走行のセッション開始早々に、局地的に雨が降った第10コーナーでジュール・クルーセルマルク・マルケスブラッドリー・スミスらが次々とクラッシュした。マルケスは全身を強打して金曜・土曜のフリー走行を欠場、スミスは左鎖骨を骨折して全セッション欠場となった[4]。セパンのオーガナイザーは降雨箇所の前でフラッグ(白地に赤のクロス旗)を掲示してライダーに危険を知らせるのを怠ったとして、罰金15,000ユーロが課せられた[5]

土曜日の予選では、トーマス・ルティが自身クラス初となるポールポジションを獲得。2番グリッドにはポイントリーダーのステファン・ブラドルが、3番手には自身初のフロントロウとなるミケーレ・ピロが続いた[6]。ブラドルを3ポイント差で追うマルケスは決勝出場を目指し、怪我を押して3周のみ走行し36番手のタイムを出した。しかし左目の視力に問題を抱えたまま翌日になっても回復しなかったため、結局決勝レースは欠場となった[7]

日曜日の決勝では、今回勝てばタイトルが確定するブラドルが序盤からレースをリードする。しかし2番手に付けていたルティが徐々に差を詰めて、17周目にトップに浮上した。18周目にはアクセル・ポンスのクラッシュにより赤旗が掲示され、19周の予定だったレースは17周終了時点をもって成立となった。結果ルティがクラス初優勝、ブラドルは2位に終わり、3位にはポル・エスパルガロが入った。タイトル決定は最終戦に持ち越しとなったものの、ブラドルはマルケスとの差を23ポイントと大きく広げた[8]

MotoGPクラス 編集

今回MotoGPクラスでは、前戦で左手薬指に重傷を負ったホルヘ・ロレンソの代役として、ヤマハのテストライダーである中須賀克行が参戦することとなった[9]。またリズラ・スズキチームからはワイルドカード枠でこのシーズン3度目の出場となるジョン・ホプキンスがエントリーした[10]。しかしホプキンスは前回出場した第11戦チェコGPで骨折した右手中指を固定していたボルトとプレートが動いてしまい、金曜のフリー走行を走ったのみで予選・決勝はまたも欠場となってしまった[11]

土曜日の予選ではダニ・ペドロサがシーズン2度目のポールポジションを獲得。2番手には新チャンピオンのケーシー・ストーナー、3番手にはアンドレア・ドヴィツィオーゾが続き、レプソル・ホンダチームが1997年オーストラリアGP[12]以来となるフロントロウ独占を果たした[13]

続いて2列目にはコーリン・エドワーズがヤマハ勢最上位の4番手に入る健闘を見せ、5番手にはマルコ・シモンチェリ、6番手にはニッキー・ヘイデンが続いた。7番手には250ccクラス時代からセパンを得意とする青山博一が入り、自身クラスベストグリッドを記録した[14]。前戦の予選で頭部を強打したベン・スピーズはフリー走行・予選と転倒を繰り返し再び頭部にダメージを負ったため、決勝はまたも欠場となった[15]

シモンチェリの死 編集

日曜の現地時刻午後4時、MotoGPクラスの決勝レースは始まった。スタートではレプソル・ホンダの3台がトップ3をキープし、続いてシモンチェリと8番手からスタートしたアルバロ・バウティスタが4位争いを展開していた。

2周目の第11コーナー、シモンチェリが前輪のグリップを失って転倒。コースを横断するようにマシンと共にスライドし、後方を走っていたエドワーズとバレンティーノ・ロッシの進路をふさぐ形となる。2人はシモンチェリを避けきれずに衝突、シモンチェリのヘルメットが衝撃で脱げる大事故となってしまった[16]。即座に赤旗が振られレースは中断となった。

心停止状態に陥ったシモンチェリは救急車で運ばれながら心肺蘇生法を施され、メディカルセンターでクリニカ・モバイルのスタッフらによる治療が尽くされたが[17]、4時56分に死亡が確認された。24歳没[18]。シモンチェリの救命処置に集中するために中断が続いていたレースは、そのまま中止となった[19]

Moto2クラス決勝結果 編集

順位 No ライダー マニュファクチャラー 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 12   トーマス・ルティ スッター 17 36:35.114 1 25
2 65   ステファン・ブラドル カレックス 17 +0.187 2 20
3 44   ポル・エスパルガロ FTR 17 +7.465 5 16
4 15   アレックス・デ・アンジェリス モトビ 17 +9.127 11 13
5 77   ドミニク・エガーター スッター 17 +11.494 20 11
6 36   ミカ・カリオ スッター 17 +11.903 7 10
7 51   ミケーレ・ピロ モリワキ 17 +12.568 3 9
8 40   アレックス・エスパルガロ ポンス カレックス 17 +12.963 6 8
9 29   アンドレア・イアンノーネ スッター 17 +14.098 13 7
10 45   スコット・レディング スッター 17 +16.697 9 6
11 34   エステベ・ラバト FTR 17 +19.568 12 5
12 54   ケナン・ソフォーグル スッター 17 +24.885 19 4
13 16   ジュール・クルーセル スッター 17 +25.345 18 3
14 63   マイク・ディ・メッリオ テック3 17 +26.696 17 2
15 19   ザビエル・シメオン テック3 17 +32.806 23 1
16 6   ホアン・オリベ FTR 17 +36.497 21
17 18   ジョルディ・トーレス スッター 17 +40.569 27
18 87   Mohamad Zamri Baba モリワキ 17 +56.756 28
19 20   Iván Moreno スッター 17 +1:05.966 32
20 86   Hafizh Syahrin モリワキ 17 +1:06.110 34
21 4   ランディ・クルメナッハ カレックス 17 +1:17.083 29
22 39   ロベルティーノ・ピエトリ スッター 17 +1:19.415 31
23 95   マシェル・アル・ナイミ モリワキ 16 +1 lap 35
NC 80   アクセル・ポンス ポンス カレックス 17 +32.9791 25
NC 9   ケニー・ノエス FTR 17 +33.1791 30
Ret 35   ラファエレ・デ・ロサ スッター 12 棄権 22
Ret 75   マティア・パシーニ FTR 8 アクシデント 10
Ret 64   サンティアゴ・エルナンデス FTR 7 アクシデント 26
Ret 23   アピワット・ウォンタナオン FTR 7 棄権 36
Ret 53   バレンティン・デビーズ FTR 6 棄権 24
Ret 72   高橋裕紀 モリワキ 5 棄権 4
Ret 71   クラウディオ・コルティ スッター 3 衝突 8
Ret 3   シモーネ・コルシ FTR 3 衝突 14
Ret 13   アンソニー・ウエスト MZ-RE ホンダ 1 衝突 16
Ret 76   マックス・ノイキルヒナー MZ-RE ホンダ 1 衝突 15
DSQ 68   ヨニー・エルナンデス FTR 8 失格 33
DNS 93   マルク・マルケス スッター 負傷
DNS 88   リカルド・カルダス モリワキ 負傷
DNQ 38   ブラッドリー・スミス テック3 負傷

注釈

  • ^1アクセル・ポンスケニー・ノエスは赤旗掲示後5分以内にピットレーンに戻ってこれなかったため、レギュレーションにより非完走扱いとなった[20]

125ccクラス決勝結果 編集

順位 No ライダー マニュファクチャラー 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 25   マーベリック・ビニャーレス アプリリア 18 40:34.280 7 25
2 11   サンドロ・コルテセ アプリリア 18 +0.354 3 20
3 5   ヨハン・ザルコ デルビ 18 +2.455 15 16
4 55   エクトル・ファウベル アプリリア 18 +2.921 2 13
5 18   ニコラス・テロル アプリリア 18 +10.049 1 11
6 94   ジョナス・フォルガー アプリリア 18 +17.964 6 10
7 63   ズルファミ・カイルディン デルビ 18 +38.706 13 9
8 84   ヤコブ・コーンフェール アプリリア 18 +39.099 11 8
9 23   アルベルト・モンカヨ アプリリア 18 +39.223 8 7
10 52   ダニー・ケント アプリリア 18 +40.237 10 6
11 7   エフレン・バスケス デルビ 18 +54.806 4 5
12 10   アレクシ・マスボー KTM 18 +1:07.891 14 4
13 99   ダニー・ウェブ マヒンドラ 18 +1:07.907 12 3
14 28   ジュゼップ・ロドリゲス アプリリア 18 +1:08.099 24 2
15 19   アレッサンドロ・トヌッチ アプリリア 18 +1:08.156 21 1
16 8   ジャック・ミラー KTM 18 +1:15.230 26
17 30   ジュリアン・ペドーネ アプリリア 18 +1:18.703 18
18 96   ルイ・ロッシ アプリリア 18 +1:18.913 17
19 50   ストゥーラ・ファーガーハウグ アプリリア 18 +1:30.270 28
20 32   アーサー・シシス アプリリア 18 +1:31.810 30
21 17   テイラー・マッケンジー アプリリア 18 +1:33.250 22
22 60   マヌエル・タタショア アプリリア 18 +1:50.690 29
23 40   Marco Colandrea アプリリア 18 +2:02.252 32
24 64   Farid Badrul デルビ 18 +2:16.968 31
Ret 14   ブラッド・ビンダー アプリリア 16 棄権 27
Ret 26   アドリアン・マルティン アプリリア 10 棄権 9
Ret 3   ルイジ・モルシアーノ アプリリア 8 衝突 25
Ret 21   ハリー・スタフォード アプリリア 8 衝突 19
Ret 77   マルセル・シュロッター マヒンドラ 5 アクシデント 16
Ret 39   ルイス・サロム アプリリア 0 衝突 5
Ret 53   ジャスパー・イウェマ アプリリア 0 衝突 20
Ret 36   ホアン・ペレロ アプリリア 0 衝突 23

脚注 編集

  1. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/Malaysia+Sepang+125+preview
  2. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+125+qp
  3. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+125+race
  4. ^ http://www.motorcyclenews.com/MCN/sport/sportresults/MotoGP/2011/October/oct2111-injury-rules-bradley-smith-out-sepang-moto2-race/
  5. ^ http://www.cyclenews.com/articles/road-racing/2011/10/22/marquez-out-of-sepang/
  6. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+moto2+qp
  7. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/Malaysia+Sepang+Moto2+Team+CatalunyaCaixa+Rapsol+Marc+Marquez
  8. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+moto2+race
  9. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/katsuyuki+nakasuga+replaces+lorenzo+for+sepang
  10. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+suzuki+hopkins+wildcard+0
  11. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/Hopkins+forced+to+withdraw+from+Malaysian+GP
  12. ^ 当時はグリッド1列が4台で、レプソルホンダはPPミック・ドゥーハン、2番手アレックス・クリビーレ、3番手青木拓磨、4番手岡田忠之でフロントロウを独占した
  13. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+friday+qp+pedrosa
  14. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/malaysia+sepang+motogp+qp
  15. ^ http://www.motogp.com/ja/news/2011/Ben+Spies+to+withdraw+from+Malaysian+Grand+Prix
  16. ^ http://uk.eurosport.yahoo.com/23102011/66/simoncelli-dies-injuries.html
  17. ^ http://f1-gate.com/motogp/simoncelli_13335.html
  18. ^ http://www.honda.co.jp/HRC/news/topics/20111023/
  19. ^ http://www.supersport.com/motorsport/motogp/news/111023/Sepang_race_abandoned_after_crash
  20. ^ FIM Road Racing World Championship: Grand Prix Regulations 2011” (PDF). fim-live.com. FIM. p. 39. 2011年10月25日閲覧。 “Within 5 minutes after the red flag has been displayed, riders who have not entered the pit lane, riding on their motorcycle, will not be classified.”

参考文献 編集


前戦
2011年のオーストラリアグランプリ
ロードレース世界選手権
2011年シーズン
次戦
2011年のバレンシアグランプリ
前回開催
2010年のマレーシアグランプリ
  マレーシアグランプリ 次回開催
2012年のマレーシアグランプリ