クバント1(ロシア語:Квант-1、ラテン文字表記の例:Kvant 1)(37KE) は、1987年ソビエト連邦によって打ち上げられた宇宙ステーションミールのモジュール。コアモジュールに続く2番目のモジュールで、ステーションの姿勢制御能力を強化した他、科学実験室としての役割も果たした。

クバント1
クバント1
モジュールの詳細
所属 ソビエト連邦
状態 運用終了
打ち上げ機 プロトン8K82K
ドッキング対象 ミールコアモジュール
機能 姿勢制御
天体観測など
打ち上げ日時 1987年3月31日
ドッキング日 1987年4月9日
大気圏再突入日 2001年3月23日
物理的特徴
直径 4.35 m
打ち上げ質量 20,600 kg
本体質量 11,000 kg
その他質量 9,000 kg
居住区画容積 40 m3
5.3 m

なお、クバントとはロシア語で量子を意味する。

設計 編集

クバント1の目的は、ステーション全体の姿勢制御能力を強化し、科学的観測・実験の場を提供することだった。円筒形の本体を持ち、後部ドッキングポートを埋めてしまわないように前後2箇所にドッキング装置が設けられた。

クバントの内部には2つの与圧された作業スペースと1つの非与圧の実験スペースがあった。観測装置としてX線望遠鏡紫外線望遠鏡、広角カメラ、高エネルギーX線実験装置、X線・ガンマ線検出器を装備し、活動銀河クエーサー中性子星の観測を行った。他には電気泳動実験ユニット、酸素発生装置「エレクトロン」や二酸化炭素除去装置などから構成される生命維持装置ジャイロ効果を利用する姿勢制御装置「ジャイロダイン」6基、コアモジュールに取り付けるための太陽電池パネルを載せていた。この太陽電池パネルは、1987年6月に取り付けられた。

クバント1は推進装置を持たなかったため、地球周回軌道に打ち上げられた後は、TKS宇宙船のFGBモジュールを元に設計された推進モジュールFunctional Service Module (FSM)で宇宙ステーションまで運ばれた。FSMは推進システムと電力システムを装備し、クバント1本体をステーションに送り届けた後に分離・投棄される設計だった。

打上げとドッキング 編集

クバント1は、1987年3月30日プロトンロケットによってバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。10日後の4月9日にはミールのコアモジュールの後部ドッキングポートにソフトドッキングを成功させたが、ハードドッキング(構造結合)はできず、少し緩んだ状態のままとなった。このため、滞在クルーが4月11日に緊急の船外活動を行って点検を行った。この結果、プログレス28が離脱時に残してしまったと思われる異物(ゴミ袋と考えられる)を挟み込んでいた事を発見し取り除いた。これによりミールと正常な構造結合を行う事ができた。FSMは4月12日にクバント1後方のドッキングポートから切り離されて投棄された。

運用 編集

 
運用末期のミール。左上の青紫色の部分がクバント1モジュールで、太陽電池パネルなどが追加されている。

宇宙ステーションに組み込まれたクバント1には、その後さまざまな構造物が取り付けられた。

  • 1991年1月:太陽電池パネルの保持構造の取り付け
  • 1991年7月:「ソフォラ」桁構造の取り付け
  • 1992年9月:ソフォラへの姿勢制御装置の取り付け
  • 1993年9月:「ラパナ」桁構造の取り付け
  • 1995年5月:クリスタルモジュールから太陽電池パネルを移設
  • 1996年5月:太陽電池パネルの取り付け
  • 1997年11月:クリスタルから移設した太陽電池パネルを新品に交換
  • 1998年4月:姿勢制御装置を新品に交換

最初は目立った外部構造を持たなかったクバント1モジュールだったが、最終的には太陽電池パネルと桁構造を2つずつ持つモジュールとなった。

2001年3月23日、クバント1は他の全てのミールのモジュールと共に大気圏に突入した。

苫小牧市科学センターのミール展示館にコアモジュールとクバント1の予備機が展示されている。中に入ることができるのはコアモジュールだけだが、クバント1の方は中を覗けるように窓が開けられている。

関連項目 編集

参考文献 編集