インナー・ヘブリディーズ

インナー・ヘブリディーズ英語:Inner Hebridesスコットランド・ゲール語:Na h-Eileanan a-staigh)は、スコットランド西岸に連なる列島であるヘブリディーズ諸島の一部。アウター・ヘブリディーズの南から東に位置する。36の有人島、43の無人島がある。

インナー・ヘブリディーズの位置

主な経済活動は、観光、囲い地で行われる農業漁業ウィスキー醸造である。現在、インナー・ヘブリディーズは南北に分かれ2つの独立した地方自治管区を形成している。

様々な重要な先史時代の遺跡があり、その多くは古代のギリシャ、ローマの記述家たちによって書き残されている。歴史上最古の移住者は、北へ向かったピクト人、南のダルリアダ王国ゲール人、そしてダルリアダ後の支配者となった島嶼王国(en)のノース人たちであった。ノース人支配は、1266年のパース条約の締結でスコットランド王国に支配権が移るまで続いた。島々の管理はクラン、主にマクリーン氏族、マクラウド氏族、マクドナルド氏族らによって行われていた。19世紀に行われたハイランド一掃(enハイランダーの強制移住)の結果、多くのコミュニティーが壊滅的な状況に置かれ、近年人口減少がやっと止まっている。

海上輸送が非常に重要で、フェリーがグレートブリテン本土と島嶼部との間に運航されている。ゲール語が一部地域でいまだ根強く残り、その自然は芸術家たちに様々なインスピレーションを与えてきた。多様な野生生物が存在する。

地理 編集

インナー・ヘブリディーズの南部はアーガイルに属する。この地方は古代のダルリアダ王国の心臓部におおむね符合する。そして現在のユニタリー、アーガイル・アンド・ビュートに属する。北部の島々はかつてインヴァネスシャイアの郡部であった。現在はハイランド・カウンシル・エリアに属する。

主な島 編集

面積の広い10の島をあげる。

島名 ゲール語名 面積 (ha)[1] 人口[2] 標高最高地点[3] 高さ (m)[4]
コル島 Colla 7,685 164 Ben Hogh 104
コロンゼー島 Colbhasa 4,074 143 Carnan Eoin 104
エッグ島 Eige 3,049 67 An Sgurr 393
アイラ島 Ìle 61,956 3,457 Beinn Bheigeir 491
ジュラ島 Diùra 36,692 188 Beinn an Òir 785
マル島 Muile 87,535 2,667 Ben More 966
ラーゼイ島 Ratharsair 6,231 192 Dùn Caan 444
ラム島 Rùm 10,463 22 Askival 812
スカイ島 An t-Eilean Sgitheanach 165,625 9,232 Sgurr Alasdair 993
タイリー島 Tioridh 7,834 770 Ben Hynish 141

島によって地形と地質は変化に富む。スカイ島マル島は山がちであり、一方でタイリー島は比較的平坦である。海岸部は、肥沃で平らな草の自生する低地が占める[5]。多くの島は強い潮に囲まれており、スカルバ島ジュラ島の間のCorryvreckan tide raceは、世界最大の渦潮の1つである[6]

気候 編集

大西洋メキシコ湾流の影響が、穏やかな海洋性気候を生み出している。気温は総じて低く、1月の平均気温は6.5℃、7月は15.4℃である(スカイ島、トロッターニッシュ湾にあるダントゥルムにおけるデータ)[7][8]。雪はめったに海上になく、霜は本土よりも少ないくらいである。風速が1時間128kmという厳しさのために植生が制限される。南からの偏西風が一般的である。降雨量は高く、1年で1300mmから2000mmである。そのために標高の高い小山や丘がより湿潤である[9][10]。タイリー島はインナー・ヘブリディーズで最も日照時間が長い土地柄であり、1975年の晴天日は300日であった。トロッターニッシュ湾で最も晴天日の多い5月には、日照時間は200時間であった[11][12]

スカイ島、ダントゥルムの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C°F 6.5
(43.7)
6.6
(43.9)
8.1
(46.6)
9.6
(49.3)
12.4
(54.3)
14.3
(57.7)
15.4
(59.7)
15.7
(60.3)
14.2
(57.6)
11.5
(52.7)
9.1
(48.4)
7.6
(45.7)
10.9
(51.6)
平均最低気温 °C°F 2.4
(36.3)
2.2
(36)
3.3
(37.9)
4.3
(39.7)
6.5
(43.7)
8.7
(47.7)
10.4
(50.7)
10.7
(51.3)
9.4
(48.9)
7.2
(45)
5.1
(41.2)
3.6
(38.5)
6.2
(43.2)
降水量 mm (inch) 148.3
(5.84)
99.8
(3.93)
82.3
(3.24)
86.4
(3.40)
72.9
(2.87)
85.1
(3.35)
97.3
(3.83)
112
(4.41)
128.3
(5.05)
152.4
(6.00)
143
(5.63)
141.7
(5.58)
1,349.5
(53.13)
出典:[7]

言語 編集

 
2001年調査による、スコットランドのゲール語話者地理的分布

聖コルンバの時代から、またはそれ以前からインナー・ヘブリディーズではゲール語が話されており、現代的に進化したスコットランド・ゲール語が一部地域で強いままである。しかし、1872年のスコットランド教育法によって、ゲール人は数世代にわたり教室においてゲール語の使用を禁じられることとなった。このことが今、ゲール語使用に大きな打撃を与えたと認識されている。1930年代後半まで、学校でゲール語を話した児童は殴られていた[13]。さらに最近の2005年、スコットランド議会によって、ゲール語の継続的支援を提供するゲール語法が制定された[14]

脚注 編集

  1. ^ Haswell-Smith (2004) pp. 30, 79, 130, 148 and 182 except estimates from Ordnance Survey maps as indicated.
  2. ^ General Register Office for Scotland (28 November 2003) Occasional Paper No 10: Statistics for Inhabited Islands. (pdf) Retrieved 22 Jan 2011
  3. ^ Haswell-Smith (2004) and Ordnance Survey maps.
  4. ^ Ordnance Survey maps.
  5. ^ McKirdy et al (2007) p. 224
  6. ^ The Corryvreckan is regularly cited as the third largest whirlpool of the world - see for example "Corryvreckan Whirlpool " Gazetteer for Scotland. Retrieved 19 September 2009. Some sources suggest it is the second largest after the Moskstraumen.
  7. ^ a b Cooper (1983) pp. 33-5. Averages for rainfall are for 1916-50, temperature 1931-60.
  8. ^ See also "Weather Data for Staffin Isle of Skye". carbostweather.co.uk. Retrieved 7 June 2008.
  9. ^ Murray (1966) p. 147.
  10. ^ "Regional mapped averages". Met Office. Retrieved 28 Dec 2010.
  11. ^ Murray (1973) p. 79.
  12. ^ For Islay data see "Islay weather and climate" www.islayinfo.com. Retrieved 28 Dec 2010.
  13. ^ "Gaelic Education After 1872" simplyscottish.com. Retrieved 28 May 2010.
  14. ^ "The Gaelic Language Act ", Bòrd na Gàidhlig. Retrieved 6 Mar 2011.

関連項目 編集