ゲルマニウム温浴(ゲルマニウムおんよく)は、ゲルマニウムを含んだ流動する湯に、手首と足首をつけ発汗させる入浴方法[1]。40-43度の湯に、20分程度手足をつけて温浴を行うと多量にをかく[2]。主にヘルスケア産業で提供されている。1980年代なかば・2000年代なかばに流行があった。2020年時点まででもゲルマニウム温浴の効果の科学的研究は進んでいない(肌へのレパゲルマニウムの効果足湯などの研究はある)。

1980年代には西武の監督だった広岡達朗がゲルマニウムに凝っていると報道され[3]、風呂に取り入れたり野球選手に使ったりし[4]、温浴器の広告を大衆紙に掲載したこともあった。1986年の文献では「流行しているゲルマニウム温浴」と記されている[1]。1980年代には、芸能人がゲルマニウム温浴を行っていることが報道された[5][4]

2002年に『週刊朝日』は「ゲルマニウム温浴って何?女優らが熱中する新エステ」と題した記事を掲載し、芸能人も通っていると取り上げ、この記事では浅井一彦がゲルマニウムを水溶化させた有機ゲルマニウム(レパゲルマニウム)が温浴に使われているとしている[6]。マーケティングを学ぶ女子大生が毎年の課題でヒット商品をとりあげており、2006年度でのみ岩盤浴やゲルマニウム温浴を題材にしている(浴場サービス全般の流行)[7]。2009年の経済産業省の調査では、温泉施設へのアンケートで今後取り上げたいサービスのひとつとして名が挙がっている[8]。同調査での大型商業施設の63事業者からの回答では、リフレクソロジー1位96.8%と提供している事業者は多く、5位12.7%がゲルマニウム温浴を提供しており、割合は少ないがトップ5に入っている[8]

ゲルマニウムを含む温泉療法

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ゲルマニウムは土壌や天然の水、植物などにも含まれているがその役割はよく知られておらず、規制や飲料水中の基準はない[9]。日本、韓国、台湾、中国などの一部の東アジア諸国では、ゲルマニウムが健康との関連で注目されており、欧州ではそのような関心はアジアより薄いが、ないわけでもなく、ポーランドズデーテン山地のリゾート地ではゲルマニウムが豊富と言われている[9]。飲用や温泉療法を行う療養施設の認識の増加は、欧州でそうした研究を進める契機となりうる[9]

水には主にゲルマニウム酸などの無機ゲルマニウムの形態で含まれ、植物や動物の食品には、三二酸化物ゲルマニウムカルボキシエチルやゲルマニウム132 (Ge-132) といった有機ゲルマニウムの形態で含まれる[9]。熱水では、ゲルマニウムの濃度は検出不能から300µg/リットルの範囲で、50µgを超えることは少ない[9]。ゲルマニウム含有量は、アルカリ性、または特に活火山地帯のような反応性ケイ酸塩鉱物で作られた岩盤に豊富である[9]。日本での温泉の分析によれば、温泉中に鉄が多いほどゲルマニウムが多く[10]、各温泉での変動は激しいがアルカリ性の温泉にゲルマニウムが豊富で、130温泉中9か所でのみゲルマニウムが検出されず、0.4-43µg/リットルの範囲でほぼすべての温泉に広く分布しているとされる[11]

病院で泥湯にゲルマニウムを混ぜ温浴させ検査を行ったところ、混入直後に1148ppmの濃度となっていたグループの方が、4か月後に4.5ppmとなっていたグループより総合的に有効例が多い(有効例90%・比較群記載なし)とされ、総合的に疼痛などの諸症状に有効、温浴で上昇しやすいGPTの値は抑制される傾向を得た[12]

出典

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  1. ^ a b 山崎敏子「耳鼻咽喉科への良導絡治療」『日本良導絡自律神経学会雑誌』第31巻第8号、1986年、205-206頁、doi:10.17119/ryodoraku1986.31.205NAID 130004375796 
  2. ^ 「丸栄 売り場に温浴設備」『中日新聞朝刊』20040108、11面。
  3. ^ 「ゲルマニウムが肩、腰のこりの悩みをピシッと解消」『主婦と生活』第40巻第13号、1985年12月、202-3頁。 
  4. ^ a b 「ゲルマニウム温浴法を田中久美が体験入浴」『週刊Heibon』第26巻第6号、1984年2月、24-25頁。 
  5. ^ 「荻野目慶子さん 真冬に冷水などよろず健康法」『読売新聞 東京朝刊』1987年5月28日、19面。
  6. ^ 大波綾「ゲルマニウム温浴って何?女優らが熱中する新エステ」『週間朝日』2002年4月26日、152頁。 
  7. ^ 伊東裕貴「「ヒット商品」から見た社会とコミュニケーション」『コミュニケーション文化』第4巻、2010年3月、24-33頁。 
  8. ^ a b 「我が国におけるスパ・サービスの現状と展望に関する調査研究」報告書. 平成20年度 (Report). 経済産業省. p. 9, 33.
  9. ^ a b c d e f Dobrzyński D, Boguszewska-Czubara A, Sugimori K (2018-8). “Hydrogeochemical and biomedical insights into germanium potential of curative waters: a case study of health resorts in the Sudetes Mountains (Poland)”. Environ Geochem Health 40 (4): 1355–1375. doi:10.1007/s10653-017-0061-0. PMC 6061135. PMID 29299858. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6061135/. 
  10. ^ 太秦康光、瀬尾淑子「温泉の化学的研究(第49~50報)(第50報)温泉のゲルマニウムについて(その2)」『日本化學雜誌』第80巻第10号、1959年、1124-1128頁、doi:10.1246/nikkashi1948.80.10_1124 
  11. ^ 太秦康光、瀬尾淑子「温泉の化学的研究(第49~50報)(第49報)温泉のゲルマニウムについて(その1)」『日本化學雜誌』第80巻第10号、1959年、1118-1123頁、doi:10.1246/nikkashi1948.80.10_1118 
  12. ^ 山本厳雄、八田秋「ゲルマニウム(Ge)泥浴の経験」p46. は以下の文献より:第51回 日本温泉気候物理医学会総会一般演題抄録」『日本温泉気候物理医学会雑誌』第50巻第1号、1986年、32-60頁、doi:10.11390/onki1962.50.32