ファイル‐ノート:ピカソ Lola Picasso.jpg

最新のコメント:19 年前 | 投稿者:Tomos

削除依頼ページの議論に長いコメントを付け加えるのは気が引けるので、こちらに書いておきます。後から参照したくなることがあればその時にも参照しやすそうですし。

現在削除依頼に出ているピカソの個々の作品がパブリックドメインの扱いでいいのかどうかは、ピカソがそれらの作品をパブリックドメイン入りさせたかどうかなどによるところもあり、調べるのが難しい(権利者団体などに問い合わせるのが一番早いでしょうか)のですが、ピカソの初期作品一般について、著作権保護が存続しているかどうかを、わかる範囲で考えつつ調べてみました。

まず日本法から。

基本的な手がかりは、ピカソの幾つかの作品の利用をめぐって平成10年に出された判決です。

  • 判決では、遺族が著作権(の継承者)として認められている。
  • ベルヌ条約に基づく保護を受けることも確認されている。
  • 日本のベルヌ条約締結と、旧著作権法の発効は1899年で、今回アップロードされた作品の一部は、1900年以降の作品なので、ベルヌ条約と旧著作権法の影響下にある。(裁判で扱われたのは、ピカソの1901年から1907年までの間の特定の作品の著作権保護。)

以上を総合して考えると、ピカソの作品で1899年の発効以降に制作・発表されたものについては、それがベルヌ条約と現行の著作権法によって保護されているとだろうと考えてよいと思います。1901年以降に発表されたものについては実際に裁判で扱われているのでより確かだと言えそうです。

かなり細かい話になりますが、1899年、1900年に発表された作品について、裁判で実際に扱われた1901年の作品と同一視できない理由は、旧著作権法などの改訂履歴を知らないためです。

旧著作権法も、ベルヌ条約も、現行の著作権法も、いろいろ改訂を経ていますから、可能性としては、僕が知らないだけで、1899年の施行当時は実は美術の著作物は発表から10年しか保護されず、しかもその保護期間の規定が次に改訂・延長されたのが1915年で、1900年に発表された作品は既に保護期間が終了していた、などということも考えられます。もしそういうことが起きていたとすると、その改訂・延長の時点で、「既に保護期間が終了している一部の作品についても改めて保護を再開しよう」というような規定がない限りはその作品は保護期間が終了したまま(ほぼパブリックドメインに相当)ということになります。

例えば、国内法の文脈では、写真の著作権については、現に似たような事情で保護が切れてしまっているものがあり、改めて保護をかけるべきかどうか現在も議論があります。こちらこちら(p.6) で読めるような件です。

それと同じような事情が、1899年や1900年に発表された著作物について存在し、1901年に発表された著作物(これは裁判で扱われている)については存在しない、それ故に実は1900年以前に発表された著作物は保護期間を過ぎていて、1901年以降のものは保護が続いている、というようなことがもしかするとあるかも知れないですが、それは旧著作権法やベルヌ条約の発効当初の条文や、その後の改訂の履歴などがわからないと何とも言えません。

更に厄介なのは、1899年の旧著作権法が施行されベルヌ条約が発効するよりも以前の段階で発表された作品です。その時点でスペインの著作物について日本国内でどのような保護が与えられていたのかはわかりません。ベルヌ条約以前にも、二国間の協定などによって著作権が相互に保護されていた場合などはあるようですから、スペインについてもそういうものがあったのかも知れません。何らかの保護が与えられていて、パブリックドメイン入りしていなかったのであれば、旧著作権法の47条にある規定によって、旧著作権法の発効と共に旧著作権法で保護されることになるので、1899年以降の著作物と同じように考えてよさそうな気もします。

次に、米国での著作権保護についても少し考えてみました。

ベルヌ条約は「遡及効」を持つ条約として知られていますので、一応ベルヌ条約の条文を読んでみました。

  • 18条(1) の規定するところによれば、加盟した国は、条約加盟時点で、他の加盟国のいずれかを本国とする著作物の内、その本国での著作権保護が終了していないものについて保護を与える、ということになります。例えばスペインで制作・発表されたピカソの作品については、スペイン国内で保護期間が過ぎていなければ、アメリカ合衆国がベルヌ条約に加盟した時点で、保護を与えることになります。
  • 18条(2) の規定するところによれば、加盟した国は、条約加盟時点で、国内法による著作権保護が切れている外国の著作物については、改めて保護をかけなおす必要はない、とされています。
  • ベルヌ条約は1971年のいわゆるパリ改正以降変更がなく、アメリカが加入したのは1989年なので、アメリカが加盟した時点でもこの規定は存在していたと考えてよいと思います。
  • 米国の著作権法を調べたところ、 Appendix II: Berne Convention Implementation Act of 1988 [1]のSec.12 に、ベルヌ条約を米国に導入するにあたって、パブリックドメインに属している作品に対して保護を与えることはしない、という旨の宣言がありました。

以上から、スペインで、あるいはフランスで、ピカソの作品がパブリックドメイン入りしているということはないようなので、(少なくとも1901年以降の作品についてはそのようなので)、アメリカも、国内法の規定によって著作権保護が終了していない限り、ベルヌ条約加盟と共に保護がかかり、死後50年まで保護することになります。

では、1989年の時点で、ピカソの作品は既にアメリカ国内では保護を受けない状態にあった(パブリックドメインに属していた)のでしょうか?

ノート:ヤン・フスに以前まとめておきましたが、1923年以前に発表された作品については、1978年の時点で著作権保護期間が終了しているので、終了していたと考えるのがよさそうです。

ただ、これについても、スペインと米国の間の他の協定によって異なる状況があったり、ということがもしかするとあるかも知れません。

例えば、United States Copyright Office Circular 38a [2] によると、1895年の時点で、スペインと米国の間に二国間協定が締結されたとあります。また、スペインは、万国著作権条約には1955年から加盟国になっています。

念のため、万国著作権条約も読んでみましたが、4条の2(a)にある規定によって、当時の米国のように発表なり登録からN年間保護を与える、という形式になっている国については、そういう保護の仕方でよろしい、但し、最低25年の保護を与えるように、ということになっているようです。(但し、この条文は、1971年に改正された後のもので、それ以前、スペインの加盟当時や条約の最初の版がどうであったか、というような点は不明です。)

以上調べてみた限りでは、アメリカ法では、ピカソの1923年以前の作品は保護されていない状態にあるけれども、日本法では依然として保護されていそうだ、というのがとりあえず当面の感触です。

ざっと調べただけなので細部の詰めはかなり甘いのですが、何もしないよりはましだろうと思うのでとりあえず。

補足・訂正・質問などありましたらよろしくお願いします。

#ちなみに、著作権法や条約は、知的財産権六法(第2版、角田政芳編、三省堂、2004年)という本にあるものを参考にしました。訳文が僕にはわかりにくかった部分などがあるので、万国著作権条約はユネスコのサイト内で[3]、ベルヌ条約はWIPOのサイト内[4]にある英文を参考にしました。

Tomos 2004年10月26日 (火) 00:38 (UTC)返信

今日別なことをやっていて、たまたま[5][6]のような裁判があったことを知りました。ここで争われた絵画が何であるかは不明ですが、ピカソの著作権はSPADEMというところが管理しているようで、日本でも同社が裁判を起こす状況にはあるということがわかりました。まだ全文を詳しく読んでいませんが、一応私のおおボケ(最近多い...)で既出でなければご紹介ということで。sphl 2004年11月14日 (日) 09:14 (UTC)返信

自分で書いたとおりボケてました。貼ったリンクはWikipedia:削除依頼 2004年10月でHachiさんがご提供されたものと同じです。意図したものに差し替えておきました。読売新聞社のケースでは控訴したらしいのでしが、その結果がどうなったか調べがつきませんでした。ご存知のかたはいらっしゃいますか? しかし当面、日本の裁判所ではピカソの著作権の保護はまだ存続しているという見解とみなせますので念のため削除しておいたほうが安全という気がします(その場合英語版はどうなんだ?といわれると、もう英語版をアップした方の見解でも貰わない限り分からないのですが)。sphl 2004年11月29日 (月) 09:02 (UTC)返信

英語版でアップロードした方の見解は既に伺っていて、1923年以前に発表された作品であれば著作権保護期間を過ぎているから、というのが理由です。これはアメリカの著作権法を素直にピカソの作品に適用するとそういうことになります。特に二国間条約などがあるなどの例外がなければ、実際にそれでいいんじゃないかと思いましたが、日本語版では日本法も考慮しないといけないようなので、英語版の理由だけでは不十分だと思いました。

特にこれ以上調査できる余地もなく、もともとアップロードした理由が日本語版の基準に照らせばだいぶ不備があるもの、という感じもしますし、調べた結果、著作権保護期間が切れているだろうという有力な証拠・示唆などもありませんでしたし、削除した方がいいだろうと僕は思いました。Tomos 2004年12月4日 (土) 09:12 (UTC)返信

コメントどうもありがとうございます。どうも英語版は他国での利用への配慮がやや欠けるということかもしれません(勿論本来は使用する側が責任を持って調査すべきことではありますが)。現時点で削除は完了していますが、日本国著作権法ではいまのところ削除が安全と思いました。あと、en:版について、Fair Useで収録した画像などについては米国外で無効の可能性があるむねMediawikiのデータベース取得ページにも触れられていますが、PDだと最初から疑わない可能性が高く、そういう意味では表示が不適切なんでしょうかね。US内務省のロゴ画像の件まだ結論が出ていませんが、あれと少し違うものの「PD」という表記の字面だけの解釈では同様に問題があると感じました。同じく結論がでていない「日本ではPDは無効」の対応策の件をあわせると、本来「PDに類似するが制約付きの使用条件」というテンプレを定義して使うのが適当なのかもしれません(PD-USとかPD-JAとか)。本来の意味でのライセンス契約ではなく、こういう条件で使うなら問題は無いという「使用条件の説明」として機能させれば良いように思います。sphl 2004年12月5日 (日) 06:06 (UTC)返信

英語版では、画像がパブリックドメインに属しているということと一緒に、それが世界各国でも同じようにあてはまる、という風に記されています。今回のような件がいくらでもありうるのでその記述はやめたほうがいいと思うのでそういう風に英語版で提案しておきました。反応がないようならもう少し具体的に説明してみようと思います。Tomos 2004年12月5日 (日) 21:45 (UTC)返信

一応追記しておきます。英語版には実は「世界中でPD」という表示と「米国内でPD」という表示と2種類が既に存在していました。ピカソの作品の画像をアップロードした人に、米国内PDの方に切り替えてはどうか、あるいはもしよかったら僕がやってもいいけどどうか、と言ってみたら、素直に賛同してくれました。ピカソ以外の画像もあるのでどの位の規模かわかりませんが、とりあえず向こうの画像の方にも対処しておこうと思います。Tomos 2004年12月19日 (日) 00:18 (UTC)返信

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