重さ k の保型因子 (automorphic factor of weight k ) とは
ν
:
Γ
×
H
→
C
{\displaystyle \nu \colon \Gamma \times {\mathfrak {H}}\to \mathbb {C} }
なる函数 ν で、以下に掲げる四つの性質を満足するものを言う。ここで
H
{\displaystyle {\mathfrak {H}}}
は上半平面 、C はガウス平面 をそれぞれ表し、また Γ は例えばフックス群 のような SL (2, R ) の部分群である。したがって、Γ の元 γ は二行二列の行列として
γ
=
(
a
b
c
d
)
{\displaystyle \gamma ={\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}}}
のように書くことができる。ただし、a , b , c , d は全て実数で、ad − bc = 1 を満たすものとする。
保型因子 ν が満足すべき条件とは、
Γ の元 γ を固定したとき、函数 ν(γ, z ) は z に関して
H
{\displaystyle {\mathfrak {H}}}
上の正則函数 である。
一定の実数 k が存在して、
H
{\displaystyle {\mathfrak {H}}}
の任意の元 z と Γ の任意の元 γ に対して、
|
ν
(
γ
,
z
)
|
=
|
c
z
+
d
|
k
{\displaystyle \vert \nu (\gamma ,z)\vert =\vert cz+d\vert ^{k}}
が成立する。
H
{\displaystyle {\mathfrak {H}}}
の任意の元 z と Γ の任意の元 γ に対して、
ν
(
γ
δ
,
z
)
=
ν
(
γ
,
δ
z
)
ν
(
δ
,
z
)
{\displaystyle \nu (\gamma \delta ,z)=\nu (\gamma ,\delta z)\nu (\delta ,z)}
が成立する。ここに、δz は δ の定める一次分数変換 による z の像である。
I を二次の単位行列 として、−I が Γ に属するならば、
H
{\displaystyle {\mathfrak {H}}}
の任意の元 z と Γ の任意の元 γ に対して、
ν
(
−
γ
,
z
)
=
ν
(
γ
,
z
)
{\displaystyle \nu (-\gamma ,z)=\nu (\gamma ,z)}
が成り立つ。
任意の保型因子は ‖υ(γ)‖ = 1 なる函数 υ を用いて
ν
(
γ
,
z
)
=
υ
(
γ
)
(
c
z
+
d
)
k
{\displaystyle \nu (\gamma ,z)=\upsilon (\gamma )(cz+d)^{k}}
の形に書くことができる。 函数 υ: Γ → S 1 は乗因子系 (multiplier system ) と呼ばれる。明らかに
υ
(
I
)
=
1
{\displaystyle \upsilon (I)=1}
が成り立つ。一方、−I ∈ Γ なるときは
υ
(
−
I
)
=
e
−
i
π
k
{\displaystyle \upsilon (-I)=e^{-i\pi k}}
が成り立つ。
Robert Rankin , Modular Forms and Functions , (1977) Cambridge University Press ISBN 0-521-21212-X . (Chapter 3 is entirely devoted to automorphic factors for the modular group.)