エクスムーアの皇帝

エクスムーアの皇帝(エクスムーアのこうてい、: Emperor of Exmoor[1]は、イギリスイングランドエクスムーア英語版国立公園に生息していた野生のオスのアカシカ (Cervus elaphus) である。2010年10月に射殺されたと報じられた[2][3][4][5]。体重は300ポンド(136キログラム)以上、体高は約9フィート(2.7メートル)と推定されている[2]。エクスムーア国立公園に生息するアカシカは、その食性からスコットランドのアカシカよりも大型であり[6]、イギリス国内に生息する最大の野生動物である。この鹿は、一帯で何度も目撃されていたことから、写真家のリチャード・オースティン (Richard Austin) によってこのあだ名が付けられた[2]

遺体が発見された時期はアカシカの発情期で、デヴォン州ティバートン英語版バーンスタプル英語版の間のA361号国道の近くで発見されたと報告されている[7]

2発の銃声を聞いたという男性の証言があり[8]、免許を持った猟師に射殺されたと報じられている[2][7]。一方で、この個体が生きているのを数日以内に見たという報告もあり[9]、男性の証言はでっち上げではないかという指摘もある。報告された事実を実際に検証できることはほとんどない。『ガーディアン』紙はこの話を「神話」(a myth) と呼んでいる[10]

この個体は、報告された時点では12歳前後と考えられているが、健康であった[3][7]。高齢の動物は、特に切歯がすり減って冬を乗り切るのが難しくなるため、淘汰されることもある。しかし、かつて鹿の管理に従事していた元職員は、「エクスムーアの皇帝は最高の状態を過ぎ始めていたが、間違いなくまだ淘汰される段階ではなかった」と述べている[8]

同じ観察者は、発情期の鹿を撃つ行為について、「我々は基準を維持し、この重要な時期には全ての鹿撃ちを止めるべきだ」と述べている[7]。しかし、この行為は合法であり、国立公園当局は、種の管理と地域経済の両方の面で狩猟の重要性を主張している[11]

イギリスでは、1991年の鹿法英語版に基づき、鹿撃ち英語版は合法であるが、狩猟者は土地所有者の許可を得なければならない[3]。狩猟により得た鹿の頭部(ハンティング・トロフィー)は、1千ポンド以上で取引されることもある[7]。エクスムーアの皇帝が狩猟により死亡した可能性があることから、何人かの国会議員が、イギリス国内での野生動物の狩猟を禁止するアーリーデイ・モーション英語版に署名した[12]

2011年12月、デヴォン州ボラム英語版のハートノールホテルに、エクスムーアの皇帝によく似た鹿の頭部が飾られた。ホテルは脅迫を受け、頭部は撤去された[13]

脚注編集

  1. ^ “交通事故で年間7万4000頭の野生シカが犠牲に、英国”. AFP. (2010年10月27日). https://www.afpbb.com/articles/-/2769991 2021年1月2日閲覧。 
  2. ^ a b c d Exmoor, Emperor Stag, shot dead. The Guardian, 25 October 2010.
  3. ^ a b c Fury over Britain's largest wild animal shot dead. The Daily Express, 25 October 2010.
  4. ^ U.K. furious over killing of majestic stag. The Toronto Star (Canada), 25 October 2010.
  5. ^ Exmoor Emperor, Britain's Largest Animal, Gunned Down In 'Trophy Hunt'. The Huffington Post (U.S.), 25 October 2010.
  6. ^ Britain’s ‘biggest wild beast’ — a red deer stag roaming Exmoor. The Times Online, 8 October 2009.
  7. ^ a b c d e “UK's 'biggest stag' Exmoor Emperor found shot dead”. bbc.co.uk. (2010年10月25日). https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-devon-11624253 2010年10月26日閲覧。 
  8. ^ a b The Emperor is dead – long live The Emperor… That's been the clarion cry among deer lovers on Exmoor in the past few days since it emerged that one of the largest stags ever seen in the West has been shot”. Thisissomerset.co.uk (2010年10月18日). 2010年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月26日閲覧。
  9. ^ “Locals split over Exmoor Emperor's 'death”. bbc.co.uk. (2010年10月28日). https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-devon-11646739 2010年10月28日閲覧。 
  10. ^ Vidal, John (2010年10月31日). “Dead or alive? The Emperor becomes an Exmoor legend”. The Guardian (London). https://www.theguardian.com/media/2010/oct/31/emperor-stag-exmoor-killed-sightings 
  11. ^ Exmoor National Park Authority hunting statement Archived 2009-04-03 at the Wayback Machine.
  12. ^ MPs demand action after Exmoor Emperor death vanishes”. Spalding Guardian (2010年10月31日). 2010年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月31日閲覧。
  13. ^ “'Exmoor Emperor' stag's head removed after threats”. BBC News. (2011年12月12日). https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-devon-16138993