ブール代数において、パリティ関数(パリティかんすう、Parity function)とは、入力ベクトルが奇数個の1を持つ場合かつその時に限り値が1となるブール関数である。2つの入力のパリティ関数はXOR関数としても知られている。

パリティ関数は、ブール関数の回路計算量の理論的調査における役割で注目されている。

パリティ関数の出力はパリティビットである。

定義 編集

 -変数パリティ関数が    となるブール関数であるのは、ベクトル   に入っている1の数が奇数であるとき、かつその時限りである。 言い換えると,   は以下のように定義される:

 

ここで  排他的論理和を表す。

性質 編集

パリティは1の数にのみ依存するので、対称ブール関数である。

計算複雑性 編集

計算の複雑さに関する初期の研究の例として、Bella Subbotovskayaによって1961年に示された、パリティを計算するブール式のサイズは少なくとも でなければならないというものがある。これにはrandom restrictionsの手法が用いられた。この指数部の はその後の慎重な解析によって、PatersonZwickによって に増加され(1993)、さらにHåstadによって に増加された(1998)。[1]

1980年代初頭、Merrick FurstJames SaxeMichael Sipserの3人[2]、そしてそれと独立にMiklós Ajtai[3]が、

パリティ関数に対する constant-depth なブール回路のサイズに関する超多項式下界を確立し、すなわち、多項式サイズの constant-depth な回路ではパリティ関数を計算できないことを示した。同様の結果は,パリティ関数からのreductionによって,多数決関数,乗法関数,推移的閉包関数についても確立された[2]

Håstad (1987)では、パリティ関数に対するconstant-depth ブール回路のサイズに関する厳しい指数下界が確立されている。Håstad's Switching Lemmaはこれらの下界を得るのに鍵となるテクニカルな補題で、Johan Håstadは1994年にこの研究でゲーデル賞を受賞した。

無限バージョン 編集

無限パリティ関数は関数 で、無限二進列を0か1に対応させるもので、次の条件を満たすものである:    が無限二進列で有限個の座標でしか違いが無いものであるときに、  であることが    の違いが偶数個の座標であることと同値である。

選択公理を仮定すると、パリティ関数の存在とそれが 個あることが容易に示せる。これは  から   への関数全体の濃度と同じである。これには次の同値関係   の代表系を一つ取ればよい:     の違いが有限個の座標に留まることである。このような代表系がとれたとき、代表元は全て0に写すとすれば、残りの関数に対する   による値は自動的に一意的に定められる。

無限パリティ関数は、その簡単な定義と、一方でその記述論的複雑さから、理論的な計算科学や集合論でよく使われる。例えば、逆像 非ボレル集合であることを示すことができる。

関連項目 編集

参考文献 編集

  1. ^ Jukna, Stasys (Jan 6, 2012). Boolean Function Complexity: Advances and Frontiers. Springer Science & Business Media. pp. 167–173. ISBN 978-3642245084 
  2. ^ a b Merrick Furst, James Saxe and Michael Sipser, "Parity, Circuits, and the Polynomial-Time Hierarchy", Annu. Intl. Symp. Found.Computer Sci., 1981, Theory of Computing Systems, vol. 17, no. 1, 1984, pp. 13–27, doi:10.1007/BF01744431
  3. ^ Miklós Ajtai, " -Formulae on Finite Structures", Annals of Pure and Applied Logic, 24 (1983) 1–48.