ヤコビの虚数変換式(Jacobi's imaginary transformation)は、楕円テータ関数に関する以下のような恒等式である[1]。
この恒等式の日本語の呼称は定まっておらず、ヤコビの虚数変換式、ヤコビのモジュラー変換式、あるいは単にヤコビ変換式とも呼ばれる。テータ関数は二変数の関数であるが、第二変数を純虚数の定数として第一変数に着目すれば「虚数変換式」という呼称が的を射て、第一変数を定数として第二変数に着目すれば「モジュラー変換式」という呼称が的を射る。
- の定義は一意ではなく、いくつかの流儀があり文献によって異なるので注意が必要である[2](主として、 の定義の違いが混乱を生んでいる)。この記事での定義は、D.Mumfordに従った[3]次のようなものである[2][4]。
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- 「岩波数学公式集Ⅲ」p.48.では誤った式が書かれているので注意せよ。
ヤコビの楕円関数はテータ関数の比により表される。楕円関数の周期を とすると
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テータ関数の虚数変換式により
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となり、楕円関数の虚数変数を得る。
の虚数変換式の両辺の比を して恒等的に であることを証明する。テータ関数の二重周期性により
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であるから、 は の関数として二重周期を持つ。また、テータ関数は極を持たず、零点は
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であるから、 は の関数として複素平面全体で有界である。したがって、リウヴィルの定理により には依存しない。
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分子の が奇数の項は正負で打ち消しあうから偶数の を に改める。
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先に示したように は に依存しないので
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であり、 は にも依存しない定数である。その値は
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である。