「サフラン」の版間の差分

|画像= [[ファイル:WCrocus sahuran4111sativus sahuran.jpg|250px]]

'''サフラン'''（''Crocus sativus'番紅花'''、{{lang-en-short|saffron crocus}}（植物）'''咱夫藍'''、{{lang-en-short|saffron}}（香辛料）'''洎夫藍'''、{{lang-fr-short|safran}}）は'''洎夫蘭'''、

[[西南アジア]]原産{{Sfn|Griggsnamei|1974|p=287Crocus sativus}}、{{Sfnlang-nl-short|Hill|2004|p=272saffraan}}で、最初に栽培されたのが[[ギリシア]]とされる{{Sfnlang-en-short|McGee|2004|p=422saffron}}、{{lang-fr-short|safran}}）は[[アヤメ科]]の[[多年草]]およびその[[めしべ]]を乾燥させた[[香辛料]]をさす。[[イラン]]原産とされるが諸説あり<ref>{{Cite book|first1=R.|last1=Ghorbani|first2=A.|last2=Koocheki|s2cid=28214061|chapter=Sustainable Cultivation of Saffron in Iran|chapter-url=https://books.google.com/books?id=cdksDwAAQBAJ&pg=PA170|title=Sustainable Agriculture Reviews|editor-last=Lichtfouse|editor-first=Eric|year=2017|publisher=Springer|isbn=978-3-319-58679-3|doi=10.1007/978-3-319-58679-3|pages=170–171}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Gresta|first1=F.|last2=Lombardo|first2=G. M.|last3=Siracusa|first3=L.|last4=Ruberto|first4=G.|year=2008|title=Saffron, an alternative crop for sustainable agricultural systems. A review|url=https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-00886393/document|journal=Agronomy for Sustainable Development|volume=28|issue=1|pages=95–112|doi=10.1051/agro:2007030|s2cid=44054590}}</ref>、[[地中海]]の島で発掘された壁画によると、青銅器時代から栽培されたと考えられる{{Sfn|Negbi|1999|p=1}}。

別名'''薬用サフラン'''と呼んで、同属植物で観賞用の[[花サフラン]]（[[クロッカス]]）、[[アルカロイド]]の[[コルヒチン]]を含む[[イヌサフラン科]]の[[イヌサフラン]]と区別する (（国立健康・栄養研究所のサイトよりイヌサフランの項目参照) ）<ref name=kenko_web>{{cite web|url =https://hfnet.nih.go.jp/contents/index.php?btn_id=1&q=%A5%A4%A5%CC%A5%B5%A5%D5%A5%E9%A5%F3 |publisher= 国立健康・栄養研究所|title = イヌサフラン|date = 2016-02-26|accessdate = 2016-05-04|}}</ref>。

サフランは最大20〜 - 30センチメートルに成長すると花を一株に最大4つつけ、3本ずつある鮮やかな深紅の柱頭は単[[雌蘂]]の先端部で{{Sfn|Kafi et al.|2006|p=23}}[[花柱]]とともに摘み取って乾燥させ、主に食品の調味料や着色料に使用する。サフランは重量単位で比べると世界で最も高価なスパイスのひとつ{{Sfn|Rau|1969|p=53}}{{Sfn|Hill|2004|p=272}}<ref>{{cite websfn|url=http://www.rediff.com/news/slide-show/slide-show-1-pics-world-s-costliest-spice-blooms-in-kashmir/20121109.htmRefiff|title=World's COSTLIEST spice blooms in Kashmir|publisher=[[Rediff]]|date=November 9, 2012|accessdate=7 January 2013}}</ref>。遺伝的に単形クローンである{{Sfn|Rubio-Moraga|Castillo-López|Gómez-Gómez|Ahrazem|2009}}ことから分布の拡大は遅く、ユーラシア全域に広がった後に北アフリカ、北アメリカ、およびオセアニアに持ち込まれた。

日本では、'''咱夫藍'''の[[漢字]]を当てる<ref>{{sfn|小野蘭山『本草綱目啓蒙』|1806年</ref>}}。'''洎夫藍'''<ref>『広辞苑』など</ref>、'''洎夫蘭'''、という借字を用いた表記もされる。'''泊夫藍'''などのという表記も見られるが、いずこれも字音が合わず、は「洎」を「泊」とした誤字である。

成分は、α、β、γ‐[[カロテン]]。他に色素配糖体である[[クロシン]] (''crocin'')、無色の苦味配糖体[[{{仮リンク|ピクロクロシン]]|en|picrocrocin}} (（''picrocrocin'')）、[[精油]]（8 -10％ 10%、[[テルペン]]、[[テルピネオール|テルペンアルコール]]、[[エステル]]）、[[クロセチン]] (''crocetin'') などを含む<ref name=kenko_web/><ref name="hfnet">[[#hfnet_site|国立健康・栄養研究所のサイト]]</ref>。[[クロシン]]は[[水溶性]]で[[油]]には溶けない。香りの主成分は[[サフラナール]]である。

== 原種 ==

{{main|{{仮リンク|サフランの原種|en|Crocus sativus}}}}

野生では見られない{{Snamei|サフラン}}の原種は、[[クレタ]]島に自生する ''{{Snamei|Crocus cartwrightianus''}} と考えられ{{sfn|Rubio-Moraga|Castillo-López|Gómez-Gómez| Ahrazem|2009}}、あるいは ''{{Snamei|C. thomasii''}} と ''{{Snamei|C.  pallasii''}} 他が原種である可能性がある{{sfn| Negbi|1999|p=28}}{{sfn| Caiola|2003| p=1}}。サフランは[[倍数体|三倍体]]つまり雄性決定要素による「自家不和合性」を示し、[[減数分裂]]異常により個別に有性生殖にいたらない。そのため根茎を分割して植えつけるなど品種改良の手法を経て[[栄養繁殖|栄養増殖]]する{{sfn|Negbi|1999|p=30-31}}{{sfn|Caiola|2003|p=1}}。<!-- it undergoes aberrant [[meiosis]] and is hence incapable of independent sexual reproduction—all propagation is by [[vegetative reproduction|vegetative multiplication]] via manual "divide-and-set" of a starter clone or by interspecific hybridisation.{{Sfn|Negbi|1999|p=30–31}}{{Sfn|Caiola|2003|p=1}} If ''C. sativus'' is a mutant form of ''C. cartwrightianus'', then it may have emerged via [[plant breeding]], which would have selected for elongated stigmas, in late [[Bronze Age]] Crete.{{sfn|Negbi|1999|p=1}}-->''{{Snamei|C. sativus''}} が ''{{Snamei|C. cartwrightianus''}} の変異型の場合は遺伝的改良によって、長い年月をかけて細長い柱頭のものが選択的に交配され、[[青銅器時代]]晩期のクレタ島に現われたと考えられる<!--If C. sativus is a mutant form of C. cartwrightianus, then it may have emerged via plant breeding, which would have selected for elongated stigmas, in late Bronze Age Crete.-->{{sfn|Negbi|1999|p=1}}。

サフラン (''（{{Snamei|C. sativus'') }}）は8組、合計24組の染色体を持つ{{Sfn|Kafi et al.|2006|p=23}}。花が種子をつけないことから人工的な繁殖を行い、[[球根#球根の分類|根茎]]を掘りあげて分割、植えつける。根茎は1シーズンで枯れるまでに10個前後の小さな根茎に分かれ、次のシーズンに成長する{{Sfn|Deo|2003|p=1}}。根茎は茶色の小球体で直径{{Convert|5|cm|in|abbr=on}} ほどに成長し底面は平らで、繊維が平行に並んだ被膜に包まれる。また薄く網状の膜が約 5&nbsp;cm に伸びて芽を取り巻く{{Sfn|Kafi et al.|2006|p=23}}。

{{Convert|20|–|30|cm|in|abbr=on}} に成長すると白い葉を5–115 - 11枚つけ、この鱗葉は[[光合成]]を行わない。この器官に包まれた芽が伸びて緑色の葉になり、薄く剣状で幅は1–31 mm- (3ミリメートル（<0.12 in) インチ）。葉は開花後<!-- ("hysteranthous") -->あるいは開花と同時に<!-- ("synanthous") -->生長する。鱗葉は生長の早い段階によく潅水した場合に顕著であるとする説もある。茎から小包葉という特徴的な器官が発生し、これを[[小花柄|小花梗]]と呼ぶ{{Sfn|Kafi et al.|2006|p=23}}。春の<!--[[Aestivation (botany)-->[[休眠]]に続いて生長する葉は{{Convert|40|cm|abbr=on}} まで伸びるものもある。秋には紫色の蕾が現われ、10月にほかの種が種を落とした後に咲かせる花の香りは甘く蜂蜜に似ており、色は薄紫から鮮やかな紫{{Sfn|Willard|2002|p=3}}。また、開花時の丈は{{Convert|30|cm|abbr=on}}にとどまる{{Sfn|Government of Tasmania|2005}}。花柱につく鮮やかな深紅の雄蕊は長さ{{Convert|25|–|30|mm|in|abbr=on}}{{Sfn|Deo|2003|p=1}}。

サフラン（''{{Snamei|Crocus sativus''}}）は[[地中海]]沿岸に見られる常緑の[[低木林|低木地帯]]、すなわち北米の[[カリフォルニア州]]などで見られる低木林[[チャパラル]]の生態系および同様に夏に暑く乾燥した風が吹き抜ける半乾燥地の気候で繁栄する。にもかかわらず、-10°C（14°F）という低温、短い期間の霜や積雪に耐え冬の寒さを乗り切ることができる{{Sfn|Deo|2003|p=1}}{{Sfn|Willard|2002|pp=2–3}}。湿潤な環境をのぞくと、[[カシミール]]など年間平均降水量{{Convert|1000|–|1500|mm|ft|abbr=on}}の地域では灌漑が必要。年間{{Convert|500|mm|in|abbr=on}}の[[ギリシャ]]、{{Convert|400|mm|in|sbbrabbr=on}}の[[スペイン]]では、サフランの主な栽培地域[[イラン]]に比べるとはるかに乾燥している。栽培が可能かどうかは[[雨季]]の時期により、春の豊かな雨と夏の乾燥が最適。開花の直前に雨が降るとサフランの収穫が伸び、開花時の雨や寒さ、病気の蔓延は収量の低下に結びつく。作物に害を与える高温多湿に加え{{Sfn|国立健康・栄養研究所|2016}}、球茎を掘り起こす[[ウサギ]]、[[ラット]]や鳥、あるいは[[線虫]]、[[さび病|錆病]]および球茎の腐敗も脅威である。[[枯草菌]]（''{{Snamei|Bacillus subtilis''}}）によって根茎の成長が増進すると柱頭のバイオマス収量を増加、栽培者に有益に働く場合がある{{Sfn|Kafi et al. |2006|p=23}}。

=== 等級と国際規格 ===

<!-->/* 等級と国際規格 */ 追加、英語版から一部を翻訳。translated partly from [[:en:Saffron#Grades and ISO 3632 categories]] (2016-07-19T11:17)<-->

|上級||プシャル (（プシャリ)）||赤色に黄色が少量混じる|| pushal、pushali

|上級||マンチャ　 ||イラン産プシャルに相当||mancha

|中級||リオ　 ||以下、等級が下がると香りと色が薄い||rio

|並||スタンダード||一般用　 ||standard

|下級||シエラ||　 ||sierra

ただし「スペイン産のマンチャ級」とは二通りのひとくちに言っても使い方が2種類あり、「一般用」を指す場合と「スペイン国内の特定の産地で取れた最高級」を意味する場合がある。純粋のスペイン国産サフランを「ラ・マンチャ」と呼び、パッケージにには EU の[[原産地名称保護制度]] (PDO) （PDO）認証章を付けている。認証の獲得はスペインの生産者にとって、純粋の'''ラ･・マンチャ級'''のサフランを守ろうとした長年の努力の成果であり、イラン産の輸入品を産地偽装した「スペイン産マンチャ級サフラン」の普及への対抗策である。

収穫量の少ない国や地域では品質の等級を特に定めておらず、どれも同じ等級として流通する場合がある。ヨーロッパとニュージーランドの高級品を育てる生産者{{efn| Kiwi Saffron NZ 社はニュージーランド国内の有機栽培規格を取得（オーガニック認定機関Biogro認証 C3：生産者登録番号 BG5722）、2014年食品安全法適格（Food Safety 2014）を取得しているという<ref>{{cite web|url= https://www.kiwisaffron.com/index/|title= Home of New Zealand Grown Saffron [ニュージーランド産サフランの本拠]|language=en|publisher=Kiwi Saffron NZ|accessdate=2018-10-07}}</ref><ref>{{cite journal|author= Desplaces, Jamie Christian|url= http://vervemagazine.co.nz/saffron-style-science-sustenance/|title=Saffron: Style, Science & Sustenance|language=en|journal=Verve Magazine|pages=9-10|date=2017-06-60|publisher=|accessdate=2018-10-07}}</ref>。2018年にArtizan Award 認定の応募350件から終選考に残った<ref>{{cite journal|title= 2018 Inspire+ NZ Artisan Awards: NZ Artisan Award finalists announced ! [NZ Artisan Award 最終選考発表] |language=en|url= http://supermarketnews.co.nz/artisan-award-finalists-announced-2/|journal= Supermarket News|publisher=Review Publishing Co Ltd|date= 2018年9月4日|accessdate=2018-10-7}}</ref>。}}は特上品のみ出荷、手間をかけた分の経費を価格に反映させている。

めしべを乾燥させて、香辛料や生薬として用いる。乾燥の際には、風通しのよい室内で陰干しにする。1g1グラムのサフランを採るのに160個ほどの花が必要であり<ref name="kitano">{{cite book|和書|author=北野佐久子|title =基本ハーブの事典|publisher=東京堂出版|year =2005|page=50|isbn=978-4-4901-0684-8}}</ref>、収率が低いために貴重で、1g1グラムあたり500 - 1,000円程度と高価である。

めしべは、独特の香りを持ち、[[水]]に溶かすと鮮やかな黄色を呈するため、[[南ヨーロッパ]]、[[南アジア]]北部、[[中央アジア]]、[[西アジア]]、[[北アフリカ]]にかけて[[料理]]の色付けや風味付けのための香辛料として使用される。[[プロヴァンス]]地方の名物料理[[ブイヤベース]]や[[スペイン料理]]の[[パエリア]]、[[ミラノ]]風[[リゾット]]、[[モロッコ料理]]の[[クスクス]]、[[インド料理]]の[[サフランライス]]には欠かせない。[[トルコ]]の[[サフランボル]]では湯を注いで「サフラン・ティー」として飲まれている。

動物実験では、サフランの黄色色素である[[カロテノイド]]の一種「[[クロシン]]」の摂取が[[大腸癌|大腸がん]]予防に効果があるとする研究もある<ref>2012年6月22日、岐阜市内で開かれた日本がん予防学会で発表――岐阜県各務原市の東海中央病院 (川端邦裕医師) や長崎国際大学薬学部らの研究チームの実験による。{{cite news|url=http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120625135613187 |title=サフランの色素に大腸がん抑制効果|author=斎藤雄介|date=2012年6月23日|year=2012|newspaper = 中日新聞|issue =朝刊|location = 岐阜|ref=harv}}</ref>。

* 堕胎作用、子宮収縮作用、通経作用に注意が必要である。「授乳中の安全性については充分な情報がないため、避けたほうがよい」<ref name="kenkoshokuhindb">{{Cite book Sfn| 和書 | title = 健康食品データベース | publisher = 第一出版 | author = Pharmacist's Letter/Prescriber's Letter　エディターズ（編） | others =（独）国立健康・栄養研究所 (監訳) | id = ISBN 97848041109672007}}</ref>、「妊婦には禁忌である」<ref>{{Cite book | 和書 | title = 天然薬物辞典 | publisher = 廣川書店 | editor = 奥田拓男 (編)|ISBN= 978-4-5670-0050-5|year = 2000 }}</ref> との記述もみられる。

* 大量摂取は危険と言われており、5g5グラム以上摂取すると重篤な副作用が出る。致死量は12 -20g 20グラムである<ref name="kenkoshokuhindb" />{{Sfn|国立健康・栄養研究所|2007}}。

* [[オリーブ属]]、[[オカヒジキ属]]、[[ドクムギ属]]の植物に過敏症がある人はアレルギー症状に注意が必要である<ref>[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9226057?dopt=Abstract{{Sfn|Foe Occupationalet allergy in saffron workersal. Allergy. |1997] - PubMed</ref>}}。

File:ValencianPaella.jpg|サフランを使った料理の一つ、[[バレンシア (スペイン)|バレンシア]]の[[パエジャリア]]

{{脚注ヘルプ}}{{reflist}}

== 参考文献資料 ==

* {{Citation|last=Rau|first=S. R.|year=1969|title=The Cooking of India (インド料理)|language=en|series=Foods of the World (世界の料理シリーズ)|publisher={{仮リンク|タイムライフ出版|en|Time Life Books}}|date=2016年5月}}|isbn=978-0-8094-0069-0<!--0809400693-->}}

* {{Citation|last=Grigg|first=D. B.|date=1974年11月29日|year=1974|title=The Agricultural Systems of the World (世界の農業システム)|language=en|edition=1st|publisher=Cambridge University Press|isbn=978-0-5210-9843-4<!--0521098432-->}}

* {{Citation|last=HillWillard|first=TP.|date=2004年09月10日|year=2004|title=The Contemporary EncyclopediaSecrets of HerbsSaffron: andThe Spices:Vagabond SeasoningsLife forof the GlobalWorld's KitchenMost (現代薬草スパイス事典―世界の台所と調味料)Seductive Spice|editionlanguage=1sten|publisher=WileyBeacon Press|isbn=978-0-47128070-14235009-65<!--047121423X0807050083-->|url=https://books.google.com/?id=WsUaFT7l3QsC|access-date=|year=2002}}

*{{anchors|hfnet_site}} {{Cite web Hfnet| url = http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?516 | title = サフラン - 「健康食品」の安全性・有効性情報 | author = [[国立健康・栄養研究所]] | accessdate = 2012-08-03 | ref = hfnet_site }}<!-- 脚注からここににリンクしています -->

[[categoryCategory:香辛料]]

[[categoryCategory:生薬]]

[[categoryCategory:ハーブ]]

[[categoryCategory:アジアの食文化]]

[[categoryCategory:ヨーロッパの食文化]]

[[categoryCategory:アフリカの食文化]]

[[categoryCategory:中近東の食文化]]