アンビリック・トーラス

アンビリック・トーラスもしくはアンビリック・ブレスレットは、をそれぞれ1つしか持たない3次元物体である。その唯一の辺と面は輪を3周回ることで元の位置に戻る構成となっている。断面デルトイドであるため、デルトイド柱を120°ひねり、他方の端に貼り合わせた図形ともいえる。

キャンベラにあるジョン・ロビンソン(彫刻家)による Eternity (1981)

アンビリック・トーラスは特異性理論の数学的対象であり、特に実3次関数によって決定される臍点の分類において扱われる。この3次関数と等価なクラスは3次元の実射影空間を形成し、2次曲線放物線放物線形の部分集合が、表面を定義する。その1つがこのアンビリック・トーラスであり、1976年にクリストファー・ゼーマンによってアンビリック・ブレスレットと命名された[1]

トーラスは、次のパラメトリック方程式によって定義される[2]

他の図形との関連 編集

2次元空間の円は、1本の辺しかない1次元の輪(円環)で、その断面は0次元の点となる。3次元空間のメビウスの帯は、1本の辺しかない2次元の面で、その断面は0次元の線となる。そしてこのアンビリック・トーラスは3次元立体で、1本の辺しかない3次元の立体で、その断面は2次元のデルトイドとなる。円、メビウスの帯、アンビリック・トーラスはそれぞれ1、2、3次元のリング状といえる[3]

アート 編集

1989年、ジョン・ロビンソンはアンビリック・トーラスによく似た Eternity という名の彫刻を作った。この彫刻はデルトイドではなく三角形の断面を持つため、厳密にはアンビリック・トーラスではない。また、イアン・ポーティスの『Geometric Differentiation』の表紙に採用された。

ヒラマン・ファーガソンはアンビリック・トーラスの69センチメートル(27インチ)の銅製の彫刻を作り、彼の代表作となった。2010年にはジェームズ・シモンズニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のSimons Center for Geometry and Physics付近にアンビリック・トーラスの彫刻を発注したと発表された。この彫刻は鋳造ブロンズでできており、ステンレス製の支柱に取り付けられている。彫刻の総重量は65トンで高さは8.5メートル(28フィート)、トーラスの直径は花崗岩の土台と同じ直径7.3メートル(24フィート)である。また、トーラスを定義する数式が土台に記されている。2012年9月に取り付けが完了した[4]

出典 編集

  1. ^ Porteous, Ian R. (2001), Geometric Differentiation, For the Intelligence of Curves and Surfaces (2nd ed.), Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-00264-6 
  2. ^ Larson, Roland E., et al.
  3. ^ 小野満麿. “アンビリック・トーラス(The umbilic torus)”. 2018年10月3日閲覧。
  4. ^ Helaman Ferguson, "Two Theorems, Two Sculptures, Two Posters", American Mathematical Monthly, Volume 97, Number 7,August-September 1990, pages 589-610.

関連項目 編集

外部リンク 編集