マルセル・グロスマン

マルセル・グロスマン(Marcel Grossmann、1878年4月9日 - 1936年9月7日[2]は、スイス数学者である。アルベルト・アインシュタインの友人であり同級生だった。

マルセル・グロスマン
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生誕 (1878-04-09) 1878年4月9日
Flag of Austria-Hungary (1869-1918).svg オーストリア=ハンガリー帝国 ブダペスト
死没 1936年9月7日(1936-09-07)(58歳)
スイスの旗 スイス チューリッヒ
研究分野 数学
出身校 チューリッヒ工科大学
博士課程
指導教員
ヴィルヘルム・フィードラー英語版
主な受賞歴 スイス数学会 名誉会員(1935年)[1]
プロジェクト:人物伝
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チューリッヒの連邦工科大学(現 チューリッヒ工科大学)で、画法幾何学を専門とする数学の教授になった。

若年期編集

グロスマンは、オーストリア=ハンガリー帝国ブダペスト(現 ハンガリー領)で生まれた。グロスマン家は、チューリッヒに長く続く家系である。父は繊維工場を経営していた。

キャリア編集

1900年に連邦工科大学を卒業し、幾何学者ヴィルヘルム・フィードラー英語版の助手になった。グロスマンは非ユークリッド幾何学の研究を続け、7年間高校で教鞭を執った。1902年にチューリッヒ大学でフィドラーの指導のもとで博士号を取得した。博士論文のタイトルはUeber die metrischen Eigenschaften kollinearer Gebilde(共線構造の計量特性について)だった。1907年に、連邦工科大学の画法幾何学の准教授に任命された。

幾何学の教授として、グロスマンは高校の教師のための夏のコースを組織した。1910年、グロスマンはスイス数学会英語版の創設者の1人になった。1912年に英国ケンブリッジで[3]、1920年にストラスブールでICMの招待講演者を務めた。

アルベルト・アインシュタインとの共同作業編集

アルベルト・アインシュタインとグロスマンの友情は、チューリッヒでの学生時代から始まった。連邦工科大学では、アインシュタインは多くの授業を欠席していたが、グロスマンがとっていた完全な講義ノートにより救われた[4]。アインシュタインのベルンの特許庁への就職は、グロスマンの父親のつてによるものだった[5]。グロスマンは、アインシュタインをプラハからチューリッヒ工科大学の物理学教授として招聘するための交渉を手伝った。

グロスマンは微分幾何学テンソル解析の専門家であり、これらはアインシュタインの重力に関する研究に適切な数学的フレームワークを提供するツールだった。従って、アインシュタインがグロスマンと科学的協力を結ぶのは当然のことだった[6]

アインシュタインの一般相対性理論の発展に必要なステップである、リーマン幾何学(これは楕円幾何学でもある)と呼ばれる非ユークリッド幾何学の重要性をアインシュタインに強調したのはグロスマンだった。アブラハム・パイス英語版のアインシュタインに関する本[7]では、グロスマンがテンソル理論についてもアインシュタインを指導したことが示唆されている。グロスマンはアインシュタインを絶対微分学に導びいた。これはエルヴィン・クリストッフェルによって始められ[8]グレゴリオ・リッチ=クルバストロトゥーリオ・レヴィ=チヴィタによって完成されたものである[9]

グロスマンは、今日でも最もエレガントで強力な重力理論である一般相対性理論における、数学と理論物理学の独自の統合を促進した。アインシュタインとグロスマンの協力により、画期的な論文「相対性理論と重力理論の概要」が生まれた。これは1913年に出版され、アインシュタインの重力理論を確立した2つの基本的な論文の1つである[10]

死去編集

グロスマンは1936年に多発性硬化症で亡くなった。

グロスマンにちなむもの編集

相対論の研究者達は、グロスマンの物理学への貢献を賞賛して、3年ごとに開催される国際会議の名前を「マルセル・グロスマン会議」(Marcel Grossman meetings;略称MG)とした[11]

ローマに本部を置く対論的天体物理学国際センター英語版は、三年毎にマルセル・グロスマン賞を授与している。

脚注編集

  1. ^ Honorary Members of the SMS”. 2021年4月23日閲覧。
  2. ^ “Prof. Dr. Marcel Grossmann 1878–1936”, SchweizerischeNaturforschende Gesellschaft. Verhandlungen 118: 325–329, (1937) 
  3. ^ Grossmann, Marcel. “Die Zentralprojektion in der absoluten Geometrie”. In: Proceedings of the Fifth International Congress of Mathematicians (Cambridge, 22–28 August 1912). vol. 2. pp. 66–69. http://www.mathunion.org/ICM/ICM1912.2/Main/icm1912.2.0066.0069.ocr.pdf 
  4. ^ Alice Calaprice, Daniel Kennefick, Robert Schulmann, An Einstein Encyclopedia, Princeton University Press, 2015, p. 70.
  5. ^ Janssen, Michel; Renn, Jürgen (2015-11-19). “History: Einstein was no lone genius” (英語). Nature 527 (7578): 298–300. Bibcode2015Natur.527..298J. doi:10.1038/527298a. PMID 26581276. http://www.nature.com/news/history-einstein-was-no-lone-genius-1.18793. 
  6. ^ J. Earman and C. Glymour, Lost in the Tensors: Einstein's Struggles with Covariance Principles, 1912-1916, footnote page 255; Carnegie Mellon University Research Showcase (accessed February 12, 2016)
  7. ^ Pais, Abraham (1982). Subtle is the lord: the science and life of Albert Einstein 
  8. ^ Christoffel, E.B. (1869), “Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdrücke zweiten Grades”, Journal für die reine und angewandte Mathematik B. 70: 46–70, http://gdz.sub.uni-goettingen.de/dms/load/img/?PPN=GDZPPN002153882&IDDOC=266356 
  9. ^ Ricci, Gregorio; Levi-Civita, Tullio (March 1900), “Méthodes de calcul différentiel absolu et leurs applications”, Mathematische Annalen (Springer) 54 (1–2): 125–201, doi:10.1007/BF01454201, https://zenodo.org/record/1428270 
  10. ^ Einstein, A.; Grossmann, M. (1913). Entwurf einer verallgemeinerten Relativitätstheorie und einer Theorie der Gravitation. pp. 225–261. 
  11. ^ Alex Gaina, Marcel Grossmann Meeting - an important event in Gravitation and Astrophysics [1]

参考文献編集

  • Pais, Abraham (1982). Subtle is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-853907-X. https://archive.org/details/subtleislordscie00pais 
  • Einstein, A.; Grossmann, M. (1913). “Entwurf einer verallgemeinerten Relativitätstheorie und einer Theorie der Gravitation”. Zeitschrift für Mathematik und Physik 62: 225–261.  English translate
  • Einstein, A.; Grossmann, M. (1914). “Kovarianzeigenschaften der Feldgleichungen der auf die verallgemeinerte Relativitätstheorie gegründeten Gravitationstheorie”. Zeitschrift für Mathematik und Physik 63: 215–225. Bibcode1914ZMP....63..215E. 
  • Graf-Grossmann, Claudia, with T. Sauer, Marcel Grossmann: Aus Liebe zur Mathematik, Römerhof-Verlag, Zürich, 2015, 978-3-905894-32-5
  • T. Sauer, ''Marcel Grossmann's contribution to the general theory of relativity'', in: ''Proceedings of the 13th Marcel Grossmann meeting on Recent Developments in Theoretical and Experimental General Relativity, Astrophysics and Relativistic Field Theories'', July 2012. Edited by Robert T. Jantzen, Kjell Rosquist, Remo Ruffini. World Scientific, 2015, pp. 456–503.(http://arxiv.org/abs/1312.4068)
  • Graf-Grossmann, Claudia, with T. Sauer, English translation by William D. Brewer, ´´Marcel Grossmann: For the Love of Mathematics´´, Springer Biographies, 2018, 3319900765, 978-3319900766

外部リンク編集