タルビーヤ (祈り)
タルビーヤ (アラビア語: ٱلتَّلبِيَة、at-Talbīyah) はイスラム教の祈りの句で、巡礼者が(自らの名誉などのためではなく)アッラーの栄光のためだけに巡礼を行うという信念を表明する内容になっている。イスラム教における巡礼であるハッジあるいはウムラの際には、巡礼者はイフラームを着用してタルビーヤを何度も唱える。こうすることで巡礼者は心身を浄化し世俗のしがらみから離れることができるとされている。
タルビーヤの句は以下の通りである。
لَبَّيْكَ ٱللَّٰهُمَّ لَبَّيْكَ، لَبَّيْكَ لَا شَرِيكَ لَكَ لَبَّيْكَ، إِنَّ ٱلْحَمْدَ وَٱلنِّعْمَةَ لَكَ وَٱلْمُلْكَ لَا شَرِيكَ لَكَラテン文字転写: labbayka -llāhumma labbayka, labbayka lā šarīka laka labbayka, ʾinna -l-ḥamda wa-n-niʿmata laka wa-l-mulka lā šarīka laka
日本語読み:ラッバイカッラーフンマ・ラッバイカ・ラッバイカ・ラー・シャリーカラカ・ラッバイカ・インナルハムダ・ワンニイマタ・ラカ・ワルムルカ・ラー・シャリーカ・ラカ[1]
日本語訳:おおアッラー、私は、あなたの御前に侍ります。おおアッラー、比類なき御方、あなたの御前に侍ります。称賛、恩恵、大権はあなたのもの、比類なき御方、おおアッラー、私は、あなたの御前に侍ります。[2]
タルビーヤの句自体はスンニ派・シーア派とも全く同じであるが、シーア派では最後にもう一回 لَبَّيْكَ(labbayka、ラッバイカ、「私は御前に侍る」の意)と唱えるところが異なる。
何度も現れる labbayka という語の成り立ちについてはアラビア語の文法家の間でも意見の相違があるが、最も一般的には「その場にとどまる」という意味の動詞的名詞 labb に両数対格の ay と二人称単数男性接尾辞の ka がついたものと説明されている。ここで、両数対格はその物事や行為の繰り返しと頻度を表すとされる。したがって、labbayka は文字通り「私は何度でもあなた(=アッラー)に忠実に従うために侍る」といった意味となる。そして、タルビーヤという語自体、この祈りを捧げることを示す labbá の動詞的名詞になっている[3]。
参考文献編集
- ^ セイフェッティン・ヤズジュ(pdf) 『イスラームの基本知識 信仰・崇拝行為・徳・預言者ムハンマドの生涯』東京・トルコ・ディヤーナト・ジャーミイ、154頁 。2021年1月16日閲覧。
- ^ “巡礼”. 日本イスラーム文化センター. 2021年1月16日閲覧。
- ^ Wright, W. (August 1896). A grammar of the Arabic language. Cambridge: Cambridge University Press. p. 2:74