シクロホスファミド英語: Cyclophosphamide、略称:CPA)は、アルキル化剤に分類される抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)、免疫抑制剤である。製造販売元は塩野義製薬で、商品名はエンドキサン (Endoxan)。

シクロホスファミド
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能>75%(経口投与)
血漿タンパク結合12~24%
代謝肝臓(主にCYP2B6)
半減期2.8~8.7時間
排泄尿中 (68%)
糞中 (1.8%)
呼気中 (0.9~1.4%)
※いずれも4日以内
識別
CAS番号
50-18-0
ATCコード L01AA01 (WHO)
PubChem CID: 2907
DrugBank APRD00408
KEGG D07760
化学的データ
化学式C7H15Cl2N2O2P・H2O
分子量279.10
物理的データ
融点45 °C (113 °F)
テンプレートを表示

初の抗がん剤ナイトロジェンマスタードの誘導体としてドイツ(現・バクスター社)で開発され、同じく日本で開発されたナイトロジェンマスタード誘導体・ナイトロミンに代わって広く用いられることになった。プロドラッグであり、肝臓で代謝され、活性を持つようになる。

水やエタノールに可溶のアルキル化剤で、DNA合成を阻害する。また、抗体産生中のBリンパ球の増殖を妨げるので、免疫抑制作用があり、臓器移植時の拒絶反応を抑える免疫抑制剤として使われるほか、膠原病全身性エリテマトーデス血管炎症候群多発血管炎性肉芽腫症など)の治療の際のエンドキサンパルス療法などで使用することもある。

世界保健機関 (WHO) の下部組織によるIARC発がん性リスク一覧グループ1に属する。ヒトに対する発癌性の十分な証拠がある。

効能・効果

編集
  1. 下記疾患の自覚的ならびに他覚的症状の緩解。
  2. 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法。
    • 乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)
  3. 下記疾患における造血幹細胞移植の前治療。
  4. 治療抵抗性の下記リウマチ性疾患
  5. ネフローゼ症候群 - 2011年(平成23年)9月より適応となった[1]:19番
  6. 褐色細胞腫 - 2013年(平成25年)3月25日より公知申請によって薬事承認された[1]:61番
  7. HLA半合致移植を受ける患者の移植片対宿主病 (GVHD) の抑制[2]

重大な副作用

編集

ショックアナフィラキシー様症状、骨髄抑制、出血性膀胱炎排尿障害イレウス、胃腸出血、間質性肺炎肺線維症心筋障害心不全抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (SIADH)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群、SJS)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群、TEN)、肝機能障害、黄疸、急性腎不全横紋筋融解症[3][4][5]

製剤の調製および投与患者の体液等の取り扱い

編集

シクロフォスファミドには揮発性があることが知られている[6]。製剤の調製に際しては無菌ドラフトで実施するのはもちろんのこと、手袋も二重に着用することが強く推奨される。また調剤担当者だけでなく看護担当者も皮膚への付着による曝露、揮発した製剤成分の吸入防止のため防護具・防護衣の着用が必要である[7]

シクロフォスファミドに限らず、がんの化学療法を実施中の患者の体液や排泄物にも抗がん剤そのものやその代謝物質が含まれるため、それらの取り扱いにも同様の注意が必要である。

出典

編集
  1. ^ a b c 公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について 厚生労働省 2021年9月6日更新 2021年9月22日閲覧。
  2. ^ https://www.ssk.or.jp/pressrelease/pressrelease_r03/press_030927_2.files/030927_25_ika.pdf
  3. ^ エンドキサン錠50mg 添付文書” (2015年3月). 2015年9月17日閲覧。
  4. ^ 経口用エンドキサン原末100mg 添付文書” (2015年3月). 2015年9月17日閲覧。
  5. ^ 注射用エンドキサン100mg/注射用エンドキサン500mg 添付文書” (2015年6月). 2015年9月17日閲覧。
  6. ^ 藪中裕美、坂口 史明、小林 由佳、中西 弘和「注射用エンドキサン®の揮発性に関する調査」『医療薬学』第36巻第5号、2010年、343‐346、doi:10.5649/jjphcs.36.3432024年8月29日閲覧 
  7. ^ 化学療法中患者の看護にあたる看護師の抗がん剤による職業性曝露―尿中シクロホスファミドとα-フルオロ-βアラニンの定量分析―」『産業衛生学雑誌』第58巻第5号、2016年9月20日、164‐172、doi:10.1539/sangyoeisei.2016-005-E2024年8月29日閲覧 

関連項目

編集