キャプスタン (船舶)

キャプスタン(capstan)は、帆船で使用するために開発された垂直軸回転式のウインチで、ロープを引っ張る際に用いられる船員の力を倍増させる。原理は水平軸を持つウィンチのウインドラスと似ている。

写真は現代の観光客がキャプスタンを回している姿。船員は、船長の周りを歩きながらシーシャンティを歌うことによって、動きのリズムを調整した。巻き上げられたロープはジブを引っ張り上げ、重いスパーをマストの所定の位置に持ち上げたり、ドックやはしけとの間で貨物を移動したりするためにも使用される。

歴史編集

この言葉はラテン語の capistrumに由来する、古プロヴァンス語cabestanや古フランス語のcabestan(t)とつながっており、14世紀ごろの十字軍時代にポルトガルかスペインの船員から英語に入ったようである[1]。装置も言葉もスペインの発明と考えられている。

初期の形編集

 
帆船に設置されているキャプスタン。上部はフォアキャッスルで下のアンカーウインドラスを操作している
 
キャプスタン下はアンカーウインドラス

キャプスタンは船の構造体に垂直に取り付けた木材を自由に回転させるもので、初期の形態では、船底に設置されていた。barsと呼ばれるレバーを木材の上部にある穴から挿入し、キャプスタンを回転させた。このドラムにロープを数回巻きつけて引っ張る。この時、ロープの張力を保持するために、初歩的なラチェットが使用されていた。ロープは上から見て常に時計回りに巻かれていた。

中期の姿編集

キャプスタンは鉄の車軸に木製のケーブルドラムやバレルマウントを取り付けたものに進化した。上下二段のデッキにいる人間が同時に回せるように一本の軸に2つのドラム設置されたものがよく使われた。その後、キャプスタンはすべて鉄製となり、頭部に歯車が設けられ、barsが反時計回りに押されると機械的に有利になるようになった。キャプスタンには、軸と歯車で下の甲板にある錨の巻き上げ機に接続されているものもあった。河川船では、キャプスタンを蒸気で回転させることもあった[2]

メッセンジャー編集

船や錨が大きくなると、錨のケーブルや鎖が大きくなりすぎてキャプスタンでは回せなくなっていった。また、ケーブルやチェーンが濡れていると管理が難しくなる。そこで、中間装置として「メッセンジャー」が使われるようになった。これは、ケーブルやチェーンを連続的にループ状にしたもので、キャプスタンに巻き付ける。主錨のケーブルやチェーンは、ニッパーと呼ばれるロープなどの一時的な接続具を使ってメッセンジャーに取り付けられ、運搬される。これを錨の重さに応じて着脱し、これを巧みに行うことによって、停止やサージングを必要としない連続的な巻上げを行うことができた [3]

現代の姿編集

最新のキャプスタンは、電気、油圧空気圧、または内燃機関を介して動力を供給される。通常は減速機を介してトルクを増加させるギアボックスが使用される。

同等品編集

ヨットの用語では、ウインチはキャプスタンと同じ原理で機能する。しかし、産業用途ではウィンチという用語は一般に、ロープをドラムに巻き取る機械を意味している。

陸上での使用編集

鉄道の貨物ヤードでは、油圧式キャプスタンを使って、鉄道車両を短距離移動させる作業(シャント作業)が行われることがあった。その一例が、ロンドンブロードストリート駅である。この駅では倉庫の上にデッキがあり、機関車を乗せるには強度が不足していたため、ロープとキャプスタンが使われた。

日本のフィクションにおいて編集

日本では「奴隷が回している道具」として、奴隷労働のアイコンとして認知されている。

脚注編集

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  1. ^ Society for the Diffusion of Useful Knowledge (Great Britain): Penny cyclopaedia of the Society for the Diffusion of Useful Knowledge, Volume 27. C. Knight, 1843, page 444
  2. ^ Affleck, Edward L. (2000). A Century of Paddlewheelers in the Pacific Northwest, the Yukon, and Alaska. Vancouver, BC: Alexander Nicholls Press. p. p.3. ISBN 0-920034-08-X 
  3. ^ “Chain Messengers”, The United Service Magazine (H. Colburn): 503–504, (1831) 

関連項目編集

リファレンス編集

参考文献編集