原子核物理学においてタム‐ダンコフ近似(タム‐ダンコフきんじ、: Tamm–Dancoff approximation, TDA)とは、粒子・空孔対と呼ばれる素励起モード状態について、それぞれの素励起の数をある値(通常は1)までに制限する近似のことで[1][2]ソ連物理学者イーゴリ・タム1945年[3]アメリカの物理学者シドニー・ダンコフ英語版1950年[4]、それぞれ独立に導き出した事に因んで名付けられた。

乱雑位相近似は、1つの状態における粒子および空孔の数が一定でなく(ただし粒子数=空孔数)、さまざまな数の重ね合わせになっている。乱雑位相近似は「新タム-ダンコフ近似」と呼ばれることもある[1]

タム-ダンコフ近似の基底状態は、ハートリー=フォック近似の基底状態となる。また励起エネルギーが0となることは通常は起こらないため、タム‐ダンコフ近似ではハートリー=フォック近似での基底状態の不安定化を調べることはできない[5]

参考文献 編集

  1. ^ a b 高田健次郎、池田清美『原子核構造論』朝倉書店〈朝倉物理学大系18〉、2002年4月20日。ASIN 4254136889ISBN 978-4-254-13688-3NCID BA5658360XOCLC 54740193全国書誌番号:20275367 
  2. ^ 『物理学辞典』培風館、1984年。 
  3. ^ Tamm, I. (1945). Journal of Physics (USSR) 9: 449. 
  4. ^ Dancoff, S. M. (20 January 1950). “Non-Adiabatic Meson Theory of Nuclear Forces”. Physical Review 78 (4): 382-385. doi:10.1103/PhysRev.78.382. 
  5. ^ 藪博之『多粒子系の量子論』裳華房〈量子力学選書〉、2016年11月16日。ASIN 4785325143ISBN 978-4-7853-2514-5NCID BB22505012OCLC 965937040全国書誌番号:22819195 

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外部リンク 編集