2021年モナコグランプリ (2021 Monaco Grand Prix) は、2021年のF1世界選手権第5戦として、2021年5月23日モンテカルロ市街地コースで開催された。

モナコの旗 2021年モナコグランプリ
レース詳細
日程 2021年シーズン第5戦
決勝開催日 5月23日
開催地 モンテカルロ市街地コース
モナコの旗 モナコ モンテカルロ
コース 市街地コース
コース長 3.337km
レース距離 78周(260.286km)
決勝日天候
ポールポジション
ドライバー
タイム 1:10.346
ファステストラップ
ドライバー イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
タイム 1:12.909(69周目)
決勝順位
優勝
2位
3位

正式名称は「Formula 1 Grand Prix De Monaco 2021[1]

背景 編集

新型コロナウイルス感染症の世界的流行による影響
2020年も当初のスケジュールでは2020年シーズンの第7戦として開催される予定[2]であったが、感染症の影響で中止が決定され、モナコでF1が開催されないのは1954年以来となった[3]。今シーズンも開催予定であったものの、感染症の影響で予断を許さない状況であったが、例年より早くサーキットの建設作業を開始するなどの対応もあり、開催が確定。2年ぶりのモナコGP開催となる[4]
タイヤ
本レースでピレリが用意するドライタイヤのコンパウンドは、ハード(白):C3、ミディアム(黄):C4、ソフト(赤):C5の最も柔らかい組み合わせとなっている[5]
トラックリミット
FIAはトンネルを抜けた先のターン10・11から構成されるシケイン、別称ヌーベル・シケインにコース域外走行についての監視を強化する。フリー走行と予選はその周のラップタイムが抹消され、決勝では3回はみ出すと警告を意味するブラック&ホワイトフラッグが掲示され、4回を超えるとペナルティが科される場合がある[6]
その他
マクラーレンは、同GPに限り、戦略的パートナーシップを締結しているガルフのロゴの配色を意識したカラーリングに変更して出走する[7]

エントリー 編集

前戦スペインGPから変更なし。

フリー走行 編集

FP1[9]
同セッションで首位に立ったのはセルジオ・ペレスフェルナンド・アロンソが最終コーナーで曲がり切れずバリアに突っ込み、フロント左側のウイングを破損。デブリ回収のためにバーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入されたものの、同セッションはそれ以外の波乱はなく、各車順調に走行距離を重ねた。
FP2[10]
同セッションで首位に立ったのはシャルル・ルクレール。2番手にカルロス・サインツが入り、フェラーリとしては2シーズンぶりのセッション別でのワンツー体制を記録した[11]。一方で今季デビューの二人はモンテカルロの餌食となり、角田裕毅がセッション序盤にリアをバリアに衝突させピットイン。サスペンションが損傷した事で時間内の修復は叶わず、僅か11周で走行時間を終える形となり[12]、ミック・シューマッハはセッション残り10分を切った時にターン3でアウト側のバリアに激突してしまいそのままマシンを降りた[13]。また、シューマッハがヌーベルシケイン脇にクルマを停めたため、車両及びデブリ回収のために赤旗が振られ、セッションはそのまま終了した。
FP3[14]
同セッションで首位に立ったのはフェルスタッペン。セッション終盤、ニコラス・ラティフィがセクター3でバランスを崩してガードレールに衝突し右フロント部分を破損。そのマシン回収のため、赤旗が出されたが、回収作業は迅速に終わり、セッションは再開。その直後、ミック・シューマッハがカジノコーナー(ターン4)へのアプローチでリアを滑らせバリアに激突。マシンは車体左側を中心に大きく破損し、赤旗が振られた。終了間際だったこともあり、セッション自体は赤旗終了となった。
フリー走行では、フェラーリが全セッションでトップ3に入る好調さを見せ[11]、レッドブルも速さを見せたが[15]、今回はメルセデスが苦戦。FP2でルイス・ハミルトンが3番手に入っただけで終わった[16]

予選 編集

2021年5月22日 15:00 CEST(UTC+2)(出典先を参照「[17]」)

結果的に最速タイムを記録したシャルル・ルクレールがポールポジション(PP)を獲得。フェラーリとしては2019年メキシコグランプリ以来のPP獲得となった[注 1]。しかし、予選Q3は各車1回目のアタックが終了し、多くのドライバーが2回目のアタックを敢行する中、ルクレールがセクター3でクラッシュ。同時に赤旗が振られたうえ、セッション終了間際でもあったため、そのまま予選は終了。これにより、1回目のアタックで計測されたタイムで順位が決まる結果となった。だが、これによって2回目のアタックを中止させる結果となったため、どこか不完全燃焼に終わった。実際、マックス・フェルスタッペンカルロス・サインツは、2回目のアタックにてセクター2までのタイムに関して改善することに成功しており、理論上PPを取っていた可能性もあったため、ルクレールのクラッシュには理解を示しつつも複雑な心境を吐露した[18]。また赤旗の原因を作ったルクレールはこのクラッシュによる「ツケ」が回ってくる事となる。

予選結果 編集

出典先を参照([19]

決勝 編集

2021年5月23日 15:00 CEST(UTC+2)

  • 特記が無い場合以下の出典を参照「[20]

2番手スタートのマックス・フェルスタッペンがスタート直後から首位を独走しそのままチェッカーを受けた。

展開 編集

レースとしての展開は、派手なものはなく、アンダーカットとオーバーカットというピット戦略[21]によって生じた順位変動のみで、コース上のオーバーテイクはオープニングラップで起きた1回のみであった。

タイトル争いで言えば、ルイス・ハミルトンがアンダーカットを仕掛けて順位を上げようとしたが失敗し7位入賞[22][23]に終わったうえ、メルセデスとしてもバルテリ・ボッタスのピットインにて、タイヤ交換のトラブルが発生し、タイヤ交換ができない事態となってしまったためリタイアを強いられる結果[24][25]となり、直近のライバル、フェルスタッペンとレッドブルが大量得点となったため、両タイトルのポイントリーダーの座から陥落する結果となった。

また、予選でクラッシュしたシャルル・ルクレールだが、ギアボックスの損傷が疑われたものの、出走に問題なし[26]として交換せずに決勝に挑んだが、レース開始前のレコノサンスラップ中に問題が発生。チームはスタートまでに修復することが不可能と判断し、ルクレールはレース欠場となった[27]。ただし、当初は左のドライブシャフトに問題が発生したためであり、少なくともギアボックスの故障ではないことが発表[28]されていたが、チームの拠点でマシン全体を再調査した結果、左リアのホイールハブにクラックがあったことも判明し、最終的な結論としては予選クラッシュの影響でドライブシャフトやハブの故障が起きたことがリタイアの原因と発表した[29]。ただし、該当箇所についてはこの種の衝撃があった際のチェック対象リストに含まれないものであったうえ、この手の事故によってハブが破損した事例はこれまでになかったとコメントしている[30]

補足
  • 以下の内容の参考出典先「[31][32]

ルクレールはレコノサンスラップより前にグリッド降格の事態にはならなかったため、規定上はルクレールがポールポジション(PP)を獲得したという扱いとなる。ただし、レコノサンスラップ開始後に「DNS=スタートせずリタイア」となったため、グリッドの位置が変更されると思われがちだが、「スターティンググリッドからレースをスタートできないマシンがいる場合(ピットスタートやリタイアなど)は、その位置を空けて各車が並ぶ決まりになっている。繰り上がりは行われない」という規定上、記録において急遽フェルスタッペンがPP獲得者になるわけではない。そのため、記録上では2番手スタートのフェルスタッペンが優勝したという扱いとなる。

レース結果 編集

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 Grid Pts.
1 33   マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ 78 1:33:07.680 2 25
2 55   カルロス・サインツ フェラーリ 78 +15.841 4 18
3 4   ランド・ノリス マクラーレン-メルセデス 78 +26.610 5 15
4 5   セバスチャン・ベッテル アストンマーティン-メルセデス 78 +54.616 8 12
5 11   セルジオ・ペレス レッドブル-ホンダ 78 +63.671 9 10
6 10   ピエール・ガスリー アルファタウリ-ホンダ 78 +73.768 6 8
7 44   ルイス・ハミルトン メルセデス 78 +74.670 7 7FL
8 18   ランス・ストロール アストンマーティン-メルセデス 77 +1 Lap 13 4
9 31   エステバン・オコン アルピーヌ-ルノー 77 +1 Lap 11 2
10 99   アントニオ・ジョヴィナッツィ アルファロメオ-フェラーリ 77 +1 Lap 10 1
11 7   キミ・ライコネン アルファロメオ-フェラーリ 77 +1 Lap 14
12 3   ダニエル・リカルド マクラーレン-メルセデス 77 +1 Lap 12
13 14   フェルナンド・アロンソ アルピーヌ-ルノー 77 +1 Lap 17
14 63   ジョージ・ラッセル ウィリアムズ-メルセデス 77 +1 Lap 15
15 6   ニコラス・ラティフィ ウィリアムズ-メルセデス 77 +1 Lap 18
16 22   角田裕毅 アルファタウリ-ホンダ 77 +1 Lap 16
17 9   ニキータ・マゼピン ハース-フェラーリ 75 +1 Lap 19
18 47   ミック・シューマッハ ハース-フェラーリ 75 +2 Laps 20
19 77   バルテリ・ボッタス メルセデス 29 ホイールナット 3
Ret 16   シャルル・ルクレール フェラーリ - ドライブシャフト 1
ソース:[33][34][35]

追記 編集

  • ^FL - ファステストラップの1点を含む

第5戦終了時点のランキング 編集

  • :ドライバー、コンストラクター共にトップ5のみ表示。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ただし、同GPではPPを獲得していたマックス・フェルスタッペンにグリッド降格ペナルティが科されたために繰り上げで得たPP獲得のため、チームとして自力で獲得したのはメキシコGPの一つ前の日本GP以来となる。

出典 編集

  1. ^ Monaco”. The Official F1 Website. 2021年5月23日閲覧。
  2. ^ 2020年F1カレンダーが承認、日本GPは10月11日に開催。史上最多22戦の過密スケジュールでテストが大幅縮小へ”. autosport Web (2019年10月5日). 2021年5月23日閲覧。
  3. ^ 延期発表から一転……伝統のF1モナコGP“中止”が正式決定”. jp.motorsport.com (2020年3月20日). 2021年5月23日閲覧。
  4. ^ 朗報!モナコ政府、2年ぶりのF1グランプリ開催に向けモンテカルロ市街地コースの建設を開始formula1-data.com(2021年2月18日)2021年5月23日閲覧。
  5. ^ ピレリ、2021年シーズンの各F1グランプリに持ち込むタイヤコンパウンドを一挙発表”. jp.otorsport.com (2021年2月19日). 2021年5月23日閲覧。
  6. ^ F1モナコGP:論争の的”ヌーベルシケイン”にトラックリミットformula1-data.com(2021年5月20日)2021年5月23日閲覧。
  7. ^ マクラーレン、F1モナコGPにガルフカラーのMCL35Mを投入formula1-data.com(2021年5月17日)2021年5月23日閲覧。
  8. ^ Models in 2021”. STATS F1. 2021年5月23日閲覧。
  9. ^ ホンダ、最速含むトップ4に3台!角田裕毅も上位10台に…母国ルクレールは受難4周 / F1モナコGP《FP1》結果とダイジェストformula1-data.com(2021年5月20日)2021年5月23日閲覧。
  10. ^ 角田裕毅とシューマッハがモンテカルロの餌食に…赤旗終了で地元ルクレールが最速締め / F1モナコGP《FP2》結果とダイジェストformula1-data.com(2021年5月20日)2021年5月23日閲覧。
  11. ^ a b フェラーリ:ギアボックスに問題発生も1-2締め「調子に乗るわけにはいかない」とルクレールformula1-data.com(2021年5月21日)2021年5月23日閲覧。
  12. ^ 角田裕毅、バリアに激突…サス破損で走行打ち切りも「世界が終わったわけじゃない」formula1-data.com(2021年5月21日)2021年5月23日閲覧。
  13. ^ ミック・シューマッハ、FP2でバリアに激突も前向き「おかげで限界が分かった」formula1-data.com(2021年5月21日)2021年5月23日閲覧。
  14. ^ 跳馬の速さは本物もフェルスタッペンが最速…角田19番手、シューマッハ事故で再び赤旗 / F1モナコGP《FP3》結果とダイジェストformula1-data.com(2021年5月22日)2021年5月23日閲覧。
  15. ^ セルジオ・ペレス、最速発進もFP2で8番手…後退の原因はセットアップか「変更が裏目に出たかも」formula1-data.com(2021年5月21日)2021年5月23日閲覧。
  16. ^ メルセデス「フェラーリは”真の”優勝候補」レッドブル・ホンダを含めた三つ巴の戦いを予想formula1-data.com(2021年5月21日)2021年5月23日閲覧。
  17. ^ 劇的結末…母国ルクレールが最速、だがポールがフェルスタッペンに渡るシナリオも / F1モナコGP《予選》結果とダイジェストformula1-data.com(2021年5月22日)2021年5月23日閲覧。
  18. ^ 失望と怒り…ルクレールの赤旗がなければポールだった、とフェルスタッペンとサインツformula1-data.com(2021年5月23日)2021年5月24日閲覧。
  19. ^ FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2021 - QUALIFYINGwww.formula1.com 2021年5月24日閲覧。
  20. ^ フェルスタッペン今季2勝目!レッドブル・ホンダと共に選手権首位に浮上 / F1モナコGP《決勝》結果とダイジェストformula1-data.com(2021年5月43日)2021年5月24日閲覧。
  21. ^ ピレリ 2021年F1第5戦モナコGP レースレポートwww.as-web.jp(2021年5月24日)2021年5月24日閲覧。
  22. ^ ハミルトン、モナコ7位で危機感? 「こうしたレースを繰り返す余裕はウチには無い」とチームに発破jp.motorsport.com(2021年5月24日)2021年5月24日閲覧。
  23. ^ アンダーカット作戦が唯一のチャンスだった? メルセデス「ハミルトンの不満は分かるが……」jp.motorsport.com(2021年5月25日)2021年5月25日閲覧。
  24. ^ ボッタス、ピットストップでタイヤが外れず無念のリタイア……「起きてはならないトラブル」jp.motorsport.com(2021年5月24日)2021年5月24日閲覧。
  25. ^ モナコで外れなかったボッタスの右フロントタイヤ……ファクトリーに戻らないと外せない??jp.motorsport.com(2021年5月25日)2021年5月25日閲覧。
  26. ^ F1モナコGP:シャルル・ルクレールのポール確定、ギアボックス交換せずに決勝へformula1-data.com(2021年5月23日)2021年5月24日閲覧。
  27. ^ F1モナコGP速報:母国ポールシッターのルクレール、決勝直前にドライブシャフト故障でレース出走ならずformula1-data.com(2021年5月23日)2021年5月24日閲覧。
  28. ^ F1モナコGP:悲劇のヒーロとなったルクレール、欠場原因は予選クラッシュとは無関係かformula1-data.com(2021年5月24日)2021年5月24日閲覧。
  29. ^ 【フェラーリ】ルクレールのギアボックスを交換していてもあのトラブルは発生していただろうとチーム代表www.topnews.jp(2021年5月25日)2021年5月25日閲覧。
  30. ^ 一転…フェラーリ、ルクレールのF1モナコでのDNSの原因は予選クラッシュformula1-data.com(2021年5月25日)2021年5月25日閲覧。
  31. ^ F1レギュレーション「決勝レース編」formula1-data.com(2017年2月15日)2021年5月24日閲覧。
  32. ^ スターティンググリッドformula1-data.com(2017年3月1日)2021年5月24日閲覧。
  33. ^ FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2021 - RACE RESULT”. Formula 1 (2021年5月23日). 2022年2月7日閲覧。
  34. ^ FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2021 - FASTEST LAPS”. Formula 1 (2021年5月23日). 2022年2月7日閲覧。
  35. ^ 『F1速報2021年総集編』株式会社三栄、2021年12月28日、175頁。 
  36. ^ 2021 Formula One Monaco Grand Prix - Driver Standings”. results.motorsportstats.com. 2021年5月24日閲覧。
  37. ^ 2021 Formula One Monaco Grand Prix - Team Standings”. results.motorsportstats.com. 2021年5月24日閲覧。
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