ギッシュ・ギャロップ: Gish gallop[ˈɡɪʃ ˈɡæləp])とは、論争中の者が、その正確さや強さに関係なく、過剰な数の論点を提示することで相手を圧倒しようとする修辞技法である。要は議論の質を犠牲にして、その量を優先するということである。この用語は、1994年人類学者ユージェニー・スコットにより作られた。彼女は、アメリカの創造論者デュアン・ギッシュ (英語版) に因んでこの用語を作り、ギッシュが進化の科学的事実に異議を唱える際に、この技法を頻繁に使ったと主張した[1][2]。これは「拡散」と呼ばれる別の討論手法に似ており、一人が非常に速く話すことで、相手が提起された全ての議題に反応できないようにするものである。

ユージェニー・スコット

ギッシュ・ギャロップの間、討論者は短時間内に数多くの、もっともらしい議論、半分の真実、詐称、及び明白な嘘を提示する議論相手に対峙することとなり、正式な討論の形式内でそれら全てに反論することは不可能になる[3][4]。「ギッシュ・ギャロッパー」により提起された各論点に対して反駁、あるいは事実確認するためには最初に述べた時よりも多大な時間を要し、これはオンラインでブランドリーニの法則として知られている[5]。この技法は討論相手の時間を無駄にし、聴衆がこの技法に慣れていない場合、特に独立した事実確認が行われていない場合や、聴衆のその議題についての知識が限られている場合には、討論相手の議論能力に疑義を生じさせる可能性がある[6]

一般的に、自由形式の討論よりも様式化された討論でギッシュ・ギャロップを使う方が難しい[7]。討論者が、ギッシュ・ギャロップを使用することで知られている対戦相手に精通している場合には、相手がそれを使う機会を得る前に、その相手が普段使う議論を先取りして反論することにより、その技法に対抗することができる[8]

脚注 編集

  1. ^ Scott, Eugenie (2004). Confronting Creationism. Reports of National Center for Science Education. Vol. 24/6. Archived from the original on 2018-06-12. p.23 2023年1月7日閲覧
  2. ^ Scott, Eugenie (1994)."Debates and the Globetrotters". Talk Origins Archive. 2023年1月7日閲覧
  3. ^ Logan, Paul (25 February 2000). "Scientists Offer Creationist Defense". West Side Journal. Albuquerque Journal. Vol. 120, no. 56. p. 4 – via Newspapers.com.2023年1月7日閲覧
  4. ^ Sonleitner, Frank J. (November–December 2004). "Winning the Creation Debate". Reports. National Center for Science Education. 24 (6): 36–38.2023年1月7日閲覧
  5. ^ Hayward, C. J. S. (2015). The Seraphinians: "Blessed Seraphim Rose" and His Axe-Wielding Western Converts. The Collected Works of C.J.S. Hayward. San Francisco: Zest Books. 2023年1月7日閲覧
  6. ^ Grant, John (2011). Denying Science: Conspiracy Theories, Media Distortions, and the War Against Reality. Prometheus Books. ISBN 978-1-61614-400-5.2023年1月7日閲覧
  7. ^ Johnson, Amy (2017). Gasser, Urs (ed.). "The Multiple Harms of Sea Lions" (PDF). Perspectives on Harmful Speech Online. バークマン・センター. p. 14.
  8. ^ Grant, John (2015). Debunk it: How to Stay Sane in a World of Misinformation. San Francisco: Zest Books. ISBN 978-1-936976-68-3.2023年1月7日閲覧

関連項目 編集